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ロビンフッダーvsヘッジファンド シトロンは29日“重大発表”へ

市場波乱は思いがけないところから始まる。いつものことではあるものの、今回も意外な展開に虚を突かれた感がある。29日(金)の日経平均株価は大幅に続落。534円03銭(1.9%)下落して2万7663円39銭で取引を終えた。2日で971円の下げ。終値では2月7日以来、3週間ぶりに2万8000円割れ。トリガーとなったのは米国版デイトレーダー、“いなご5.0”とでも言おうか、個人投資家軍団のロビンフッダーと空売りファンドの激突だ。

ヘッジファンドを追い込んだロビンフッダー

ヘッジファンドが空売りしていたゲームストップなどの業績不振銘柄に対し、個人投資家軍団はSNS「レディット」などを通じて「株を買え!空売り勢を締め上げろ!」などと声を掛け合い“結託”。ゲームストップなどを猛烈に買い上げ、プロのヘッジファンド、空売り筋に大きな損失を与えるに至った。28日(木)には多くの米証券会社でゲームストップ株などの取り扱いを制限するに至る。この一連の投機的な動きは高値警戒感が広がりつつあった米国市場で一気に伝播した。市場のボラティリティは急速に高まり、ヘッジファンドのポジションの逆戻し、あるいはその連想からこれまで相場をけん引してきたグロース銘柄に売りが広がった。29日の東京市場でいえば、典型例が東京エレクトロンだろう。前の日の決算発表で上方修正して、通常であれば買われてもおかしくない。しかし商いを伴って4.9%の急落。日経平均株価を74円押し下げた。

市場規制などの議論も

証券会社がゲームストップなどの株式取引を制限したことについては賛否両論が広がっている。左派系の若者に熱狂的な人気を誇る民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は「ヘッジファンドに取引を自由にさせて個人投資家には取引制限か!」などと抗議。一方民主党の重鎮、エリザベス・ウォーレン上院議員は、28日の米CNBCテレビで20分近くも投機的な市場を非難、「SECは価格操作に甘すぎる」などとまくし立てた。今後、市場規制のあり方などに議論が広がりかねない雲行きだ。

ゲームストップ事件は近々、重要な局面を迎えそうだ。空売りファンドで有名なシトロン・キャピタルが米国時間29日朝(日本時間深夜)「重大な発表を行う」としている。またゲームストップ株の急騰で多額の証拠金が必要になったとみられるロビンフッドが「10憶ドル規模の資金調達へ動く」との報道もある。週末の米国市場がこれらをどうこなすかがまずは焦点となる。

“本命”は過剰流動性の微妙な変化?

さて、ここまで書いてきて違和感もある。高値波乱のトリガーとなったのは確かに“ロビンフッダーvsヘッジファンド”の激突。しかしどうもそれはトリガーであって“本命”とは違うのではないか。現時点ではあくまで僕自身の憶測だが、結局は世界の中央銀行の金融緩和姿勢の変化、過剰流動性の微妙な変化を嗅ぎ取って怯えているように見える。米パウエルFRB議長は27日のFOMC後の会見で「低金利と資産価値の関係は考えられているほど単純ではない」などと答えている。これまであくまで雇用の回復を重視し、資産価格の上昇はほぼ気にしない態度を示していたパウエル議長にしては微妙な変化に見えなくもない。

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もう一つ、目を凝らすべきは中国だ。コロナ封じ込めに成功し、世界の中でいち早く経済回復が進む。大和総研の齊藤尚登主席研究員は「政策当局は緩和資金が不動産や株式などに向かうことは好まない」と指摘する。“出口”を意識しているのか、上海銀行金利は20年央を底にじり高基調をたどっている。市場と中央銀行の神経戦もまだ続く。


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日本経済新聞社に入社。証券部、日経マネーなどを経て、今はマーケット・経済専門チャンネル、日経CNBCで主に「朝エクスプレス」という番組を担当しています。幅広ーいことが経済やマーケットとつながっているため、どうしてもいろいろなところを「見て」「歩いて」「感じる」――日々です。