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コロナ対策と経済、両立を探る

5月14日(木)、緊急事態宣言の一部解除が発表されました。不安はあれど、いつまでも経済活動を止めていればそのことによる社会的コストが甚大になりかねません。コロナ対策と経済の両立の道を探る――。困難な道ではありますが、私たちは新型コロナとの闘いにおいて次のフェーズ(段階)に進もうとしているのだと思います。その意味で、政府がこれまで感染症の専門家を中心に構成してきた「基本的対処方針等諮問委員会」のメンバーに、経済の専門家が4人加わったのは象徴的な出来事です。14日は、その新しいメンバーも加わっての初めての諮問委員会が開かれ、そして緊急事態宣言の一部解除へとつながっていったわけです。

15日(金)の日経CNBC、朝エクスプレス「マーケット・レーダー」にリモート出演いただいた東京財団政策研究所の研究主幹、小林慶一郎さんはこの4人の新メンバーのひとりです。小林さんは実際に委員会に参加して「活発で生産的な議論ができた」と感想を話していました。「感染症の専門家はどうしても感染症を何としても抑え込む“ゼロリスク”を志向しやすい。ただ現実には感染症と折り合いを付けながら社会や経済をどうまわしていくかという視点も不可欠」(小林さん)です。小林さん自身は諮問委員会で、「大胆な検査体制の拡充」を提言したといいます。現在、政府が目指している「1日あたり2万件」といったレベルではなく、例えば10万件を目指す――。なぜか?

「緊急事態宣言が緩和されても、実際にウイルス感染のリスクがどのくらいなのか分からなければ、企業も個人も思うようには活動ができない」(小林さん)からです。事実上社会経済活動が止まり続けることによる甚大なコストに比べれば、大幅な検査体制、人員の拡充に必要なコストの方がはるかに小さいはずです。

番組ではこのほかに、小林さんから「企業にも個人にも、流動性対策のみならず資本投入するような考え方が必要だ」との考え方についてもお話しいただきました。企業は分かるとしても「個人への資本投入」とは?

小林さんのアイデアは、ご自身では「所得連動回収条件付き現金給付」などとして積極的に発信しています。具体的には、必要な人には事前の審査なしに迅速に生活資金などを給付。そして3年後なり一定期間の後から、年末調整や確定申告などの折に所得税に上乗せして追加的に課税する――。生活再建に成功して収入を得られるようになった人から回収を進めるのです。考えようによっては政府から個人への出資この考え方の優れたところは、スピード感やある種の納得のしやすさです。事前の審査をせず、そこで時間を取られないのでスピード感を持った対応ができます。必要な人に必要な支援をするという意味で納得性、公平感もある。後々の追加的納税は、生活再建を果たした人が出資者である国に配当を支払うようなものです。

さて、いろいろな工夫をしながらコロナ対策と経済の両立を図るとしても、僕自身はどうしても財政の問題は気掛かりです。ただでさえ先進国で最悪の日本の借金が、さらに大幅に膨らむことが避けられません。今はコロナ対策を優先すべき時でしょう。しかし対策の全貌、コストが明らかになれば、次には財政から目を逸らすわけにはいきません。増税か、ある種のインフレ課税か、あるいは歳出削減か――。“出口”を視野に入れながら危機に立ち向かうことが不可欠です。小林さんはコロナ対策のさまざまな対策の際に、「コロナ後を見据えた生産性の向上、デジタル化、IT化投資を重視すべき」と話します。感染症リスクへの対応にもなるうえ、経済成長につながれば財政問題にも寄与することになるからです。経済学者ならではの考え方です。

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