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第3章、村と居酒屋1ー「本当の強さなんて、服なんか関係ないのにね。」

太文字は、私(主人公)の考えていることです。

作者より

 私は地上に出るとすぐさま刀を出し、そこらじゅうで争ったりうごめいている亡者達を切りつけ始めた。血しぶきが上がり、私の顔や髪、服に赤い模様が広がっていく。
 亡者達といっても人の形をしておらず、醜い心がそのまま体に現れ、イボが全身にあったり、皮膚の色が毒々しい緑色やピンク色だったり、ぬめっとしていたり、爬虫類よりもさらに気味の悪い姿となっている。
 私はそれらをすべて一人残らず切りつけていった。なので、私の通った後には、亡者の死体が転がった血の海が広がっていく。亡者達が逃げようとするのを1人残らず切りつけながら(予想以上に多い…私ひとりだけ遠くからで正解だった。でも、ここでこれだけ多いと第2都市はさらにすごいことになっているはず。早く行かないと…)
 
 亡者達の集団が途切れたので、私は立ち止まって振り返る。私の後ろには、亡者たちの屍が転がった血の海が地の果てまで広がっている。私は肩で息をしながらそれを眺めていると、屍とその血が地の底へと沈み込み地獄へと戻っていく。その地下ではドラゴン達が待ち構えている。
 
 しばらく、それがなくなるのを肩で息をきらせながら眺めていると、風に変化したサファロスが
「さすが…」
と亡者達の屍を見たまま近づいてきた。
 私は横目でサファロスを見ながら
「どうしたの? 第三都市は?」
というと気まずそうに
「実は、フローラとバッカスがいなくなっちゃって…」
「えっ!?…部下たちは?」
「「第二都市に行ったんだ」って、ガイアとリリスが言うもんだから第二都市に行ったんだけど…」
「うん。」
「すごいことになってて、第二都市の人たちを助けないといけないもんだから身動きとれなくて…で、俺が捜してる。」
「すごいって、どんな風に?」
「それは…あんな感じ?」
と、私の目の前のかなり、まだらになった血の海を指差し、
「都市の人たちがパニックになってる。お前の部下達が来たから離れたんだけど…」
(みんな第二都市の人達を避難させるので、いっぱいいっぱいってところか…)「で、バッカスとフローラは見つかった?」
サファロスは肩をすくめ
「まだ、で、お前にも捜して欲しいなって…」
「…わかった、とりあえず、あっち(第二都市)に向かって進むよ。ひょっとしたら第二都市に行ってるかもしれないし…サファロスは、第二都市や第三都市の情報を持ってきてくれる?」
「わかった。」
とサファロスは口元に笑みを浮かべると、さっと一陣の風と共にいなくなった。
 私は第二都市に向かって歩き出しながら、ため息をつく。(バッカス、珍しく素直に人の言うことを聞くと思ったら、あの時すでに行くことを決めていたな。恐らく、酒が無限に出る鏡でも作ったに違いない…フローラは、バッカスと一緒にいると考えていいのかな? マーズちゃんとオフィーリアは「第二都市に行く」って、言ってたけど…)

 しばらく歩いているが、茶色い土の地面が延々と広がっているだけで誰にも会わないし、亡者たちにも会わない。(おそらく、他の亡者たちに『私がここにいる』って連絡がいったのだろう。亡者達には亡者達のネットワークがある。ケンカばかりしているように見えて似たもの同士、仲間を作り、いづれ徒党を組み始める。急がないと…)

 しばらく歩いていると、やがて太陽が西の空へと沈み始め辺りは夕闇が迫ってきている。ようやく遠くの方に民家らしきものがポツポツと見え始めた。やがて窓に灯りがつき、夕飯らしき煙が立ち上る。(この様子だと、まだ亡者達は来ていない…おそらく今、第二都市では、私や他の女神の部下達と亡者達の激しい争いが繰り広げられているのだろう。でも、亡者の数によっては、いつまでもつか…。)

 私は村が見下ろせる小高い丘で立ち止まり、その場に座った。(あまり、村人達に姿を見られないほうが良い。顔の血は持ってきたタオルで拭き取ったけど、着物や髪には血が付いてるし…もし、亡者達が村に入ったら、すぐわかる…。)

「冷たくって、おいしいお水はいかが?」
横から、オフィーリアが声をかけてきた。私は思わず笑顔で見上げ、
「うん、欲しい、ありがとう、第二都市に行ったと思っていたのに…」
オフィーリアとは反対側から、マーズちゃんが
「焚き火、作ろうぜ。」
と言って、持ってきた木切れを小さな山の形に組み菱形の鏡をかざすと、またたくまに火が燃え上がった。オフィーリアは私の横で座り、私がかばんから出した木でできたコップに正方形の鏡から水を注ぎながら
「藍白がね、「先に行って様子を見てくる」って言って、「それから」って言われたんだけど…退屈で来ちゃった。」 
「藍白って…あの眼鏡の子? うちの副隊長と同じ服を着てる…。」
「ええ、そうよ。…あの服を着てたら向こうから逃げていくって、でも本当の強さなんて、服なんて関係ないのにね…はい。」
 私は、差し出された水の入ったコップを受け取り
「うん、ありがとう。マーズちゃんとこも?」
「うん…トカレフが「安全かどうか確認できたら」って、安全じゃないから行くって言ってんのに…待ってたらばあさんになっちまうぜ。」
といって磁器の緋色をしたコップを差し出し、オフィーリアに水を注いでもらう。
「トカレフって、長い黒髪の子?」
「うん…サンキュー。」とマーズちゃんは、コップの水をすする。
「さっき、昼ぐらいかな、サファロスに会ったんだけど、バッカスとフローラがいなくなったって、」

次回
第3章、村と居酒屋2ー「あの子たちを頼むわね。」

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