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“野村HD最高益”は本物か?――問われるリテール建て直し

決算発表シーズンたけなわですね。前半戦で私が興味を持ったひとつが野村HD(10月29日引け後発表)です。4-9月期の最終損益は1944億円の黒字。前年同期の60億円の赤字から黒字に転換したばかりでなく、いきなりこの期間としての過去最高利益をあげました

一過性の要因は、グループで持つ野村総合研究所株の売却益733億円など。しかし決算発表の会見では、それを除いても「非常に強い決算」(北村巧財務統括責任者)と自ら評価していました。私もそう思います。アメリカでのトレーディング収益、特にモーゲージ証券関連の好調が寄与しました。この分野、聞くところによると、日本の金融機関で大きな規模でビジネスしているのは野村くらいのようです。この超低金利環境ですから普通の債券絡みのトレーディングビジネスではそれほどもうけることはできないはず。ちなみに米JPモルガン・チェースは10月の決算発表を好感して株価は上場来高値圏で推移しています。JPモルガンではリテール部門に加えて、クレジット関連のトレーディング収益が支えたとの見方があります。

店舗閉鎖を始めとするコスト削減も着実に進めている印象です。経営環境の変化や危機を感じた時の変化の速さは、野村ならではのものがあるように思います。

もちろんまだまだ課題はあるわけですが、私が注目するのはリテール営業の建て直しです。この日の会見では、営業人員の再配置はすでに終えたとのこと。今まで、一人の営業員が超富裕層からマスリテール層まで幅広く担当し、結果としてそれぞれの顧客に適切な対応ができていない状態だったと言います。再配置により、それぞれの顧客セグメント別に、これまでよりははるかに適切な対応ができるようになるはず――。ですが「成果が上がるまでには時間がかかる」(北村財務統括責任者)と思います。

以前に「投資の相談――「特にない」61.8%の衝撃!」でも書いた通り、証券界、金融界への一般消費者の不信感は、恐ろしいほど根深いものがあります。野村HDのみならず、多くの金融関係者の問題意識を聞いてみたいです。

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