見出し画像

深刻なリセッションか、超絶バブルか?――探りましょう!第3の“幸せな道”

世界市場は相変わらず不安定です。11日の日経平均株価は前日のNYダウが1167ドル(4.9%)もの反発、急騰をみせたにも関わらず朝高のあとはあっさり軟調な展開に。終値では451円(2.3%)安の1万9416円でした。不安定さはしばらく続くと見ざるを得ない感じ。今日はちょっと長めの視点で考えてみようと思います。

BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎さんが今日11日(水)の昼、メディア向けのテレカンファレンスを開きました(いつもは会議室に集まることが多いのですが、時節柄電話で。ちょっと新鮮で楽しいです)。「感染症の専門家ではない」と断りつつ、世界経済については65%の確率(メーンシナリオ)で年央までには新型コロナウイルスに関わる混乱が収束し、7-9月期からは持ち直しとみています。35%の確率(リスクシナリオ)で、この混乱が長引くことで、金融システムの危険性が意識される事態まで進行する――。この場合、世界的な不況入りが避けられないでしょう。まあ、現時点ではこれは分かりません。足元は感染症の拡大を食い止めるために各国が懸命に頑張っているという段階です。

今回のことで改めて「私たちが抱えている本質的な問題は何か?」ということを考えています。これは今日11日付けの日本経済新聞に和訳が掲載されているFTのラナ・フォルーハーさんの論考なのですが、「米株価の下落は新型コロナウイルスが真の理由ではなく、筆者(ラナ・フォルーハー)が以前から予想していた調整局面を誘発する引き金に過ぎなかった」との見立てに同意です。世界で、とりわけリーマン・ショック以降積み上がった債務の問題、株を中心とする資産価格を必要以上に意識せざるを得ない経済構造、それを支えるほかはない世界の中央銀行――。そうした問題が問われていると思うのです。

ソフト経済化が進み、資産価格の重要性が増した結果として、世界は今深刻な格差の問題を抱えています。必要なのは適正な所得再分配だろうと思います。米大統領選で民主党のサンダース候補が若者を中心に熱狂的な支持を受けているのは深い背景があってこその現象だと感じられるのですが、どうも今回、民主党は穏健派で、トランプ大統領に勝てる可能性のあるバイデン候補を立てることになりそうな情勢です。考えようによっては大事な問題は先送りです。

さて、各国でいろいろな経済対策が検討されています。日本でも資金繰り支援、休業補償の問題などが進みそうです。日銀では、3月2日の黒田総裁談話「適切な金融市場調節や資産買い入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針」にのっとって、さまざまな策が講じられるでしょう。国債購入の拡大のほか、ETFの購入拡大などが取りざたされています。今は危機対応で「何でもできることを」というモードになっているわけですが、ここでこそ注意が必要だと思います。仮に幸いにして河野さんの指摘する“早期収束シナリオ”で進んだ場合、金融緩和環境や様々な対策の影響で、また別の“超絶バブル”につながりかねません。決して楽観シナリオではありません。現在抱えている債務問題、格差問題などの規模をさらに膨らませ、その先に破裂が待っているということになりかねないのですから。河野さんは「緊急事態であっても、政策の規模や範囲を拡大する際には、出口まで十分に見据えた対応が必要」と指摘しています。

と、こんなことを考えていたらさすがにちょっと暗い気持ちになってきますね。新型コロナのパンデミック化が避けられず深刻なリセッション入りするか、あるいは早期に収束に向かったが故に次のバブルがより大きくなり破裂を迎える――。僕たちを待ち受けるのはどちらに進んだとしてもある種のtragedy(惨劇)なのでしょうか?

ですが、本当はそんなに悲観しているわけではありません。変な言い方かもしれませんが僕たちの、そしてみなさんの生き方にある種の誠実さを感じるからです。例えば今回の危機の“前”と“後”ではよい変化があるはずです。例えば働き方改革であるとか、働く女性、子育ての後押しは、今回劇的に進む可能性があります。それも単なるコストカットではなく、生産性の向上を伴って。今までなかなか進まなかったことが、良い方向に変わる。そうしたことを進められるも進められないも僕たちの選択です。第3の“幸せな道”はすぐそこにあるように思います。

冒頭の写真は今日(11日)の兜神社。だいぶ暖かくなってきました。あれからもう9年ですか。商業の神様にもいろいろな神様にも“幸せ”をお祈りしてきました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?