お勉強203:いいがんの治療が、患者にとっていい治療とは限らない?
先日紹介したこの記事の論文に
https://note.com/nijuoti/n/n240af7e84a8e
JCOG0802/WJOG4607Lの結果が…と書いてあったが
どこにも情報がなく、こういう時は、
「世界で一番早い情報機関」
ツイッターに聞いてみたところ、一発でhit
https://twitter.com/BrendonStilesMD/status/1388882363061608449
今年のAATSで報告されたJCOG0802/WJOG4607L
↓が主な情報
https://rctportal.niph.go.jp/s/detail/um?trial_id=UMIN000002317
要するに
造影胸部CTで以下の①~⑤をすべて満たす。
①単発の腫瘍である
②非小細胞肺癌が疑われる
③腫瘍の中心部が肺野末梢(外3 分の1)に存在する
④腫瘍の原発が中葉ではない
⑤所属リンパ節に転移を疑わせる所見がない
2) 胸部薄切CT 上、以下の①②を満たす。
①腫瘍の最大径が2 cm 以下
②胸部薄切CTにおける病変の
最大径/consolidationの最大径>0.5
と区域切除ができる、GGO主体でない早期肺がん疑いに
区域切除と葉切除との比較試験を行った。
(最初は非劣勢試験だったらしい…)
すると、結果は驚くべきことにOSで
「区域切除>葉切除」とのこと
再発は区域切除の方が多いのだが…
他病死が葉切除に多い、というのがOS低下の原因。
この結果を即SBRTに輸入するのは危険だが、
低侵襲な治療、というのがPFSでは勝てなくても
OSでかってしまう、という結果は今後も
出てくることが予想される
そういう観点で今後のがん治療の最終のエンドポイントは
やっぱりOSで見てなんぼ、という時代になりつつあるのかもしれない。
また、免疫チェックポイントが入ってきて、
OSのMSTでは負けてもじっくり熟成するとtailで差が出る、という
今までの臨床試験では奇妙な事態も起こりうるわけで、なかなか
臨床試験、というものが難しくなりそうと思っている。
「がんの治療としていい治療」
というのが
「患者にとっていい治療」ではない
というがん治療医としては色々自戒を含む含蓄深い
試験ではある。
区域切除の再発率はほぼSBRTと同様なので
低侵襲度合いを考えると… と放射線治療医は思ってしまう。
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