240年の時と国を超えるヨハン・シュトラウスⅡ「春の声」
わかる時は突然来る。その瞬間、これまでの「わかる」と思っていたことはなんだったのかというほどに、世界が変わる。それはとてもエネルギッシュな、生命力あふれる瞬間だ。
先日、
私の部屋から見える八重桜が、
前日よりもうんとたくさん咲いた。
カーテンを開けたら、
びっくりするくらい鮮やかなピンク色と、
木々の新緑が飛び込んできた。
窓を開けたら風の音が聴こえた。
甘い香りがして、鳥の声もした。
静けさの中の、春の音と彩りに圧倒され、
圧倒されているのに幸せで、
湧き上がる幸せな気持ちに言わされるように出てきた言葉を、慌てて書き留めた。
「今歌う歌がある。
春の声が聴こえる。
それは平和。
それは幸せ。」
春の声、と書いていて、
「今、必死で練習してる歌のタイトルは「春の声」やん。」
と、気がついた。
おかしな話だけど、
今、「春の声」と書いていたとき、
シュトラウスの「春の声」のことは、全く頭になかったのだ。
ちょっと驚いた。
これだけ毎日歌って、
その事で頭がいっぱいなのに、春の声、と書いてその歌のことを思いつかないなんて。
と思っていたら、
突然、
そうか、
これが、
「春の声」か!
春の声、は、
これを歌っているのか!
と、
閃いた。笑
hi-c(ハイツェー。ピアノで言う真ん中のド、から2オクターブ上のド)を連発させたり、
しかもそれを、
f(強い音)だけではなく、
p(弱い音)で優しく出せ、とか、
それも含む沢山の細かい音の繋がりをレガートでやれとか、
私にとっては、
何をさせるねんと言いたくなるような、
難しい声の技の数々、
それら全ては、
この、
言葉にならない感動を表現するため。
なのだ。
この歌を作った人は、
どうにか、
それを、表現しようとして、
その結果が、アレで。
いや、もちろん、
それはわかっていて、
言葉の意味もそうだから、
それはわかっていたつもりだけど、
その「わかっていた」
とは、
「わかる」レベルが、
全然違っていた、
ということが、
今のこの私の感覚が言っていた。
技を見せるんじゃない。
感動を伝えるためなんだ。
あのパッセージは。
あの高音は。
いやもちろんそれもわかってるつもりだったんだけど、、(永久ループ)
わかる、
ということは、
その「わかりかた」によっては、
さらに広い「分かる」の世界への扉を閉じてしまう危険も常に持っている。
今、私の目の前の春、
がその扉を開けてくれた気がする。
シュトラウスの作った、
「春の声」に、
私の「春の声」が、
240年の時を経て、
国も超えて、
繋がった。
こうして、
技巧的な高音も、
細かい音が転がるような、
パッセージも、
もっともっと、
その役割を果たし、
意味を持つことになるのだ。
今回のコンサートの、
メインである、
「春の声」
八重桜の香りが広がるように、
歌いたい。
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渡辺麻衣(ソプラノ)江口義実(フルート)ジョイント・リサイタル ピアノ:大川知子
2022/4/23(土)
◆アートフォーラムあざみ野レクチャールーム(東急田園都市線あざみ野駅徒歩5分)https://www.women.city.yokohama.jp/a/access/
◆開演14:00 (開場13:30)
◆チケット:大人¥2000 子ども(中学生まで)¥1500 ※未就学児の入場はご遠慮下さい※付き添いが必要な方は付き添い1名様無料させていただきます
◆出演
渡辺麻衣(ソプラノ)江口義実(フルート)
ピアノ:大川知子
◆曲目
春の声(J.シュトラウスⅡ)/さくら横ちょう(中田喜直)/海はふるさと~大海啊故郷~(王立平・やぎりん訳詞)/森の小鳥は憧れを歌う(オペラ「ホフマン物語」より オッフェンバック)/「ペール・ギュント」より 朝・オーセの死・アニトラの踊り・ソルヴェイグの歌/チャルダッシュ(V.モンティ)/ERATH(村松崇継) ほか
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