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「鱗粉」人生逆噴射文学賞 佳作

割引あり

 夜の蝶だなんてよく言った。
 所詮蛾だ。よくて蛾だ。派手な蛾だ。
「会話が巧いね」なんていうセリフ。銀座ホステスが指南本を出す。一流の心理学者かとでもいうような。蝶はきれいで、蛾は汚い。同じ羽があって、ぱたぱた飛ぶのに、なんで汚いんだろうなあ?
 店は、だいたい汚い。でも照明と酒でそんなの全然わかりはしない。フロアなんて、舐めれたもんじゃない。煙草の煙っていうか、もう粉が、焼きついた喉にひっついて咽ぶ。苦しそうにすると、いやらしい客は悦ぶ。そんな顔をさせてみたいねと。死んで。死ねばいい。むしろ死んで。うん死んで。

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