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『JOKER』を見た(ネタバレがある)

週末に『JOKER』を見た。
僕はこの映画を楽しみにしていて(そのくせ映画館で見ていない)、
ネタバレを慎重に避け続けていた。そして最近Amazonでレンタルが始まったので、満を持して鑑賞したのだ。
結論から言うと大いに楽しめた。

ジョーカーはいうまでもなくバットマンの宿敵だ。
サイコでクレイジーで高笑いが特徴的な非常に魅力的なキャラクターである。しかしその素性は全く明かされていない。時折劇中でジョーカーは自らの出自について言及するが、その話はいつも嘘だらけだ。

僕は実は3人のジョーカーを観ている。ノーランの傑作、『ダークナイト』でのヒースレジャー。『スーサイドスクワッド』のジャレッドレト。そしてほとんど覚えていないが、ティムバートン『バットマン』のジャックニコルソンだ。自宅に旧バットマン3部作(厳密には違うだろうが僕はそう認識している)のVHSがあり、何度も繰り返し見たのだ。個人的にはペンギンがめちゃくちゃ印象に残っている。『ダークナイト』『スーサイドスクワッド』については今は置いておこう。ハーレクインの映画にジョーカーが出ないのは本気で許せないが。おのれポリコレ。

本題に入ろう。
今作のあらすじは以下の通りだ。

​売れないコメディアンのアーサー・フレックが暴漢に遭遇したのは、ゴッサムシティの街を道化姿でさまよっていたときだった。社会から見捨てられたフレックは徐々に狂気への坂を転落してゆき、やがてジョーカーという名のカリスマ的な犯罪者へと変貌を遂げる。トッド・フィリップス監督が放つ、衝撃のサスペンス・エンターテイメント! 

良いあらすじが見当たらなかったのでこれはAmazonの紹介文だ。この文章ではっきり言っている通りこれはジョーカーのオリジンだ。これを見る人は全員そのことを知ったうえで見ているはずだ。ひ弱で社会のつまはじきもののアーサーが、クレイジーでクールなジョーカーに生まれ変わることを全員が知っている。ストーリーのオチを全員が承知している特殊な映画なのだ。

実際のところそうでなければなかなか見続けることが難しい映画だっただろう。映画前半部分、全体の七割はアーサーがどんどん追い詰められて、不幸になっていく展開が続く。これを見ながら僕は『ダンサーインザダーク』を見た時を思い出していた。なんともいたたまれない、苦痛を感じていた。

にもかかわらず、僕はこの辛い時間をかなり集中して観ることができた。たしかに音楽や映像の妙で飽きさせないように工夫はされていたのだろうが、一番の要因はカタストロフィが確実にある、という前提によるところが大きい。アーサーが覚醒し、ジョーカーに生まれ変わることを確信していた。アーサーが人を殺すことに葛藤を覚えなくなるにつれ、僕は「よしよし、きたきた」とほくそ笑み、ラスト近くでアーサーが喝采されるシーンで興奮は最高潮、僕はにやりとしていた。

今作のように前半延々と鑑賞者にストレスを与え続け、主人公が失敗に失敗を重ねる映画は他にもある。でも僕はあまりそういう映画が好きでない。そういったシーンを早送りしたりすることもある。でも『JOKER』は約束された覚醒があるからこそ、緊張感をもっていつ爆発するかを心待ちにすることができた。そういう意味で非常に稀有な作品で、印象に残った映画だった。

さて、ラストシーンについてだが、色々考察記事を読んだうえで僕が納得できたのは「映画の内容はすべてアーサーの妄想であった」とする説だ。その根拠を並べ上げるのは他の記事に任せるが、これは間違いないだろうと思っている。

じゃあ、アーサーはジョーカーなのか。これは非常に微妙だ。ジョーカーは別にいて(もしかするとコミックスのキャラとして)、アーサーはジョーカーのフォロワーである可能性も十分にある。真相は製作者たちにしか分からないが、僕はどっちでもよいと思っている。なにせアーサーはかっこよかった。ラスト30分だけの見せ場だったが、かっこよすぎた。一張羅のスーツに着替えたあとのシーンが最高すぎた。マレーを殺す前に半泣きになっていたり、自分を孤独な精神障害者と言っていたりしたところはあまりよくなかったが、それでもホアキンがたばこをふかしながら意気揚々と歩くシーンは最高のシーンだった。それだけで僕は満足だった。


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