中学受験の塾選びに必要な一つのこと。
中学受験は塾選びが肝。中学受験後にしみじみと思う。
我が家は共働きで、帰りも遅い。そんな両親では中学受験はある意味無謀という声もある。「中学受験は親が9割」という本もあるぐらい、中学受験における親の役割は大きい。
だからこそ、娘が小学校3年の頃から塾探しを初めた。姉や親せきや、周りから情報収集して大手学習塾に通わせることとした。大手学習塾は毎年、テキストを更新し、受験対策に特化した内容にしているし、難関校を狙うには実績のある大手学習塾がいい。と言うのが通説らしい。
中学受験のための塾が本格化するのは、3年生3学期の2月。つまり、4年生になる前の2月である。娘が通う校舎は、東京都内でも大きい校舎だったので、クラス分けは細分化されていて、娘は真ん中ぐらいのクラスになった。娘が通う公立小学校では、ほとんどの子が中学受験し、その大半がその大手学習塾に行っていた。
さぁ、ここからが中学受験の勝負である。
勝負であるはずであった。
しかし娘は、その大手学習塾に通わなかった。正確に言うと、私が通わせなかったのである。娘が大手学習塾が嫌だと言ったのではなく、私が自分の精神状態が持たないと思ってのことである。
これでは私の精神状態が持たない。
最初の入塾テストのクラス分けで真っ先に私が感じたことだった。娘は真ん中位のクラスだった。つまり上には沢山クラスがある訳で、下にも沢山クラスがある訳で。上がったり、下がったりするという事を考えるだけで、私が参ってしまったのである。中学受験は親次第という言葉が、頭から離れず、成績が悪いのは、全て私のせいだと思ってしまう。もっとやらせないといけないんだと、自分や子供を責めている構図が、目の前に浮かんでしまう。それは恐らくクラス分けテストのたびに自分に突きつけられるだろう。これから3年間。それが続くんだ。
娘は、その大手塾でいいと思っていたようである。真ん中であることに自己肯定感を潰されることなかった。でも、親の方が入塾テストだけで参ってしまった。
これから、同じ塾のママ友と顔を合わせるたびに、何となく劣等感を覚えるかもしれない…と。そんなことを考えただけでも気が滅入る。
結局、1か月分の講習料支払ったものの、娘には事情を説明し、1日も通わずに大手塾を辞めてしまった。
だからといって中学受験を辞めたかというと、そうではない。勉強することや、何かを一生懸命やることは決して悪いことではない。
そこから、私は塾探しを行い、最終的に個人学習塾に通わせた。その塾の先生を、仮にA先生と呼ぶ。そのA先生は昔大手学習塾の人気講師だったらしく、その経験を活かし独立した。A先生は一人で全教科教え、難関校に合格させるとHPに謳う。さらに、そのHPには中学受験の先にある人生を考えた上で考えが、とうとうと書かれ、親としての心構えも書いてあった。エッジの効いた考え方やエッセイが並ぶ。偏差値や受験に対する批判めいたことも書かれている。これで集客になるのかな…というそんな内容だった。でも、書いてあることを数多く読むと、人となりが分かってくるもので、信頼できる感じがした。
会わないと分からない。と面談にも行ってみたが、ホームページを読んだ時と印象が変わらない。商業ベースの嘘臭さもない。このA先生だったら、私も娘も大丈夫かもしれない。藁をもすがる思いで(失礼)で、その塾に通うこととした。
とはいえ、中学受験は親にとって生易しいものではない。やっぱり、私は不安になってくるのだ、このままでいいのか、大丈夫なのかと。そもそも中学受験する必要があるのか、、と。ただただ不安に駆られるのだ。
そんな時、A先生の考え方は至ってシンプルであり、勉強はいつかはするものだ。それが今なだけ。勉強するのも、受験をするのは子どもと言う。親は試験の結果に一喜一憂しないください。親は勉強に口出ししないでください。親が勉強を見たとしても、その教科を嫌いにさせるだけで、いい効果はありません。それよりも栄養のあるものを食べさせるとか、そういうことに時間を使ってください。だいたい、受験は運だし、第一志望に合格したからと言って、その子が幸せになるとは限らないのですよ。とオブラートに包みながら辛口に説く。
A先生の過去の実例に沿った話を聞くたびに、押し寄せる不安から視野が狭くなっている自分を反省した。そうだ。高校に進学する限りは、いつかは受験するという当たり前の事実。中学受験はそれを前倒ししているだけに過ぎない。そして実際に受験するのは娘であって親ではない。という更に当たり前の事実。親にできるのは見守るだけなんだ。
親が不安になっても何にもならない。何度かこんなやりとりをA先生と繰り返し、娘が6年生になる頃には私の精神状態も落ち着いてきた。
一方で、娘は6年になり試験が近くなるにつれ不安を口にするようになってきた。ただ、その頃の私は、逆に精神状態が落ち着いていて自信を持って「いや、大丈夫だってA先生が言ってたよ。A先生だから間違いないよ。それに、受験に落ちたからって、何も変わらないよ。」と言えた。
塾選びで何が一番重要かって、極限状態に追い込まれる親子が、その塾を、その先生を信頼できるかどうかが肝なんだ。信頼は一日では作れない。不安になるたびに、先生から言われる言葉。先生の筋の通った考え方。理念。そして人間性。真剣勝負だ。
信じ切れるか。互いに信頼関係を築けるかだと思う。
3年間、A先生にお世話になった。
結局、娘は難関校に合格というレベルにはならかったが、「この中学校に行きたい」という学校に特待生で合格した。「この中学校に通えて本当に良かった。ありがとう。」と、毎日楽しく中学校に通う。続けて言う。
「友達に聞くと、みんな中学受験、ものすごく大変だったんだって。先生にも当たり外れがあるんだって。
A先生は、教え方も上手で、いつも笑わせてくれて、塾講師のプロ中のプロだと思う。」
親にとっては、子の笑顔が何より嬉しい。塾選びは成功だ。
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