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「参加型双方向ウイルス」は勝手に激しく伝染する

◆◆出版記念パーティー祝辞(フルバージョン)◆◆


【1】出版記念パーティー
 クラウドファンディング界を賑わせたこの本がついに刊行された。2020年7月11日(土)、予定されていた出版記念パーティーはZoom上で開催されることに。

●橘川幸夫『参加型社会宣言~22世紀のためのコンセプト・ノート~』メタ・ブレーン, 2020.7.1, 328p., 新書判, ¥2,420(税込),(未来叢書)
ISBN-10: 4905239575
ISBN-13: 978-4905239574
https://www.amazon.co.jp/dp/4905239575/

 ひとり3分間で祝辞を述べよといういつもの未来フェス型の進行。
祝辞の登壇者は事前に割り振られているらしいから、今日は当てられないだろうと油断していたら、やっぱり全員発言となった模様(笑)。

【2】その場で用意した「祝辞」
 橘川幸夫さんとは全面投稿月刊雑誌『ポンプ』(1978年創刊)の編集部にイラストレーター伊藤博幸君(イトヒロ)に連れられて行ってお会いしたのが初対面だ。偶然にも「幸」トリオの結成だ。(イトヒロとは神田にある美学校の赤瀬川原平絵文字工房の1978年度同級生)

●橘川幸夫『企画書―1999年のためのコンセプトノート』JICC出版局,1981年(1997年にメタ・ブレーンから復刻版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J7Z0MM/

 小生の人生において影響を受けた本の一番目は中学生の頃に読んだ『カムイ伝』(小学館ゴールデンコミックス,全21巻,1967-1989年)だった。
二番目が二十代に読んだこの本だ。(重要度ではなく順序の意)

【3】『ポンプ』の編集現場
 『ポンプ』編集部では、前の号で募集したお題について読者から届いた手紙やハガキを橘川さんたちが読んで分類整理して次号次々号の特集別の原稿ボックスに投げ込んでいた。それが写植になり、版下用紙にペーセメで貼り込まれていく。へぇーっ、『ポンプ』ってこういう流れでできていくのかと編集現場の作業を見学できた。
 40年後の今の目から見ればFacebookやTwitterの機能として理解できるコンセプトを紙の雑誌上で実現してみせたということだ。この『企画書』で提示された情報の双方向好循環自動発展モデルとでも言うべき未来像こそ橘川さんの先見性だ。
 その後ぼくは『ポンプ』の周辺でいろいろ活動させてもらい…(中略)…情報の双方向性ということの意味を体験的に学び、図書館の仕事で趣味であちこちで応用しまくることになった(本稿では詳細略)。

【4】最初の橘川幸夫論
 このあたりのことは以下の書評に書いたのが最初の橘川幸夫論ということになる。

書評
●仁上幸治「情報ハンドリングの秘伝書:図書館員を変えるイメージトレーニングのために」『情報管理』51(11),2009.2, pp.850-853.[全文] (JSTAGE;\: PDF 430K)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/51/11/51_11_850/_pdf

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7月11日当日のZoom上の祝辞はここまでの前段で3分間の時間切れで失礼。
以下、本論というか事後補足の後段。
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【5】「参加型双方向ウイルス」
 新型コロナウイルスの時代に喩えれば、橘川さん発祥(発症?)の「参加型双方向ウイルス」に感染したみたいなものだ。感染者は潜伏期間を経て次の接触者にどんどん感染させていく。
 ウイルスは伝染病の原因としては社会の悪役であるが、実は生物の進化の原動力でもある。直接間接の「弟子」たちはそれぞれの持ち場であちこちで勝手にウイルスの拡散に日夜励んでいることだろう。「参加型双方向ウイルス」恐るべしである。

【6】授業と講演での応用
 ぼくの場合、その後、10校の大学で司書課程・司書教諭課程・基礎教養科目を教えるようになってから20年余。最初から授業そのものを全面的に参加型双方向性コミュニケーション主体で設計運営してきた。毎回の課題レポート(A4判1枚)、次回冒頭に4人の小グループで一人1分プレゼン、グループまとめ、全体報告・討論。映画・ドラマ・アニメ・CMなどの図書館場面映像を見せて討論。その日のテーマ解説。随時マイクを渡して理解度を試す。DVD『情報の達人』の動画投影して討論、200字感想の6分間ミニレポート提出。レポート課題説明。宿題で授業アンケート(Googleフォーム)に良かった点と要改善点を書かせて、次回すぐに改善策を示す。
 学生たちはウトウトしたりケータイをいじったりする余裕もない目まぐるしさだ(笑)。90分間はあっという間に終了する。

【7】参加型授業の圧倒的な教育効果
 講義+ノートテイク形式に慣れ切った学生たちは徹底した双方向性に最初は面食らうが、このサイクルを毎週15回繰り返すうちに、学ぶ・書く・伝える・シェアするという参加型循環コミュニケーションの楽しさにだんだんと目覚め、やみつきになり、自主的主体的な学習態度が目に見えるほどクラス内に溢れてくる。卒業後は図書館員になり教員になり(あるいはそうならずに会社員になり起業家になり)、それぞれ勝手に参加型双方向ウイルスの拡散に励んでいるにちがいない。
 アクティブラーニングとかラーニングコモンズとか、大学教育界は今頃何言ってるんだ感に脱力するしかない。
 図書館員向け研修や市民講座などでも双方向性は変わらない。講演会型より、事前事後アンケート、ワークショップ、討論・発表型で楽しく学んでもらう。昨年は43本、生涯で360本を超えた。全国に主催者・参加者の人脈ができる。その人脈をたどって橘川さん発案の「未来図書館創造会議」が全国各地で開催されている(本書p.182~187。企画提案書15「未来図書・創造会議」を参照。ここではなぜか「館」が「・」になっている)。

【8】次作への期待
 本書「あとがき」の中の「(9)本当のあとがき」という構成に驚愕した。本文の多くがコロナ渦騒動の中での書き下ろしの文章になっていて、長年書き溜めた原稿じゃないっていうライブ感が伝わってくる。
 さらに、あとがきが次の本の予告編どころかまえがきになっているわけですね。早く、次を読みたい。(笑)

【9】橘川幸夫の本メモ
 ここ10年間で以下の著書が刊行されている(購入の手間を優先して、あえてリンク先URLは版元ではなくAmazonのページにしてある)。

●橘川幸夫『21世紀企画書―日本型インターネットの可能性』晶文社,2000.
https://www.amazon.co.jp/dp/479496434X

●橘川幸夫『森を見る力: インターネット以後の社会を生きる』晶文社,2014.
https://www.amazon.co.jp/dp/4794968388/

●橘川幸夫『ロッキング・オンの時代』晶文社,2016.
https://www.amazon.co.jp/dp/4794969406/

●橘川幸夫『参加型社会宣言~22世紀のためのコンセプト・ノート~』メタ・ブレーン, 2020.7.
https://www.amazon.co.jp/dp/4905239575/

以上

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