見出し画像

もったいないキッチン@北海道夕張郡栗山町(オーダーメイド出張料理)

ご依頼の趣旨


北海道は札幌市内からバスで東へ1時間半ほど。
夕張郡、栗山町。

この時のご依頼はフードロスに関する映画の上映会のあとフードロスになるはずだった食材を集めてのパーティ料理のご依頼でした。

場所は廃校になった小学校を環境教育の拠点として産まれ変わったコカ・コーラ環境ハウス(元・雨煙別小学校)の音楽室。

小学校の趣きを残したまま自然環境と遊ぶための施設に。宿泊もできます。
僕ら主催スタッフ陣もそのまま宿泊させていただきました。
学校に泊まれる!!って子供の頃の夢を叶えられます。


パーティ会場の音楽室。美しくリノベーションされていました。
こんなところで料理させていただけるなんて幸せな仕事です。

映画のタイトルは「もったいないキッチン」

食材救出人/映画監督のダーヴィド氏が、日本のコンビニエンスストアなどを周り、フードロスの現状や、どう希望を見出すか、などヒントくれる映画です。

映画の最後の方にダーヴィドさん達が集めた食材を使って出張料理人のソウダルアさんが指揮し、みんなで料理を作ってパーティをやるシーンがあるのですが、そのようなパーティ料理を創って欲しいとのご依頼でした。

今回が普段のオーダーメイド出張料理と違うのは、

①イベントの一週間ほど前から現地入りし、実際に農家さんを回って素材から集めるところ(結果20種ほど、120キロ近い野菜を60名分✖️2回調理。)

②何が食材として使えるか分からないので、素材を集めてからメニュー構成と全体のテーブルコーディネートを考える。

③裏テーマとして、個人のストーリーのあるアイテムをテーブルに設置し、ご依頼主様がパーティに来た方とコミュニケーションを取れるようにする

④フードロスになる食材は「ゴミ」なんかではなく「宝の山」だと、上映会に来てくださった方達に、パーティ料理とその時間を通して体験してもらうこと。


農家さんを巡って素材を集める

せっかくやるなら、映画をなぞって食材から集めないとね!!と息巻き、イベントの一週間ほど前から現地入りさせていただき、ご依頼主のあやかさんと、沢山の農家さんを回らせていただきました。もう出荷できなくなってしまった時期を過ぎたものや、規格外、傷がある、など何らかの問題がある野菜を集めました。

かき集めてきた素材たち


「おかわかめ」のガーデン。
「おかわかめ」は野菜の名前です。
みなさん、「おかわかめ」を知っていますか?

実際、問題というのはある側面から見て「問題」と限定的な状態だったりすることが多いのかなと思います。別のメガネをかけた誰かの目からすると、その問題は宝の山だったりする。仕入れメガネではなく、料理メガネの僕はどうやってあやかさんや、パーティに来られた方々を驚かせようかな〜と、ずっとワクワクしっぱなしでした。傷物や少し育ち過ぎた野菜は、調理する側からすれば大したことはなくて、美味しい料理に変えられることがほとんどです。フードロスの問題はどういうメガネを持つ人たちに渡っていくかの構造を再編成すべきだなと。

農家の田中さんから大量のネギもいただきました
映画の中で、焼きねぎのドレッシングが使われていたので、より映像とリアルを臨場感を持って繋げるために、実際に焼きねぎのドレッシングを作り、


田中さんのおかわかめとカリフラワーのマリネ
〜焼きねぎのドレッシング〜
こちらはもう廃棄になってしまうかぼちゃたち
中はこんなに美しいオレンジ。味だって、十分に美味しい。
大切に育てられたブランドものの銘かぼちゃだという。少し育ちが悪い、傷がついている。
そういうことで出荷されず、よく見ると畑にゴロゴロしている。
学生時代からこういう風に僕らも扱われているのかもしれない構造に思いを馳せた。
農家さんがかぼちゃたちを見つめる背中と語りが忘れられない。

食材集めをする中で、肉感を持って農家さんの嘆きに触れられたことはフードロス問題に直に触れる大きな経験だったと思います。

あやかさんちの裏庭の栗。
団地の裏の誰も食べない木の実。
都会ではよくあることだけど、これも立派にフードロス。
住民でわけあえるような取り組みをできないものか。
かぼちゃと栗のサラダ
〜炙ったゴルゴンゾーラチーズのソース〜
かぼちゃのクリームソースペンネ

このようにして、5日間ほどかけ、約120キロ近い野菜を集め、メニューを考えては仕込み、仕込んでは構成を考え、最後はこんなメニューに。

あやかさんのご友人方が会場の音楽室の黒板にメニューを手描き!
おかげさまで絵本の中にいるような1日でした。

<もったいないキッチンメニュー>

①井澤さんジャガイモのフライドポテト(つっつのほれまるケチャップand 山わさびと生姜のBBQソース)
②地野菜のラタトュイユ
③地野菜のバーニャカウダ
④かぼちゃと裏庭栗のサラダ
⑤田中さんちのおかわかめとカリフラワーのマリネ(焼きネギドレッシング)
⑥北海道産鮭とズワイガニのピラフ
⑦榎本さんちのトマトを使ったペンネ・ポモドーロ
⑧渕野さんちのペンネ・ディ・ズッカ(かぼちゃソースのペンネ)


立食、ビュッフェ形式で60名分の料理をお出ししました


ご依頼主様のヒトトナリを空間に

料理だけでなく、空間も、「誰かが捨ててしまう何かは誰かのたからもの」という主宰のメッセージが伝わりやすいようにコーディネートしていきました。そして裏テーマである、あやかさんが「会場にきた皆様と話が弾み、友達となっていける」きっかけとなる要素を散りばめました。

あやかさんから託された思い入れのあるアイテムを部屋にさりげなく置いてみたり
あやかさんの料理好き・野菜への想いが伝わるようにテーブルコーディネート
ル・クルーゼやカッティングボード、りんどうなど、あやかさんの私物
あやかさんちの周りの植物を活けてテーブルへ
名も無い道端の植物だって
お客様たちへのブーケになる
こちらも1日かけて採集へいきました。
いただいた野菜達も会場の彩りに

命は命を育む

1週間かけて、おかげさまで自分も沢山の友達ができたし、参加者、スタッフの皆様、多くの方が、あの時間を供に楽しんでくださっていただろうなぁと思います。全部料理を出し終わって、校舎の端っこで燃え尽きていたら、いらっしゃった参加者のみなさまが帰り際に「ご苦労様」、「美味しかったです!」なんて次々に声をかけてくださり、なんだかその1週間、そして1日がすべて絵本の中の話のようだったのです。

元は捨てられるはず命に、多くの人が関心を寄せて、
沢山の笑顔が産まれて。北海道各所で地域のことを考えている若い人たちも刺激を受けました!と声をかけてくださったり、とても小さな足跡だけれど、後々へ何かが紡がれる予感がしました。

その後も大切な出会いを頂いていて、今だからこの仕事で感じていたことをシンプルに言葉にできるのだけれど、それは「命は命を育む」ということ。私たちが勝手に見捨てている、もしくはその命を勝手に見ないことにしていても、それはもう自ずと守ってくれているし、成っていくものなのだなと。

北海道の広大な大地と人に、優しく揺り籠を揺らしていただいたような
そんなお仕事でした(あやかさん、お手伝いしてくださった、そして、ご一緒できましたご縁あるご友人の皆様、農家さん、参加してくださった方々、本当にありがとうございました!!)

オーダーメイド出張料理の詳細・ご依頼はこちらから↓
https://kitchen-nijinohashi.studio.site/1

イベントにご協力いただいた方々
みなさま本当にありがとうございました!
みなさまの日々が健やかでありますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?