お勉強456:頭頚部のCRTは副作用がなんだかんだで、多いと思っていたけど、手術も結構大変だった。
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(19)30410-3/abstract
中咽頭がんの治療としてTORS(transoral robotic surgery)が
近年出てきて、原発はTORS,頸部は廓清、というのが
「流行っている」のに対してRTと比べて実際どうなんや、
という試験
背景としてはもちろん中咽頭がん患者が若年化しており
長期有害事象を考えて、TORSに流れている、ということのよう
非ランダム化試験だと、TORSのほうが機能的に
有利、という報告もあり、それの検証試験。
非盲検、並行群間、第2相、無作為化試験。
カナダとオーストラリアで行われた試験。
AJCC7thでT1~T2、N0~2(4cm以下)の中咽頭扁平上皮患者を
放射線療法(70/56or63 Gy、N1~2の場合は化学療法を併用)
TORS+頸部郭清 原発には1cmマージンを取ることを前提
2週以内に選択的頸部廓清をする
(病理所見に基づき補助(C)RT 60-64Gy/30Frを併用または非併用)
に無作為に割り付け(1:1)。
p16の状態による層別化後、無作為に割り付け
主要エンドポイントは、
MD Anderson Dysphagia Inventory(MDADI)スコアでの
1年後の嚥下関連QOL(スコアが高い方がQOL良い)
TORS+頸部郭清群で10ポイントの改善を見込んだ。
解析はITT解析
2012年8月10日から2017年6月9日の間に
68例の患者が無作為に割り付け(各群34例)
年齢中央値は58.5歳、87%が男性
一番多かったのは扁桃癌
ベースラインでPETを取られているのは2割ぐらい
ケモ併用は7割ぐらい
p16陽性は約9割
RT群で2例治療拒否
12%がサルベージ手術を受けている
(1例原発・3例頸部)
TORS+頸部廓清群でも7割ぐらいはRT受けている
R0率は30/34 病理学的ステージは
pT1/2/3=15/15/4
pN0/1/2=10/7/17
追跡期間中央値は、
放射線治療群で25ヵ月(IQR 20-33)
TORS+頸部郭清群で29ヵ月(23-43)
1年後のMDADI総スコアは、
放射線治療群では平均86-9(SD 11-4)
TORS+頸部郭清群では80-1(13-0)であった(p=0-042)。
※ただし、RT群7人、TORS+頸部廓清群4人1年時点の
スコアが取れていない
スコアのサブグループを4年あたりまで見ているが
基本的にRT群が上
(が、RT後サルベージ手術を受けた分は68…
TORS+頸部廓清後にRT/CRTを受けてもスコアはそれほど下がらず)
有害事象は
好中球減少症・難聴・耳鳴りがRT群で多く、
三叉神経麻痺はTORS+頸部郭清群で多かった。
放射線治療群で最も多かった有害事象は
嚥下障害(n=6)、難聴(n=6)、粘膜炎(n=4)で、すべてG3であった。
TORS+頸部郭清群では嚥下障害(n=9、すべてG3)が認められ、
TORS後の出血による死亡が1例あり。
臨床的に優位差はなかったが、
TORS+頸部廓清は放射線治療より
(短期的な)QOLが勝る、ということはなく
1年の時点では臨床的には意味がないが、悪い傾向だった
TORSと放射線療法の比較において、
ランダム化試験としては初めての試みであったそう
非ランダム化試験の結果でTORS増えてたけど、
「お前ら一歩立ち止まって、考え直そうぜ!」
「中咽頭がん患者には両方の説明を!」 というメッセージ
<おまけ>
先日のESTROでORATOR2の発表があったことは記した。
(こちらも片群30人程度の試験)
ORATOR2はp16陽性の中咽頭がんで
RT(必要に応じてCDDP追加、線量は60Gy)
TORS+頸部廓清(アジュバントRT軽めにしていると)
を比較する試験
https://twitter.com/drdavidpalma/status/1787548875575747015
放射線療法がOS/PFSで有利。(ORATORでは差なし)
(一人も進行していない)
TORSで二例死亡しているが、
このORATORの論文のディスカッションにもあるが、
TORSはちょっと間違うと死んじゃう
要注意な治療、とのことらしい。
断端陽性例はちょっと多い(でもNDBよりはだいぶ少ない)とのこと
食べたり、咳したり、鎮痛に関してはRT有利だが、
匂いや味に関してはTORS有利。
QOLも途中からRT群は落ちてくる(晩期障害?)
https://twitter.com/drdavidpalma/status/1787445992737919405
にもう纏められちゃっているのですが、
・そもそも論としてTORS可能な群のほうが、放射線治療も
治療成績が良い(TORSが過大評価されていた可能性)
・フォローを長くすると誤嚥やtube-feedingがTORS群で増える
・でもQOLも途中からRT群は落ちてくる(晩期障害?)
・重要なのは「手術後RTしないですむ群を手術すること」
副作用の全く違う治療であり、
治療前に外科医・放射線治療医両方からの説明が大事!
というのがファイナルアンサー!
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