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vol.1|一緒にいた日々を思い出しながら過ごすことで、少しずつ受け入れる毎日

天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。

飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。

ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。

大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。

vol.1となる今回は、チワワとポメラニアンのミックス犬であるモカちゃんのお話をお届けします。

犬種:チワワとポメラニアンのミックス犬/女の子
享年:16歳
語り手:S.Aさん


家族には甘えん坊、外ではライオンみたいだったモカちゃん

顔つきはチワワ、毛質がポメラニアンでふわふわしたお顔立ちが特徴のモカちゃん

モカちゃんについて、出会いも含めて教えてください

チワワとポメラニアンのミックス犬です。16年一緒に過ごして、ついこの間2024年5月30日にお空に行きました。

私が高校を卒業したときに、アルバイトで貯めたお金を初めて使ってモカちゃんを迎えました。元々小さい頃に近所で飼われていた怖いわんちゃんに噛まれたことがあって、犬が怖いと思っていたんです。なので犬が大好きだったわけではなく、本当にたまたまモカだったから、飼いたいなと思いました。

出会った当初は、一歳半で自分のお母さんと離されてしまっているのですごくかわいそうだと思っていました。自分がこの子のお母さんのような存在になれたらいいな、ちゃんと愛のある家庭でしっかり育ててあげたいなって思いました。

どんな性格でしたか?

すごく警戒心が強い子でした。お散歩に行くと触りたいって言ってもらえるんですけど、わんわん吠えていました。顔は可愛いのにライオンみたいでしたね(笑)他のわんちゃんも全然得意じゃありませんでしたし。

でも、私たち家族に対しては甘えん坊で。女の子なので、やっぱり男の人は好きみたいでした。私よりも主人のことが好きだったんです。私には見せないような一面を主人には出していて、歯磨きをしている主人の歯ブラシの周りをぺろぺろすることもありました。私にはやらないのに……。

モカのお母さんになろうと思っていたのに、欲しかったのは恋人だったのかもしれません(笑)

迎え入れて360度変わった自分の生活

モカちゃんが来て、生活は変わりましたか?

モカを迎えたとき、ずっと1人で家に置いておくわけにはいかないと思って正社員で働くことを辞めたんです。そばにいたくて。本当に自分の子どものように育ててきたというか、赤ちゃんのように一緒にいました。もう360度生活は変わっちゃったかもしれないです。

そんな風にモカちゃん第一でしたが、出産して子どもが生まれてからは、やっぱり子育てが大変でそれまでのようにモカに構えなくなっていました。でも、逆にモカの方が支えてくれていたんですよね。

子どもが熱を出したらずっと布団の上で見ていてくれたり。子育ての大変な時期をずっと見てくれていて、モカも赤ちゃんを見守ってくれているようでした。

ヤキモチは焼いていませんでしたか?

最初はヤキモチを焼いていました。泣いている赤ちゃんを主人が抱っこすると、モカもわんわん鳴いたりして。取られちゃったと思ってヤキモチを焼いていましたが、2人目、3人目になるともう全然微動だにしなくなりましたね。

家族みんなが揃う日を待ってお空に

亡くなる前日に不思議なことがあったとか……?

モカは16歳で亡くなる最期まですごく元気なわんちゃんでした。大きな病気をすることもなく、持病もありませんでしたし、亡くなる前日までご飯も食べていました。

亡くなる前日、私の誕生日のお祝いをしていたときに、長女が「小さなお葬式」ってずっと歌っていたんです。9歳の長女はお葬式が何かも知らないのに。せっかくの誕生日なのにと思うだけで、まさかこんなに元気なモカが明日亡くなるとは思っていませんでした。

その日、主人がモカちゃんを綺麗にお風呂に入れてくれて、そのあとモカはいつも通り主人と寝ました。

次の日朝起きると、モカはもう自分で起き上がる力がなかったんです。抱き抱えてリビングに連れて行ったんですけど、もう力が全く入っていなくて、やばいモカちゃんが死んじゃうって思いました。口元に、絶対食べないことなんてなかったチーズを持っていっても食べなかった。これが最期かもしれないとその朝思いました。

ご家族はどうされていましたか?

平日の朝だったので、みんな学校や保育園、仕事に行きました。そのあとゲージで寝かせていたんですが、まだ起きれないだけみたいな感じで、死んじゃうのか眠いだけなのかがわかりませんでした。

ずっと息も落ち着いていましたが、急に寝ながら黄色い液を吐いてそのまま息を引き取りました。苦しんでいたのは、本当に5分か10分くらいだけで、うとうとしながら逝く準備をしていたんだなっていう感じでした。

ちょうどその日、うちのおばあちゃんや親が遊びにくる日だったんです。モカをうちに迎えた日にいた実家のみんなが揃う日でした。モカがその日を選んだんだよねって、みんなで話しました。

大好きなお家でモカちゃんと過ごすという選択

亡くなったことが分かってから、どうされましたか?

亡くなってからすぐは、どうすれば良いのかわかりませんでした。今まで犬の死に向き合おうと思ってはいましたが、怖くて向き合えなかった。もう16歳だったので、頭ではそうだろうなと思ってはいたものの、それを考えると死んじゃう気がしてしまって。

亡くなった悲しみがある中で、遺体を置いておくにしてもこの気温だしな……とか考えていました。

旦那の方の実家で飼っていた猫ちゃんが亡くなったときに、火葬の車が家まで来てくれたことを聞いていたので、うちもそうしようと思って連絡をしました。その日の夕方には火葬車の方が来てくださって、みんなで見送ることができました。

みんなが揃っている日にできたらと思って連絡したら、その当日に来てくださったので、それは本当に良かったなと思います。

まだまだ寂しさや悲しさが残っている日々だと思います。

やっぱり子ども達もモカがいる生活を生まれてきてからずっとしていたので、特に9歳の長女は一番泣いていました。まだまだ、今でもみんなで泣いています。

家に帰ってきて「ただいま」って言ったら、モカがわんわんって吠えてくれたのに、それがなくなっちゃうんだなとか。子どもが食べこぼした離乳食をモカが拾って食べていたんですけど(笑)、もう子どもが落としても食べてくれるモカがいないんだと思ったり。そういう自然に染み付いていることから、16歳の我が子を失ったんだなと感じます。

まだ小さいお子さんを含めて、心の整理はどのようにされていますか?

姉が贈ってくれたモカちゃんに似ているお人形を、みんなでモカちゃんだねって言ってなでなでしています。みんなで必ず朝手を合わせて、お水を変えて、モカのお世話をすることによって心が落ち着く感じがします。

骨を受け取らない選択をされる方もいますが、やっぱりいきなりモカがいなくなっちゃうと私たちも寂しいので。骨だけど、全く別のところにモカちゃんを入れるのはまだ私たちの心的に無理なので、モカの大好きな家に置いておきたいと思っています。

モカはまだ家にいるんじゃないかなって思う時もあります。足音がする気がしたり、なくなってから今まで見たことがなかったアゲハ蝶が自宅の周りを飛んでいたり。

できなくなることは増えるからこそ、今を大切に

16年一緒に居て、モカにとってすごく良い形でお空にいけたなと思っています。元気に過ごせて、最後の最後までご飯も食べれていて。そこに対して後悔は全然無くて、モカは良かったなって思います。

最期の過ごし方で良かったことや、やっておけば良かったと思うことはありますか?

体の周りにたくさんお花を置いて、お手紙を書いてありがとうと言えたこと。最後はみんなで写真を撮りました。遺体の写真を撮っても……と思っていましたが、骨になる前の最後の姿だからみんなで撮って良かったなって思います。

ただ、毛を取っておけば良かったと思います。あとは、肉球の匂いがすごく大好きだったので、どうにかこの匂いをとっておけないのかなって最後まで考えていました。

最後に今、愛犬との時間を過ごされている方へメッセージをお願いします

やっぱり老犬になってくると、トイレができなくなったり、夜鳴きが激しくなったりします。私の場合、子どもの夜泣きと重なってもう無理だと正直思ったこともありました。モカが辛い時に、自分が受け止められる器がなかったことに、申し訳なさを感じています。

歳を重ねると、今までと同じような元気な姿は少なくなります。お散歩ができる時期にお散歩にたくさん行って、大好きな人とたくさん走り回らせてあげて、そういう時間を大事にして欲しいなと思います。

〈おわりに〉

ご家族全員が揃う時にモカちゃんをお見送りすることができたお話を聞いて、きっとモカちゃんがその日を選んだんだろうなと感じました。お別れの仕方や、その後の供養の仕方など、たくさんの選択肢があります。まだまだ心にぽっかり穴が空いたような気持ちがあると思いますが、モカちゃんのご家族にとっての選択ができればいいなと思っています。
大切なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

(聞き手:西澤七海/ライター)

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