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R4年度共通テスト追試問題が公開されないのはなぜ?(後編)

赤本,予備校サイトも共テ追・再試験は掲載せず
昨日の午後,東進ハイスクールから以下のメール返信がありました。
「大学入学共通テストの追試験、再試験につきまして,問題・解答・分析いずれの情報も弊社のウェブサイトに掲載の予定はございません。恐れ入りますが,ウェブサイトへの掲出は,大学入学共通テスト当日の問題・解答解説のみでございます。」
さて,そうなると令和4年度の追・再試験(以下「追試」)は、もはや「大学入試センター」の公表を待つしかありません(追記7月1日公表)。ちなみに『2023年版共通テスト過去問研究 国語』(教学社「2023年版共通テスト赤本シリーズ」)には,令和3,4年度の本試験(以下「本試」)は載っていますが,追試は両年度とも掲載されていません。
ただ,これも実は不思議な話なのです。「大学入試センター」のホームページには現在,令和4年度の本試の問題すら公表されていません。一昨日,入試センターに電話した際,「なぜすぐに公表できないのか? なぜ6~7月になるのか? 」と尋ねると,「著作権の許諾申請手続きに時間がかかる」との回答でした(現代文では出典となる文章の筆者や出版社の許諾)。

大人の事情(著作権問題)でワリを食う受験生
しかし,「大学入試センター」が,令和4年度の本試の問題を「公開できない」のに,なぜすでに発刊されている赤本では掲載できたのか。なぜ全国紙や大手予備校のHP上で今でも堂々と公開されているのか。
著作権許諾の手続きは,複雑で面倒なのは確かにそのようです。ただ,運営主体たる“お上”の「独立行政法人  大学入試センター」が「著作権許諾の関係で問題の公開は6~7月になる」というのは,一体どういうことなのでしょうか。試験実施からすでに4ヶ月近く経過しているというのに。
これからの時期,新傾向問題などへの対処法を練るために,できるだけ多くの過去問を解いておきたいのが受験生の心情です。なのに,赤本ですら共通テストは本試の2回分しか掲載されず,ネット上でも追試の問題と正解が公開されていない現状において,それでワリを食うのは真剣に学習している受験生です。何とかしていただけないものでしょうか。

共通テスト,旧センター試験の追試はややクセあり
現代文に限っていうと,旧センター試験では本試よりも追試のほうが難易度が高め,かつ実験的・野心的な出題をする傾向がありました。そのぶん,本試に比べてやや粗いというか,「正解の根拠」がいま一つ明確でないような難問が散見されました。
それを知っている進学校のある国語教師は,生徒たちに「追試は本試より難しくて厄介な設問が多いので,ちょっとくらい体調が悪くても本試で勝負するように」と言い聞かせていたとのことです。
共通テストも,どうやらその「伝統」を引き継いでいるようです。令和3,4年度の追試を解いてみると,「うーん,ムズいな・・・」と考え込んでしまう設問がいくつかありました。
その意味では,共通テストの追試は絶好の練習台,リアルな次年度対策として活用可能だとも言えます。

共通テスト追試は「予想問題」として最適の教材
大手予備校が実施する共通テストや大学別の模擬試験では,本番の試験よりやや難易度が高めに設定されています。模擬試験を受け慣れていると本番の試験が易しく感じられ,精神的にラクな気持ちで問題と向き合えます。このメリットは意外に大きいのです。
ただ,予備校が作る模擬試験は,もちろんよく練られているものの,必ずしも本番の試験の問題傾向に合致しているとは限りません。あくまでも「模擬的試験」なのでそれは仕方がないでしょう。
また,受験料が高いこともネックです。塾生でない一般受験生が共通テスト模試を受ける場合の受験料は,予備校によっても違いますが5,000~8,000円が相場です。
ところが,模試よりも実戦的な「共通テスト予想問題」が0円で入手できます。それが,共通テストの追試なのです。難易度は本試よりも若干高め,かつ「本番そのもの」であるため問題傾向は100%合致! これを「予想問題」として活用しない手はありません。

令和4年度追試に斬新な新傾向問題が登場!
推測ですが,追試は受験者数が少ないため(令和4年度は1660名),出題側も「ちょっと実験的な問題を出して,データを取っておきたい」との意識が働くのかもしれません(追試を受ける受験生には大迷惑ですが・・・)。
たとえば,令和4年度の共通テスト「国語」追試の第1問【評論】の問6では,「Nさん」が書いた【文章】を素材として,それを「論理的な文章」に修正させる設問(適切な「問題提起」に直して「結論」を付け加える、「その上」「要するに」「ふつうに」の語句をより適切な表現に直す)が出題されました。
これまでにない,非常に斬新な新傾向問題です(クオリティはともかく)。高校の教師や入試センターの作問部会などで好評なら,令和5年度以降の本試に採用されるかもしれません。

追試は今後の共通テストの方向性を占える絶好の教材
つまり,追試を読み解くことで,今後の共通テストの方向性をある程度予測することもできるわけです。受験生のメリットは,多様な新傾向問題に慣れておくことで,「見たことがない設問」が出題されたときのストレス耐性を養え,冷静に問題に取り組めることです。
そういうわけで,もし共通テストの追試の問題が公表されたら,実戦的対策の一環としてぜひとも活用してください。
最後に,ちょっとだけ宣伝。7月9日発刊予定の拙著『共通テスト現代文マッピング解法』(ブックマン社)では,令和3,4年度の本試と追試を合わせて計8題(評論4,小説4)を収録し,丁寧に解説します(一部は新傾向問題のみ)。

❖7月1日補遺:大学入試センター様,感謝!

2022年7月1日,「独立行政法人 大学入試センター」のウェブサイトにおいて, 令和4年度の本試験および追・再試験がアップされました!