身体に突き刺さっていく異物

体の中に異物(主に金属、プラスチック、木)が入ってしまうことがあります。
手で押さえると、皮膚は弾力があり、筋肉にも硬さがあるので、組織はある一定の抵抗があるように思えますが、そんなことありません。
恐怖の事例を通して、組織の耐性を味わってみましょう。

僕が最近聞いた事例では、ダンボールのホチキスのでかいやつを飲んでしまって、便から排出されたという事例がありました
https://corline.co.jp/2022/03/10/stapler/

主治医に言わせると、ヒヤッとしたそうです。

なぜヒヤッとしたかというと、金属を飲み込むと、腸管の壁を貫通して、体の中に埋まってしまうということが起きます。

そうなると、貫通した場所から菌が入ってしまい(腸管の中は菌だらけで、体内は無菌)、感染し、膿が溜まってしまうんですね。

感染がうまく治療できずに、重篤な症状になってしまうかもしれません。

感染で膿が溜まると最も効果的な方法は、管を入れて膿を出し続けながら、抗菌薬を投与することになりますが、

訳のわからんところに膿ができてしまうと、重要な臓器がたくさんあって、体表から管を入れる時の針が刺せないところだったりします。

治療に難渋する訳ですね。

魚の骨を飲み込まない方がいいのもこの理由です。

魚の骨は鋭いので容易に腸管を貫通して、感染源になったりします。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/71/9/71_9_2453/_pdf

細くて鋭い分、体の組織を簡単に貫いていって、どこに行くのかわからないのが厄介です。(迷入と言います)

もっと細いものでもこの現象は起きます。

アスベストで有名な石綿という細い石の結晶みたいなものでも起きます。顕微鏡で見えます。
これは、断熱材などに用いられてきましたが、長く吸入すると、肺の胸膜で炎症を起こしたりして、しまいには中皮腫と呼ばれる、治癒が極めて難しい腫瘍を発症してしまいます。

この中皮腫、普通は肺が入っている胸のスペース(胸腔)に生じますが、

なんとお腹に生じるケースもあります。

どうやら、硬くて細い結晶なので、各組織を貫通して、腹部に到達し、そこで腫瘍が発症するというメカニズムが提唱されています。
https://jamig.or.jp/other-mesothelioma/about-peritoneal-mesothelioma/

他にも
僕の経験した例では、割り箸が眼窩内(眼球がある窪み)になんかの拍子に突き刺さって、摘出したものの、もっと奥にまだ先端が残っていた例もありました。

体の組織は柔らかいので、割り箸のようなちょっと硬い細長いものであれば、一瞬で力が集中すると容易にめり込んでしまいます。

人間の体は、幾分の層になっていて、各臓器があり、硬いイメージがありますが、
金属などから見ると、雲に突き刺さる隕石のように容易に貫けるということがわかります。