“石破総裁”で市場大荒れ!--安堵のため息は日銀か……
9月27日(金)の市場はまさしく大荒れだった。焦点はもちろん自民党総裁選。麻生太郎副総裁が「高市早苗経済安全保障相を支持する」との一部報道もあり、朝方から株式市場が最も好む「リフレ政策」「高圧経済」への期待感が高まっていた。午後、1回目の投票で高市氏がトップとの結果を横目でにらみながら円安・株高が加速。1ドル=146円台半ばまで円安が進行、日経平均株価はこの日、903円93銭高の3万9829円56銭で高値引けした。
円安・日経平均高値引けから一転…
この夏は、8月5日に日経平均株価、史上最大の下げがあったり、翌日には市場の上げがあったり……。何しろ落ち着かない雰囲気が続いているのだが、この日のスタジオ周りもちょっとすごかったです。テレビやインターネットでの総裁選の中継画面と、株価、為替の動きをにらみ、どよめきがしょっちゅう起こる。ある種の熱狂状態……。
“時のあや”とでも言おうか。決選投票に進んで2回目の投票の結果が判明したのは取引終了後の15時20分頃。1回目投票では2位、これまで総裁選では4度の苦杯を舐めていた石破茂元幹事長が僅差で勝利――スタジオフロアで、そして(想像だけれど)いろいろな場所のディーリングルームで、もちろん関心のあるいろいろな場所でも、また一段と大きなどよめきが広がっただろう。為替市場では、円が16時過ぎには1ドル142円台後半まで買われ、この日の円安水準からは3円50銭程度の円高。その後、16時半に取引を開始した日経平均先物の夜間取引では、日経平均先物が2000円を超える急落……。「高市トレード」からのまさかの巻き戻しで「石破ショック株安」と相成ったわけだ。スタジオの中ではマネックス・グループ専門役員のイェスパー・コールさん。ナイスなリアクションを交えながら、“市場実況中継解説”を繰り広げていただいた。(日経CNBCon-line会員でない方も冒頭だけご覧いただけます)
短期勢の“おもちゃ”のような日本市場
確かに高市氏はアベノミクスの継承者を前面に出し、市場関係者の株高への期待は高かったと思う。一方、石破氏は総裁選期間中も金融所得課税に言及する場面があったり、日銀の利上げ姿勢には基本的には反対ではないとみられている。市場の反応は素直といえば素直だ。ただ、正直言って、この日の円安・株高→円高・株安の急激な動きが、どれほど“腰の入った動き”だったかは疑わしいと思っている。あるストラテジストはこの一連の動きを見ながら「日本市場は本当にヘッジファンドのおもちゃだなぁ」とつぶやいていた。材料と話題があり、かつかなりの程度の流動性のある日本市場、先物、為替市場は、短期的ボラティリティの宝庫のような存在だ。まあ、短期勢にとっては「動く」ことが収益機会の源泉なのだろうから、稼ぎ時ということだ。
週明け30日(月)日経平均株価が大幅安で始まるのは間違いない。ただ、現実の日本経済がどのような方向に向かうのか。これはそう簡単な話ではない。日本市場にとっては、ある意味で幸いなことに、27日(金)の米株市場はダウ続伸で最高値更新。ナスダックは5日ぶり反落。為替市場は弱めのインフレ指標から利下げ期待が続いていることもあり円高が進んで1ドル=142円台前半の水準。まあ、落ち着いた動きといってよいだろう。新総裁がどのような経済政策を打ち出すのか、日本企業への期待感が続くのか――。見極めるのはまだまだこれからだ。
『人事と権力――日銀総裁ポストと中央銀行の独立』
さて、一連の狂騒をみながら、今一番ホッと安堵のため息をもらしているのは日本橋本石町、日銀ではないかなぁ、と想像していた。高市氏は総裁選期間中にインターネット番組で、日銀の金融政策を巡って「金利を今、上げるのはあほやと思う」と日銀を強くけん制していたからだ。
7月に出版されたばかりの『人事と権力――日銀総裁ポストと中央銀行の独立』(岩波書店、軽部謙介著)は、政治権力の翻弄され続けてきた日銀と政治家、官僚を巡る迫真のドキュメントだ(陳腐な表現で申し訳ありません。この本、ホント面白いです)。特にアベノミクス時代の総裁や審議委員を巡る人事。「大体そんなことだろうかなぁ」と想像され、噂されていた動きに綿密な取材を重ねて迫る。特にリフレ派とされるメンバーが次々とにt銀送り込まれる局面その過程、そしてそれが巻き戻される動き――。高市氏の動きは決定的に重要だった。
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