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データ俯瞰分析でコロナ危機を救う!――VALUENEX・中村社長を迎えて

新型コロナウイルスによる深刻な経済へのダメージが危惧されています。まずは感染拡大を抑える段階ですが、なるべく早い段階で治療薬、ワクチンの開発が待たれます。15日(水)の日経CNBC、朝エクスプレス「マーケット・レーダー」では特許や論文などのデータ解析を手掛けるVALUENEXの中村達生社長をゲストに迎えました。VALUENEXが得意とするビッグデータ解析とそれを俯瞰して可視化する技術を使い、例えば新型コロナに対する治療薬の開発などに役立てることができるというのです。先端医療や生命科学を専門とする日本経済新聞の安藤淳編集委員にも番組に加わっていただきました。

新型コロナの治療薬候補としては例えば、富士フイルムとグループの富山化学が開発したインフルエンザ治療薬の「アビガン」などが知られています。有力なものがいくつか見つかっており臨床試験を急ぐ段階です。ワクチンでは例えば日本の大学発ベンチャー、アンジェスなどが臨床試験を計画しています。ただ、新薬やワクチンの開発や承認には普通“年単位”の時間がかかります。アビガンなどなどの既存薬に期待が高まるわけですが、安藤編集委員によると「“有効”とか“効かない”などの報告が入り混じって、なかなか本当のところが分からない」のが実態だそうです。

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そこでVALUENEXの俯瞰分析技術の登場です。VALUENEXの企業ミッションは「世界に氾濫する情報から『知』を創造する」です。どういうことか――。得意とするのは特許であるとか論文などの大量のテキストデータを投入して分析、それを可視化することです。例えば上の図はある化学メーカーのR&D活動を可視化したものです。非常に多くの特許を持っている企業とのことですが、特許技術が集中しているところが密集して赤くなっています。今どきの言葉でいえばまさにクラスター。コア技術ですね。その周りは少し手薄になっていたり、やや離れた場所に別の密集があったりします。俯瞰分析では時間的な経過による変化も可視化できるのだそうです。この企業の場合には軸みたいなものがあまり時間の経過とともに動いていない――。コア技術のあたりにたくさんの特許も研究開発リソースも投入して強い力を持っているということかと思いますが、例えばイノベーションなどで別の技術が勃興してきた場合、もしかしたら脆いのかもしれない……。

「へーっ」って思いませんか?個々の専門的な論文、特許技術をひとつひとつ読み込むのは専門家でも難儀です。それを俯瞰解析することで、例えば企業の特徴や戦略、課題が見えてくるわけです。


さて新型コロナウイルス。COVID19。VALUENEXは今回、新型コロナウイルスや感染症に関する様々な論文、3月18日時点で431に上るそうですが、それを俯瞰解析にかけました。そうして浮かび上がってきた構図がこのnoteの冒頭のマップです。VALUENEXによる分析のガイドが入ってます。右下の「公衆衛生」であるとか「診断」に密集があります。そのあたりに関する論文が多いということ。安藤さんによると関連研究論文は「診断などを中心にすごい勢いで増えている」といいます。そして左上に開発が待たれる「治療薬」の密集。しかし、「診断」と「治療薬」の間には何だかドットが薄い空間があります。「空白」と記されているあたりです。

中村社長の分析は例えばこういうことです。「診断などに関する報告、知見はどんどん増えているけれど、それをどのようにしたら治療に生かせるのかに関する研究が手薄」。診断はできても特定の治療方法とともに研究されていない、そのあたりの研究が少ないという傾向が浮かび上がるのです。安藤編集委員はこうした俯瞰解析を使うことで「例えばWHO(世界保健機構)が作成する治療薬の研究開発ロードマップなどに生かせるのではないか」と指摘します。

世界中で混乱の中で時間との闘いが続いています。現場に近いほど、研究開発論文をじっくり読み解く時間などないはず。だからといってやみくもに開発を進めていいはずはありません。まして治療薬に関することでは、副作用などの危険が伴います。少しでも効率よく危機に立ち向かう可能性を探る――。大事な考え方ではないでしょうか。VALUENEXではこのツールを現在無料で公開しており、研究機関、企業やメディアなどから問い合わせが続いているとのことです。

今回は新型コロナウイルスをテーマにお話しいただいたわけですが、二人のお話しをお聞きするにつれて、今回の危機にとどまらない「私たちの課題」みたいなことを感じました。安藤編集委員の取材分野では「そもそも日本発の英語での論文などによる情報発信が非常に少ない」のだそうです。発信が少ないところには情報は集まってきませんね。そして「日本は“流行”に乗っかって皆が同じ方向を向きがちだけれど、あっさり冷めてしまったりもする」のだそうです。中村社長は「とにかくデマに惑わされないことが大事」と強調します。不安で危機であればあるほど、間違った情報が跋扈しやすいのです。事実、データが大事。メディアの責任も改めて感じます。

みなさんはどうお感じになったでしょうか?僕は一言でいえば“希望”を感じました。未知の危機に対しては混乱も試行錯誤も致し方ないのかもしれません。しかしデータを重視する姿勢とそれをサポートする技術を使って、それらの混乱はかなりの程度まで小さくすることができるはずです。政治の世界に目を向けると、新型コロナ危機を巡って各国が協力し合うどころか、パワーバランスを巡る“駆け引き”が激しくなっている印象です。科学技術の世界ではそんなことになっていいはずはありません。人類共通の危機に立ち向かう――。悪いパワーも良いパワーも感じる日々です。

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