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ひふみ“2000億円売却”の機動性

引き続き市場は荒れ模様。16日(月)はその前にFRBがこの局面に2度目となる緊急利下げ(=ゼロ金利復活)、量的緩和再開を決めたにも関わらず、NYダウが2997ドル(12.9%)の暴落となりました。G7は電話会議で結束して、新型コロナウイルスの危機に対応しようと姿勢を見せているのですが、こうした政策当局の動きをまるで無視するかのような動きです。

さて、そうした中で多くの投資家に参考になると思われる話。2月29日のnote「落ちるナイフをつかめるのか?」に書いた、ひふみ投信でおなじみレオス・キャピタルワークスが2月25日に投資家に向けて発信したメッセージは、タイムリーで誠実な内容だったと思います。詳しくはHPなどご覧いただくとして、要約すれば、レオスはこの日までに、新型コロナウイルスに伴う不確実性の高まりを警戒して、ひふみMF(マザーファンド)全体資産のうちの約3割(=2000億円)の株式を売却、現金化して下落に備えていたという内容です。

17日は藤野英人・最高投資責任者らによる勉強会があり、その背景、その後の動きなどを聞いてきました。いくつかポイントがあると思うのですが、①暴落に備えるというプロの判断②市場を過度に動かさないよう、周りに察知されないように売却するトレーダーの存在感③必要とあれば、現金比率を機動的に高めることができる設計、アクティブ投信の醍醐味――という観点から考えてみたいと思います。

藤野さんらレオス・キャピタルワークスのメンバーは、新型コロナウイルスが世界経済に深刻な影響を与えかねないリスクについて、徐々に判断を固めていって、2月14日(金)、バレンタインデーのころに現金比率を高めることを決断したといいます。プロジェクト名は「オぺレーション・エクソダス」。危機からの脱出といったイメージでしょうか。当初、40%程度まで現金比率を高めることを意識して売却し始めたのですが、2月21日(金)あたりからは世界市場全体が不安定さを増し、思うような値段で売ることが難しくなってきたため、結果的に30%程度、2000億円程度の売却になったそうです。ひふみはもともと現金比率を必要に応じて高められるような商品設計を取っていたわけですが、それにしても決断が少しずれ込んで、あと1週間逃げ遅れていたら、“エクソダス”はかなわなかったかもしれません。これが①。危険を察知するプロの判断です。

続いて②。トレーダーの存在感。さて、僕たち運用の世界の外から眺めている人間には少し分かりにくい仕事ですが、運用会社には銘柄を吟味して売り買いの判断をしながら成績の向上を目指すファンド・マネジャー(FM)とは別に、FMの意を組んで、市場に大きな影響を与えぬよう、市場に察知されないように売買を執行するトレーダーという仕事があります。レオスもファンドの規模が巨大化していますから、こうした仕事の繊細さが一層問われるわけです。様々な売買の手法や市場関係者との日ごろからの付き合い、レオス社内におけるFMとトレーダーの距離の近さなどが相まって、市場に大きな影響を与えることなく巨額の現金化を可能にしたといいます。

そして第3がアクティブ投信の醍醐味です。そもそもフルインベストメントを標ぼうしているアクティブ投信では、ここまで大胆な現金化はできません。そして、仮に現金化した後も世界株式相場が上昇を続ければ、その間は世界の株式相場上昇にファンド価格が付いていけないというリスクが付きまといます。そのあたりを見極めたうえで、大胆に動くのはまさしくアクティブ運用ならではの魅力といいますか、胆力が問われる場面なのでしょう。

さてこれらの結果例えばひふみ投信マザーファンドにおける組み入れ上位銘柄は1月末と2月末でこのように大きく変わっています。

ひふみ投信MF(2月末組み入れ銘柄上位、組み入れ比率%)
1 DOMINO’S PIZZA,INC. 3.1%
2 ZOOM VIDEO CMMUNICATION 2.6%
3 東京センチュリー 1.9%
4 ショーボンドホールディングス 1.8%
5 NEW ORIENTAL ADR 1.7%
ひふみ投信MF(1月末組み入れ銘柄上位、組み入れ比率%)
1 東京センチュリー 2.4%
2 光通信 2.1%
3 ディスコ 2.1%
4 ショーボンドホールディングス 2.0%
5 VISA INC-CLASS A 2.0%

2月末組み入れ1位のDOMINOはNY上場、2位のZOOMはナスダック上場でいずれも巣ごもり関連と言えそうです。また5位のNEW ORIENTALは中国全土でオンライン教育を展開する学習塾大手です。

いったん30%まで高まった現金比率は17日現在では20%程度とのこと。「まだまだ不安定な市場環境が続きそう」(藤野さん)とみて、この後は現金比率を縮小しても10%程度は持っておく方針のようです。これからさらに買い入れを増やしていくとして、ショック安の“前”と“後”では、さらに大きく、組み入れ上位銘柄の顔ぶれは変わるでしょう。アクティブ投信ならではの“手替わり”。正解はいろいろな考え方があると思いますが、運用会社が誠実にユーザーにメッセージを伝えているか、投資家としては見極める良いタイミングだと思います。

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日本経済新聞社に入社。証券部、日経マネーなどを経て、今はマーケット・経済専門チャンネル、日経CNBCで主に「朝エクスプレス」という番組を担当しています。幅広ーいことが経済やマーケットとつながっているため、どうしてもいろいろなところを「見て」「歩いて」「感じる」――日々です。
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