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ニケと歩けば そのsoixante-dix-sept

パンダのタンタンがいる王子動物園。

コアラを一緒に見ることができる日本唯一の動物園です。

少し離れたところからの写真なので観覧車も見えず動物園の雰囲気は撮れませんでした。端っこの方なのでなおさらです。園内には異人館の旧ハンター住宅があります。北野から動物園に移築された重要文化財が子供たちが走り回る園内にあるのはとても珍しいことです。

ここは親子二代、三代、神戸っ子の幼い時の思い出の1ページに必ず出てくるところです。

100円の乗り物は動物を見た最後の楽しみで、疲れた親がベンチに座り自由に走り回る子供たちでにぎわっているコーナーです。

そのずーと奥に長ーい二台の滑り台があります。いつでも大人気で飽きもせず何回も滑っては降りまた滑る。子供が数珠つなぎで並んでいます。

何十年も前、私も並んだような気もしますが、確かではありません。次は二人の子供、今では孫たちが時間を忘れて何度も繰り返し階段を上ります。疲れを知らない子供です。それを見守る親の代が変わってもみんな同じ表情で見ています。てっぺんに子供が立つと親の方がちぎれんばかりに手を振ります。

王子動物園の話になると最後に必ずこの長ーい滑り台の話が出てきます。親の年代が違うのに同じことを言う。結構盛り上がります。「私もすべったー。」「子供が帰らなくて困ったわ。」

でも若いママが知らない諏訪山にあった王子動物園の前身、諏訪山動物園。

王子公園に引っ越しする象の諏訪子と摩耶子の話は「ニケと歩けば trente-huit」で書きましたが、ちょっとセンチになる歴史もこの動物園にはあります。

動物園の改札を通ると目に入るフラミンゴの群れ。雛はグレーの産毛がふわふわでサーモンピンクの親が大事そうに長い脚元で守っています。

みんなそこでいったん足が止まります。小さな子供は走って金網に近づきます。「くさーい!」と言いながら片足を上げたり手を鼻先に当ててくちばしの真似をします。「そろそろ行こ!」と促す親。

孫の手を引く私が知らぬ間に大きな父親と手を繋いでいます。静かな父は促すこともなく一緒にいつまでも見ています。堪能した私は、真っすぐの坂か左に行くかで迷いながら必ずまっすぐ行った右の象舎に向かいます。

遠い昔の感触は案外いつまでも残っているものです。

今日は秋晴れの祝日。また思い出の1ページが生まれそうです。




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