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知ろうとしてくれた ~霊園②お迎え

その日がきてしまった
前日に思い立って慌てて購入した足型セット
午前中に届くはずが11時を過ぎても来ない

やっと届いたのが12時少し前
慌てて家の中を走り回りながら
ハナコの足型を残した

これでこの可愛い肉球ともお別れか
そう思うと愛おしくて抱きしめた

私の知っているハナコと違っている
ヒンヤリした身体
固くなってしまった身体
見た目はハナコなのに
いつものハナコじゃない
… ハナコじゃない


午後2時 時間通りに家の前に黒い車が止まった
黒いスーツの男性が 窓から見ている私に会釈する

ハナちゃん 出かけるよ
一緒にお出かけするよ

ヒナちゃん ハナコと帰ってくるまで
待っててね

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ハナコを持ち上げた
重かった
いつもの倍くらい重かった

ハナコを抱えながら
よろけながら
階段を降りる

途中階段から落ちそうになって
ハナコを守るように階段に腰掛けた

その様子を見ていた男性が
そっと荷物をもってくれる

車までゆっくり歩く私を
急かすことなく 車のドアの前で待っていてくれる

車に乗り、膝の上にハナコを抱えたまま
ゆっくり発進した

私は魂が抜けたかのようにボーっとしていた
何か話しかけてくれているが
耳に聞こえてくるのに意味がよくわからない
そんな感じだった


発進したはずの車は停まっていた
家のすぐ近くで停まっている

 大丈夫ですか
 ご気分が悪ければ、飲み物でも買ってきましょうか

ハッとした

 もしよければ、はなこちゃんのお散歩した道を通りながら
 向かいますけど、どうしますか

少し遠回りしながら、
車でハナコと歩いた
毎日歩いた道や景色を
膝のハナコに話しかけながら、撫でながら
通ってもらった

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着くまでの間
少しづつハナコの話をした
ハナコの得意なこと、好きなもの
ハナコと出かけた思い出
ヒナコと出会った雨の日のこと
病気に気づけず申し訳ないと後悔していること
最期の苦しかったハナコの様子

とぎれとぎれだったと思う
多くない私の言葉から
ハナコを知ろうとしてくれている


到着すると入口に女性スタッフが
頭を深々と下げたまま立っている

案内された部屋に入り
中央に置かれた台にハナコをそっと寝かせる

スタッフの方に用意した遺影をわたし
祭壇の中央に置かれる
コロナの影響で、あちこちにビニールやアクリルで仕切られているけど
いよいよ
そう思うと何故か手が震えてくる

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 はなこちゃんの周りに
 持っていく物など置いてあげてくださいね
 お花も

あ! お花もってくるの忘れた!
どこかに売ってるとこありませんか?

 大丈夫ですよ
 こちらで少しですが、用意してきますね

笑顔でそういって部屋をでていき
戻ってきた時にはトレイに山盛りのお花を持ってきてくれた

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4ヶ月前も前になるのに
一つ一つ思い出しながら
私の心はその時に戻り、息苦しい

家から霊園までの話なのに
当日の自分より、今の方が動揺しているかもしれない

でも到着までの話をこんなに長く書いた理由は
お迎えにきてくれた方の優しさ
私を気遣い、ハナコを大切に大切に扱ってくれた
そして何より
私の足りない言葉から
ハナコを知ろうとしていることを感じた

この後 気づくのだけど
車の中で話したことは
現地で待っていた女性スタッフにも伝わっていて
前からハナコと知り合いだったかのように対応してくれた


こんな風に人に接したいな
そう思えるような対応を受け
これから起こる信じたくないような現実を
ひとつもわだかまりを持つことなく
進めることができたんだと思う


続きはまたにします
私の今の心が限界のようなので…
深呼吸をして、
ハナコのこの日の思い出は
少しづつじゃないとダメみたい


今日も一日ありがとう

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