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【銀河展】俊カフェ

今日の記事は、
銀河展参加の詩人古川奈央さんと、古川さんのお店「俊カフェ」のご紹介です。

こんな展示をしています。



谷川 俊太郎
(たにかわ しゅんたろう)氏という詩人を御存じでしょうか。

では、「PEANUTS」という漫画の「スヌーピー」はどうでしょう。
レオ・レオーニの「スイミー」、マーカス・フィスターの「にじいろのさかな」なんかも。

有名な漫画や絵本の翻訳にも谷川俊太郎氏の名前があります。

「カムチャッカの若者が きりんの夢を見ているとき」から始まる
「朝のリレー」という詩を国語の授業で読んだ記憶がある方も少なくはないのではないでしょうか。

実は私の母校の校歌も、谷川俊太郎氏の作詞で、作曲は息子の谷川賢作氏だったりします。

「俊カフェ」とは札幌にある、その谷川俊太郎氏の関連作品が本棚にぎっしり並ぶ、御本人公認のカフェです。

2018年、6年前の6月、昼休みに営業の疲れをいやすために入ったカフェが「俊カフェ」でした。私は校歌の作詞者で有名な詩人である以外に何も「谷川俊太郎」氏については知らなかったのですが、そんな私でも十分に楽しく、そして癒される場所でした。

十分に詩を楽しめるための空白が用意されたカフェで、母校の校歌の話をしながら過ごしました。

私は当時認知症の両親と障害のある妹の病院や施設を回りながら、自分の仕事や生活をしなければならず、悩んでとても疲弊していました。
本棚にあった「満月の夜、母を施設において(藤川幸之助著)」という本を手にとり、読んだときに止め処なく涙があふれてきました。そして、身の上話をいきなり語ってしまいました。「この本を読んだ人は、自分の身の上話を語り始めてしまう」と書いてありましたが、本当にそうなりました。目を腫らせて昼休みを過ごし、仕事に出かけました。

俊カフェで出会った本

それから気になって、また私はこのカフェに行きました。
店主の古川奈央さんが、「俊太郎さんもお母さまの介護のことを詩にしたためているんですよ」といった趣旨のことを言いながら、本棚からいくつかの本を出してくれました。その詩は、「朝のリレー」や「かっぱかっぱらった」の「かっぱ」などを書いている人と同一人物とは思えない詩で、生々しく切なく嘘がないところに心が抉られました。

 それから、おすすめの本として「ヨレヨレ」という雑誌と「へろへろ」という本を紹介してくれました。「へろへろ(鹿子裕文著)」は私の中でも好きな本TOP3に入る大好きな本になりました。笑って泣ける介護の本です。

ヨレヨレはもうは廃版ですが、へろへろは絶賛発売中!私のおすすめ。

 私は、すっかり「俊カフェ」の常連になりました。店主の古川奈央さんは、言葉を選びゆっくり話す物腰の柔らかい知的な女性なのですが、谷川俊太郎氏の話をするとき、声に静かな(時にあからさまな)熱を帯びるのがわかります。直接ご本人と話し、公認もとるほどで「俊太郎さんに憧れて」なんてものではなくて「俊太郎さんになりたくて」という話をしていた時の顔が本当に好きで、私はここの店主の「古川奈央さん」のファンになりました。

 それからいろんな会話をするようになり、私が中高生の頃小説みたいなものを書くのが好きで、舞台が宇宙で、火星に孤独に引きこもっている預言者の話などを書いていた話をしたときに、「二十億光年の孤独」というとても有名な1952年6月に刊行された詩集の詩のことを教えてくれました。谷川俊太郎氏21歳の頃の第一詩集です。
 
 私が何の話をしても、奈央さんは本棚から「この本ね…」とトピックに近い詩が収録されている詩集を迷いもせずに出してきてくれて、Amazonの「この本に興味がある方はこの本も」の精度を超える正確さで実際の本棚から詩を検索するのが衝撃でした。この本棚から検索できないものはあるのだろうかと思うほどに。益々この穏やかな人の底知れぬ能力に戦慄したのでした。

 「二十億光年の孤独」を前回の銀河展のときに絵にしてみたくて私が描いたものが俊カフェにあります。

二十億光年の孤独の絵。孤独ではないところに。

 古川奈央さんは、詩にまつわる活動、イベント、編集、出版相談など多様な活動をされています。
俊カフェができるまでのエピソードが書かれた「手記 札幌に俊カフェができました(古川奈央著)」は、閲覧できます。

札幌狸小路方面へご用事がある方は、「俊カフェ」で「詩をあじわう」時間を過ごしてみてほしいなと思います。

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