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私見としてのあるべき精神科救急について

ちなみにヨーロッパのある大学病院(年間の受け入れ対応患者数7500人、入院期間2~10日)の精神科ERで、受け入れている精神疾患の順位は、一番多いのが感情障害、次がアルコール依存症、そして不安障害、薬物乱用、最後に統合失調症となっている。このヨーロッパの大学病院が受け入れる患者数の順位は、西脇病院における新患受診者の疾病順位と同じだ。
となると、これからの日本においても、社会が求める精神科救急とは、疾病構造の変化を踏まえ多様な精神疾患への適正、適切な対処だ。では、多様な精神疾患だが、国が2017年の定めるところによると、「統合失調症、うつ・躁うつ病、認知症、児童・思春期精神疾患、発達障害、アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル等依存症、PTSD、高次脳機能障害、摂食障害、てんかん」と確かに多様、多岐にわたっている。だがこれら疾患は、重複、合併、先にふれたマルトリートメントといった根深い家族病理も抱えているケースをも想定できる。臨床現場では息の長い取り組みが必須となる。よって、救急での取り扱いは、概ね72時間から1週間あるいは10日程度でいい。
その後は

  1. 任意契約に基づく急性期入院治療あるいはリハビリ入院に努める。「努める」としていることから新たな精神科専門医(現行の精神保健指定医はその役割は果たせてない。新たな資格制度が必要。そこで暫定的に精神科専門医としておく【資料4】)の判断の下で、引き続き急性期治療を目的とした非自発的入院の継続は可。

  2. 外来転帰。もちろん「病識欠如」と「否認」との判別は精神科専門医の責務である。その上で、退院を判断、外来通院を促すか、精神科クリニックへの紹介を!

  3. 他科と連携、合併症への対応も含めて、総合病院精神科が外来のみというのは問題だ。今後は有床病棟確保に努め、身体、精神両面のER機能構築を!【資料7】

  4. 自助グループ・回復施設活用。精神科専門医、および精神保健福祉士等は、少なくとも地元の自助グループ・回復施設の運営、内容に関しては熟知しておく必要がある。

  5. 警察等、他関係機関への適正、適切な介入要請。これは是非行政、関係機関側に求めたい。2014年7月16日佐世保高1同級生殺人事件発生前の精神保健指定医の要請に行政当局は無視。あのような対応は二度とあっていけないことだ。その反省を踏まえて関係行政機関は、新たな精神保健専門医の要請に応える体制作りを!

こういった見直しを行うことなく、「地域包括医療における精神医療」の枠組み作りにおいて、精神科クリニックにも夜間精神科救急の一翼を担わせようとの検討が進められていると聞く。とんでもないことだ。第2、第3の精神科クリニック放火事件につながりかねない。

西脇病院のテーマは『LIFE』である。「生命に関わる」、「生活を支える」、「人生を見守る」だ。ひょっとして、精神科医療にとって最も大事な『LIFE』とは、多くの居場所を提供し、ただただ個々の当事者(患者)の「人生を見守る」ことができれば一番いいってことかな・・・。いわゆる「息の長い付き合いがそれなりにできる」。そんな精神科医療・福祉を目指したいものだ【資料1】。

【巷では「・・・心療内科クリニック放火事件」と呼んでいる。だが私は「精神科クリニック放火事件」とした。その理由とは、『精神科は、統合失調症やうつ病、不安障害といった、・・・つまり精神疾患を診断・治療する診療科。心療内科は・・・、あくまで内科の一つ・・・』と。-日本心療内科学会中井吉英理事長「病院の実力2011総合編」読売新聞医療情報編-】

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