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“新型コロナ関連倒産”最新動向

8月26日(水)日経CNBCの朝エクスプレス、マーケット・レーダーでは帝国データバンクの赤間裕弥さんをゲストにお迎えし、“コロナ倒産”の最新事情についてお聞きました。結論を先取りしますと、足元で倒産が激増しているわけではありませんが、先々は予断を許さない展開が続きそうです。

まずは、ずばり新型コロナ関連倒産の推移(累計)のグラフです。3月下旬から増え始め8月下旬までで460件。やはり深刻な事態が進行中とは思いつつも、足元では増え方が少し緩やかになっているようにも見えます。どうやらピークを超えつつあるのでしょうか?「いやいや、まったくもって楽観できる情勢ではない」というのが赤間さんの大事なメッセージだったと思います。

20.8.26 コロナ倒産の推移

次に示すグラフは、コロナ関連にとどまらず、全国企業倒産件数の推移を月別にみたものです。3月、4月と前年同月比二桁増のペースで増え始めました。しかし一転して、5月に激減している点が目を引きます。これは、4月の緊急事態宣言発令を受けて、裁判所などでの倒産、廃業関連の業務も滞ってしまったことが背景です。5月はざっくり500件程度は、本来あったはずの倒産よりも実際の件数が少なくなっています。赤間さんは「この分は、いずれ今後上乗せされて表面化する可能性が高い」といいます。

20.8.26 倒産全体の推移 5月に穴。

コロナ倒産のひとつの特徴は、業種などが極端に偏っていることです。下記は新型コロナ関連倒産を業種別にみたもの。飲食店やホテル・旅館が突出、アパレル小売店や建設・工事業なども非常に厳しい状況に置かれています。旅行や帰省をしたくても、好きなスポーツ観戦やコンサートに行きたくても、どうにもままならない。そうした状況があまりにも鮮明にデータに表れているように感じます。

20.8.26 業種別倒産

さて、こうして状況を確認してくると、新型コロナ関連倒産がまだ激増とまでは至っていない点がむしろ不思議な、さらに言って不気味な気すらしてきます。例えばリーマン・ショック時と比べて、どのような違いがあるのでしょうか。赤間さんは「リーマン・ショック時のような悲壮感がない。一つには金融が回っていることが大きい」と指摘します。政府・中央銀行は世界的に金融危機を起こさせない姿勢を鮮明にしています。金融危機が震源地だったリーマン・ショックと比べて、今回は偏った業種での需要消失が倒産、企業の苦境の背景です。

赤間さんはコロナ危機の前に、倒産状況から見て2つの前兆があったといいます。一つには昨年秋の消費税率引き上げ、その前の“年金2000万円問題”などもあって、個人消費はすでに昨年後半から落ち込んでいたこと。そしてもう一つはコロナ危機の直前まで人手不足倒産が増えていたことです。空前の人手不足の中で、ホテル、飲食あるいはアパレルなどの業種では低収益ながらなんとか人手を確保して苦闘していた。そうした厳しい状況があり既に倒産が増えつつあったところに「新型コロナが追い打ちをかけた」(赤間さん)格好です。

今後を展望するうえで何とも厄介なのが「先々の収束の見通し、時期に確信を持てないこと」(赤間さん)です。新型コロナの劇的な収束がみえるまでは、個人消費を中心にかなり根強く、経済は下押し圧力にさらされることになります。今は資金繰り供給などで何とか倒産の激増を抑え込んでいる状態ですが、まったくもって先行きは楽観できないのだと思います。

(直居のおまけ)
新型コロナの危機に対して、政府や中央銀行が世界的に資金供給をしていること自体、誰にも否定できるものではありません。おカネが回らなくなれば、それこそ倒産、失業の激増は避けられず、コロナ以上に資金繰りから死亡者が広がりかねない――。僕たちはそういう危機の中にあります。ただ、昨今の株式相場堅調を見るにつけ、世界的な流動性供給が株価を支えているという現実も気になります。一般論ですが、本来淘汰されるべき企業まで含めて資金が回れば、それは長期的に経済の潜在成長率の低下という形で将来につけを回すことになってしまいます。必要なところに適切におカネを回すにはどういった工夫や規律付けが必要なのか――。改めて金融のあり様が問われています。

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