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Report1_トリニティ・ブラッドRPG「マスカレード」

私たちがトリブラRPGをどのように遊んだのか。そのセッションレポートを紹介します。私がトリブラRPG「ガープス・トリニティ・ブラッド」を遊び始めて3番目に作ったシナリオです。TRPG『Vampire: The Masquerade』に敬意を表して、シナリオ名を「マスカレード」としました。薔薇十字騎士団をPCとして使いたいと考え、PvPの起こり得る対立型シナリオを構想しました。忍術バトルRPG『シノビガミ』が普及してからは珍しくありませんが、2001年当時は対立型シナリオは一般的ではありませんでした。ですが、TRPGサークル内部ではPC同士の意見対立、葛藤が含まれたシナリオを遊ぶこともありました。この記事では、導入ハンドアウト、セッションレポート、そしてシナリオ概要を記載します。なお、このセッションレポートには多少のホラー要素を含みます。苦手な人は読まないでください。

・導入ハンドアウト

プレイヤーに下記のハンドアウトを提示して、選択してもらいました。データはGMが事前に作成済です。
PC1 真人類帝国からの調査官
君は真人類帝国に所属する長生種(吸血鬼)だ。もうじき帝国に重要な使者が訪れることになっていた。その応対に関する計画書が一人の吸血鬼、ザグレブ伯爵エルバーン・クーザー、によって国外へ持ち出された。君の使命はエルバーンを追って、その重要情報を処分することだ。その情報が敵の手に渡れば使者との会談が妨害される可能性が高い。最悪の場合は、重大な外交問題に発展するだろう。なお、今回の任務にあたって人類側のエージェントが協力してくれる。足取り調査の結果、逃亡者はトゥインクル城付近に潜伏している可能性が高いと判明した。
当初の目的:逃亡者の確保および情報の処分。
キャラデータ:長生種。技能や装備の微調整可能。

PC2 教皇庁国務聖省特務分室派遣執行官 or 情報部員 or 民間協力者
君はミラノ卿カテリーナ・スフォルツァ様からの指令を受けて、真人類帝国の調査官に協力することになった。ただし、二人の協力はあくまで現場レベルであり、上層部は公式には関知しない。異端審問局等に知れることのないように注意を要する。
当初の目的:逃亡者の確保および情報の処分。
キャラデータ:記憶喪失の派遣執行官 or 元・騎士団 or その他から選択

PC3 二人組のハンター、聖人の子孫
君は先祖代々クリスマスプレゼント配送業を行う一族の子孫だ。何代か前の先輩から世界平和のために戦う誓いを背負わされた。それは、ある年のクリスマスのこと、とある国である姉弟に出会い、弟の望む「おもちゃの兵隊」はプレゼント出来たが、姉の望む「世界の平和」がプレゼント出来なかったことに由来する。
今回は、田舎の貧村の少年が「お姉さんに会いたい」と望んだことから、その少女(シモーヌ)を探すことになった。調査の結果、彼女はトゥインクル城に奉公していることが判明した。
当初の目的:少年の望む贈り物を届ける。
キャラデータ:聖人の子孫

PC4 二人組のハンター、可変サイボーグ(プレイヤー4人のため選択対象外)
君は元々、クリスマスプレゼント配送業を行う一族に仕えるトナカイだった。事故で大怪我をし、機械の体に脳を移植された。長い年月を過ごすうちに補助電子脳の働きで、知性化され、今ではほとんど人間に近い思考を持つに至っている。人間形態では角はほとんど目立たないサイズに縮小される。
当初の目的:PC3が使命を全うする。
キャラデータ:可変サイボーグ

PC5 騎士団 位階7=4(プレイヤー4人のためPC番号をPC4に繰り上げ)
君は教皇庁と真人類帝国の全面戦争を願う騎士団の一員だ。真人類帝国の平和外交政策に不満を持つ保守派の一人(こちらから見れば協力者)から連絡があり、外交会談が近日開催されることを知った。詳細情報を得るために、トゥインクル城付近で行方をくらました協力者、ザグレブ伯爵エルバーン・クーザーを探しに来た。
当初の目的:協力者のもたらす情報の確保。
キャラデータ:網使い、偶然の賭博師、怪医師から選択。望むなら手下を1人付ける。

・登場人物

PC1:アナスタシア・ウェイリーズ伯爵、外見年齢12歳の令嬢
PC2:“グングニル”トーマス・リーズ、9人目の派遣執行官、印象的な緑髪
 加速能力と愛槍「レネゲイド」を使う。過去の愛称は「エメラルド」
PC3:ウィル・クロス、聖人の子孫、相棒はレッド
 ナノマシン「シンクト・ニコラス」クリスマスモード起動承認
PC4:ワルター・フォン・デュラウンブルト、薔薇十字騎士団
 幻灯術師。アインスとツヴァイスという2人の手下がいる。

NPC
仮面伯爵(Masked Count):表向きの城主。仮面が端末となっており、コンピュータ「ラプラス」と無線接続されている。現在の肉体はザグレブ伯爵。
エルバーン・クーザー:前ザグレブ伯爵エンドレの従兄弟で後任。帝国から情報を奪って逃亡した。城にかりそめの宿を求めたところ、先代の伯爵と入れ替わることになった。情報は脳で記憶し、ディスクは既に処分した。仮面を被ってからはラプラスに操られている。
キャロライン(Caroline):元は電子使いの少女。現在は脳だけがラプラスと直結されて存在している。実体持つ立体映像を投射することが出来る。
エリン・クマイル男爵:真の城主。吸血鬼。500年前にキャロラインと駆け落ちした。最近は月に一回程度しか起きてこない。客を装っている。
執事のピエール:初老の男。使用人たちの指導から、城の雑事全てをこなす。秘密を知る4人目の人物。この4人しか秘密を知らない。
シモーヌ:18歳。ダンの姉。城へ奉公に来ている。
ダン・フロスト:東欧の貧しい村に住む9歳の少年。姉の帰りを願っている。
城の使用人たち:ボリス、フィーア、レイラは元逃亡犯罪者。女性たちは貧困のために奉公してきている。

【序幕:12月23日宵の口】プロローグ

PC1 真人類帝国からの調査官
アナスタシア・ウェイリーズ伯爵、外見はわずか12歳の令嬢である長生種は逃亡者を追っていた。間近に迫った真人類帝国への使者と、その応対に関する計画書が一人の貴族、ザグレブ伯爵エルバーン・クーザー、によって国外へ持ち出されたのだ。その情報が敵の手に渡れば使者との会談が妨害される可能性が高い。最悪の場合は、重大な外交問題に発展するだろう。アナスタシアはエルバーンを追って、その重要情報を処分する任務を帯びて旅立った。教皇庁の優秀な人材の協力を得て調査した結果、逃亡者はトゥインクル城付近に潜伏している可能性が高いと判明した。そして、トゥインクル城の仮面舞踏会にやって来た。

PC2 教皇庁国務聖省特務分室派遣執行官
相変わらず人材不足、それに加えて派遣する使節の準備などで手が足りない状況のミラノ公カテリーナ・スフォルツァ枢機卿のもとへ、新たな「悪い知らせ」が届いた。その案件を処理するために、カテリーナ卿は着任して日の浅い派遣執行官“グングニル”を派遣した。ただし、真人類帝国監察官への協力はあくまで現場レベルであり、上層部は公式には関知しないと言い含めて。そのとき、記憶喪失の“グングニル”にとって過去の記憶と対峙する運命が待ち受けているとは誰も知らなかった。

PC3 二人組のハンター、聖人の子孫
北欧のサンタクロース村、そこは子供の夢と希望を守るために戦う一族の里だ。何代か前の先輩が少女の望む「世界の平和」をプレゼント出来なかったとき以来、世界平和のために戦う誓いを背負っている。そして、また今年もクリスマスの季節がやって来た。今回は、田舎の貧村の少年が「お姉さんに会いたい」と望んだことから、その少女(シモーヌ)を探すことになった。調査の結果、彼女はトゥインクル城に奉公していることが判明した。そしてウィル・クロスはトゥインクル城の仮面舞踏会にやって来た。相棒のレッドを伴って。

PC4 騎士団 
変革を望む者に手助けする団体、その名を薔薇十字騎士団。人によっては「世界の敵」と呼ぶ者もいる。今もまた、平和外交政策を唱える主流派と対立したために帝国を脱した者が、情報提供を引き換えに騎士団への庇護を求めてきた。だが、その者は保護される前に東欧の一地方、トゥインクル城付近で消息を絶った。そこで、騎士団から位階7=4のワルターが彼と、彼の持つ情報を求めて旅立った。ザグレブ伯爵エルバーン・クーザーを探しに。

【第1幕:12月23日宵の口】

年に一度の仮面舞踏会が開催される日、城は常連でない一見さんの客を3組迎えていた。
1組目は夕方早くに到着した。北の国からやってきた二人組だ。頭にツノ状の飾りを付けた赤い鼻の男と、目の辺りのみを仮面で隠した好青年。招待状を持っていないため、入場料として5000ディナール(約60万円)を支払う。まずは執事のピエールが入場者へ挨拶をする。
「ようこそ、この城へ。この城では、あらゆるお客様に満足していただけるよう趣向を用意してあります。みだりに他人の私室に立ち入ったり、御客様同士のトラブルを起こしたり、公共のマナーに反する行為をしない限り、何をなされても自由です。何か御用がありましたら、使用人に申しつけてください」田舎者と見て一言追加する。「使用人へのチップに関しては御客様の任意で。」
ウィルとレッドはいったん部屋に落ち着いたあと、まずは食事と、食堂へ出かける。何の肉かわからないが、肉料理が気に入った様子のレッド。ウィルのほうは料理そっちのけでメイドの方ばかりを気にしていた。といっても口説こうとしていたのではない。人を探していた。メイドのジュリアから情報収集した。左耳に赤いピアスを付けているのがポイントだ。いっぽうで、レッドはコスプレ(に見える)ツノが受けて人気者になっていた。ずらりと並んだ料理を前に、野菜しか食べないウィルは奇異な目で見られていた。

日が没した直後、ワルター・フォン・デュラウンブルトが城に到着した。上半分の道化師の仮面を付けて。チェロケースを抱え、ゴリラの面を被った巨漢の従者を伴っていた。執事から一通りの説明をうけた後、客室に落ち着く。2階の最も城主居室に近い客室を選択した。階下に降りてきて、娯楽室に入った。ここでは4人の客がポーカーテーブルを囲んでいた。ちょうど良いタイミングで、そのうちの1人、イガミ伯爵が抜けたため、ワルターが卓に加わった。トレーズ、マーティー、タートと卓を囲みながら世間話をするが、目的の人物に関する情報は得られなかった。

日は没した。貴族の時間が始まる。古風な馬車で名家の令嬢という雰囲気の人物がやって来る。名は、アナスタシア・ウェイリーズ伯爵。馬車の御者台にはトーマス・リーズ。招かれし者、招かれざれし者、集い来て、宴の支度が整った。

主人の挨拶があるというので、客達はダンスホールに集まってきた。現れた仮面伯爵は、その名に違わず頭部をすっぽりと覆うフルフェイスの仮面を付けていた。形式的なあいさつをして、客達を歓待する。PCたちは、客達と世間話を交わしながら情報を収集し、常連がいることや客の名前などを知った。一方で、トーマスは客の一人であるエリン男爵とキャロラインにどこかであったような感じを受ける。
ウィルは目的の女性、シモーヌを見つけて、後で部屋に来るように約束をした。彼女も左耳に赤いピアスを付けていた。彼女だけではない、女性の使用人は皆ピアスをしていた。
宴もたけなわの頃、仮面伯爵は客達に挨拶をして退出した。そのとき、ハッとした二人。アナスタシアとワルターは仮面伯爵の声がエルバーンと一致することに気付いた。最初に挨拶したときには気付かなかったが。

【第2幕:12月23日夜中】

宴は散会し、個々人の部屋に戻る。アナスタシアたちは食事の機会を逸していたため、メイドに持ってこさせることにする。どのような注文にも応じるというので、アナスタシアは「新鮮な飲み物」を頼んでみた。準備可能と確認できると、慌ててキャンセルする。本気で喉から直接摂取するつもりではなかったようだ。レアのステーキを食べながら二人で作戦会議をしていた。

ワルターはさっそく、仮面伯爵の部屋を訪問していた。帝国貴族エルバーン・クーザーとしての意識がなくなっているため話は難航したが、明晩にデータをもらう約束を取り付けた。

ウィルの部屋にシモーヌが訪れていた。シモーヌの予想に反して、ウィルは彼女の弟ダンが会いたがっていることを話した。だが、使用人は城から出れないことなどを話す。貧しさゆえに村から出てきた彼女たちに帰る場所などなかったのだ。いわば、この城が彼女たちの居場所だ。

そのころ、トーマスはエリン男爵の部屋を訪れていた。キャロラインは留守のようす。エリン男爵はエメラルド、と旧友の愛称を言いかけた。トーマスと同じような印象的な緑髪の人物だったらしい。気をとりなおしてトーマスの近況を尋ねた。トーマスはまたもや妙な印象を受ける。何かを知っているような。

男爵の部屋を退出してから、トーマスとアナスタシアは仮面伯爵の部屋を訪れた。既に正体を看破したと思ったため、実力行使に出た。まるで彼女らの行動を予測しているかのように仮面伯爵は攻撃をかわした。そして、緊急事態に隣室に居る使用人ボリスとフィーアを呼ぶ。使用人2人をトーマスが相手にし、アナスタシアは加速して一気に仮面伯爵に肉薄した。加速しての攻撃が命中し、伯爵は窮地にたった。騒ぎを聞きつけて、ワルターとツヴァイスが、ウィルとレッドが駆けつけてきた。部屋の近いエリン男爵も心配そうに様子を見にきた。
ワルターは状況に驚いた(フリをしている)。ツヴァイスがボリスに向かっていく。一見すると錯乱したようだが、高度な状況判断のうえでのワルターの指示だった。ウィルは子供(に見える)アナスタシアの保護を最優先事項と判断し、レッドに指示した。加勢を得て、トーマスはフィーアへの攻撃に専念した。自在槍レネゲイドが腹部を貫き、気絶させた。
同じ頃に突然、伯爵が3人に増えた(この事態を正確に把握しているのはワルターだけだった。“幻術師”の魔技であるゆえに)。アナスタシアたちが混乱した隙に伯爵は奥の寝室へと逃亡した。追うには短いくらい、しばしの間をおいて城全体がゴゴゴゴと大きく揺れ動き始めた。(仮面伯爵が仮面から城の制御システムに指示を送り、地下退避機能を作動させた。そして、クローゼット裏の隠し扉から地下室へ逃れた)
城全体が動いたときの振動で、廊下に置いてあったチェロケースが1階の玄関ホールへと落下していった。落ちた瞬間にバンと開いて中から紙吹雪が舞った。(またもや“幻術師”の技である。その隙にアインスは影に隠れた)。ワルターの他は、そのチェロケースに如何なる意味があるのか気づいてなかった。

【第3幕:12月23日夜中、地下の秘密】

簡単に手当をすませ、アナスタシア、トーマス、ウィル、レッドの4人は寝室を探索して、クローゼットの裏に隠し扉を見つけた。そこから城の秘密領域へと侵入する。一方、ワルターは使用人室でボリスから事情を聞く。ボリスは仮面伯爵の秘密については何も知らなかった。「ピエール様に聞け」と言う。用済みとなった2人の口を封じて、ワルターは一階の執事室へ向かうが、留守だった。残されていた血の跡らしきものを追っていくと、地下のワイン貯蔵庫の奥にある隠し部屋にたどりついた。隠し部屋に、寝台ほどの大きさの機械装置「カンビュセス」を操作するピエール執事がいた。機械のことは詮索せずに、仮面伯爵を襲った暴漢のことを手短に報告する。「自分は伯爵の味方です」と付け加えて。「伯爵の味方」という言葉を信じたのか、ピエールはワルターを奥の通路へと誘った。部屋の隅に転がっていたアインスの生首を放ったまま、ワルターはさらなる城の深部へと付いていく。

アナスタシアたちは隠し通路から、中二階構造になっている機械工作室にたどりつく。そこには見慣れない工作機械が並んでいた。機械を調べずにさらに進む。

ワルターはピエールに導かれてコンピューター操作室へとやって来た。そこにはモニターが並んでいた。ローマなど主要都市を上空から見た夜景(リアルタイム映像)や、城の各部を映していた。それは監視システム。大災厄以前の技術によって作られた監視衛星からの情報を受信する設備だった。この城はもともと大災厄のときに避難所(シェルター)として造られた施設であり、地上の様子が分かるように観測衛星と通信できたのだった。それが城の地下室に残されていた。
そして、片隅の一つのモニター(受信設備とは別のシステム)には何かの命題を解析中というメッセージが表示されていた。

ワルターが説明を聞き終えた頃に、アナスタシアたちがその部屋に到着した。まるで状況説明するかのようにキャロラインの立体映像が現れ、トーマスに過去のことを話す。かつて、長生種と人間とが激しく闘争していた暗黒時代に、エリン男爵、キャロライン、トーマスの3人は長生種と人間との共存を望んだゆえにどちらの側にも居ることはできず、平和な土地を求めて辺境へと逃れた。そんなときに見つけたのが避難所トゥインクル城だった。電子使いキャロラインが中心となって城の設備を復旧させていた。あるとき事故が起こった。電子使いキャロラインの肉体は回復不可能なほど損傷し、頭脳のみをコンピュータに接続した。エリンは体内バチルスの活動に異常が発生し、長期間の眠りを必要とする呪いを受け、年間数日しか活動できなくなった。そしてトーマスは行方不明になった(このとき、時空の狭間に落ちて約500年の時を越えた)。
旧友との思わぬ再会に揺れるトーマス。事情はどうであれ、アナスタシアの望みはエルバーンの持ち出したデータを破壊すること。それを阻止しようとするワルター、ピエールたちと対峙しにらみ合いが続く。
膠着状態を破ったのは少女の悲鳴だった。声のした場所へ駆けつけると、シモーヌが食肉加工装置「カンビュセス」の前で恐怖に震えていた。メイドの一人、ジュリアの生首を見つけて。膠着は破れた。ウィル・クロスはシモーヌを部屋で落ち着かせてからアナスタシアに加勢する。トーマスは、この城が存続するよりも滅することを選ぶ。

破壊側:アナスタシア、“グングニル”トーマス、ウィル・クロス、レッド(PCたち3人+相棒)
防御側:仮面伯爵、エリン男爵、執事ピエール、“幻術師”ワルター、ツヴァイス(PC4とその従者、NPCたち)

アナスタシアやウィル・クロスの活躍によって、城は崩壊しつつあった。崩れゆく城の中で、トーマスとワルターが対決する。激しい戦いの末に、トーマスの銀槍が閃いて決着がつく。薄れゆく意識のなか、ワルターは速水奨に似た声の男が「詰めが甘い」と呟くのを聞いた気がした。この戦いの後、トーマスは派遣執行官を辞職したとも言われる。東欧の古城の記録は教皇領の正規の記録には残されていない。

☆真相(シナリオ)

 避難所として作られた城。そこには「ラプラスの魔」と呼ばれる観測衛星にリンクした装置があった。数百年前、恋に落ちた吸血鬼と人間(異能者)が逃亡してきて、ここを発見した。しかし何らかのトラブルがあった。
現在のシェルターは、年に一度のパーティーが開催されるほかは客を受け入れない。ただし、逃亡者や行き場のない者は受け入れる。館の住人となって維持管理させるために。
ラプラスの魔は、最後に与えられた一つの問いを解くために解析継続中。「吸血鬼と人間の戦いはいつ終わるのか。どちらが勝利するのか。条件入力=勝利条件は吸血鬼の全滅、あるいは、人類領土の80%以上ロスト」これを解くために観測衛星がデータ収集して解析中なのだが、変数が多すぎてカオス理論が適用される。すなわち回答不能なはず。不可能を可能にするためにメモリを増設し、性能アップを試みている。性能アップの方法は生体部品との連結、いわゆる脳コンピューター。パーティーに参加した者の一部は二度と帰ることなく、部品となっていく。
数百年前の二人のうち、一人は電子使い(リート)で脳の中核をなす。アストラルプロジェクションにより映像として登場。一人は吸血鬼、長期的眠りを繰り返している。世話をしているのは仮面に捕らえられた者。代替わりしている。

☆トゥインクル城内部で聞く情報
まずは執事が入場者へ挨拶をする。
「ようこそ、この城へ。パーティーの入場料は5000ディナール(約60万円)です。この城では、みだりに他人の私室に立ち入ったり、御客様同士のトラブルを起こしたり、公共のマナーに反する行為をしない限り、何をなされても自由です。何か御用がありましたら、使用人に申しつけてください。使用人へのチップに関しては御客様の任意で。」
・客室はすべて二人部屋。バス付き。
・女性の使用人は左耳に赤いピアスをしている。
・男性の使用人は左手に青いブレスレットを付けている。
・使用人に渡すチップは個人収入になる。
・時々、使用人がいなくなってしまう。客と駆け落ちしたのか、逃亡したのか。
 執事は知った顔をして「放っておけ」という。
・ときどき、誰かに見られている気がする。(知力判定に成功すると)
・使用人たちは、普段はブドウや野菜の栽培などをしている。

☆トゥインクル城の真実(城主、仮面伯爵、執事しか知らない)
・かつてはシェルターだった。秘密のスイッチにより地下に収納される。
 スイッチはモニター室と尖塔地下にある。仮面による遠隔指示も可能。
・尖塔の天辺に監視衛星からの電波を受信するアンテナがある。
・尖塔の地下深くにコンピュータ「ラプラス」がある。
・数百年前に、エリン男爵がここを発見して避難所として使用し始めた。
・「ラプラス」に直結した脳の生命維持のために人間の血液が必要。1年ごとに交換。
・1年に一回は使用人の一人を犠牲にする。表向きは逃亡したことになる。
・処刑役は執事。
・仮面伯爵の肉体が滅ぶと、新たな者が肉体となる。
・仮面を被った者の頭脳内情報は全てラプラスにコピーされる。代わりに膨大な情報が流れ込むため、ほとんどの者は自我を喪失する。
・ここは行き場のない逃亡者や貧困に困った者から売られた少女たちが集まっている場所で、彼らには他に行き場はない。
・パーティーではありとあらゆる行為が黙認されている。客同士のトラブルを起こさなければ追い出されることはない。

(シナリオ)物語の展開、結末パターン
その1 PC1の勝利
 エルバーンの正体を突き止めて始末する。ラプラスも破壊。
その2 PC3の勝利
 シモーヌを強引に連れ出す。一時的幸せを得ることができるが、貧困へ。
その3 PC5の勝利
 エルバーンの持つ情報をラプラスより引き出す。
その4 ラプラスを入手して利用する。仮面伯爵となれば利用権を得られるが、拘束される。
*ラプラスが破壊されると城の維持も出来なくなる。

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Twinkle城(トゥインクル城)の見取り図

GMコメント

対立型シナリオを構想するにあたって考えたのは、ミステリ用語「館モノ」でした。閉鎖された環境で、限定された登場人物でストーリーを進めていく。『トリニティ・ブラッド』らしさを考え、「R.A.M. フロム・ジ・エンパイア」を参考に帝国エージェントと派遣執行官の共闘と騎士団との対立。第三者的立場として独自設定の遺失技術「ナノマシン・シンクト・ニコラス」を盛り込みました。一方で、NPC側の中心人物、長生種の”ロミオとジュリエット”は映画『バンパイアハンターD』(「D-妖殺行」)を参考にしています。逃亡した恋人たちは幸せになれるのだろうか。その他にさまざまな漫画や小説からSFガジェットを借りています(『超人ロック エネセスの仮面』『カンビュセスの籤』『ラプラスの魔』など)。実際のセッションでは、派遣執行官と騎士団のプレイヤーが2人ともトリブラのファンであり、TRPG熟練者であったため、まるで本当の外伝エピソードを目の前で演じてもらっているようでした。普通のシナリオではNPCに相当する役割を見事に立ち回っていただきました。GMの準備した舞台装置に対して、プレイヤーの相乗効果でここまで盛り上がるのか、TRPGの無限の可能性を見た気がします。

TRPG『Vampire: The Masquerade』は特別な思い入れのあったTRPGであり、シナリオ名に使用しました。吸血鬼の超人性と苦悩をロールプレイする前例のあまり無いTRPGは未訳の時点からサークル内でも一定のファンがいました。評判に期待しながらも機会がなかなかなく、ようやく遊ぶ機会を得たのは、1995年7月22日。集合場所で卓分けした後、GM氏の下宿へ移動しました。GM氏が京劇風をイメージし、宗の開封を舞台した「東京(トウケイ)血風録」で李伯来という元英国人をプレイしました。大学院生でTRPGサークルの新入会員となったGM氏は「TRPGブランクある」と言いながら、円滑にマスタリングされました。中盤で「休憩しよう。ケーキを用意してある」と嬉しそうな笑顔で紅茶とケーキを出されました。TRPGと直接関係ありませんが、とても驚きました。こういうおもてなしも有りか、と感心しました。長いTRPG経験でも稀な体験です。その後は機会に恵まれず、そのときのGM氏とセッション同卓したのは後に1回限り。TRPG『Vampire: The Masquerade』も機会を得られず、手で数えられるくらいしか遊んでいません。TRPGセッション「一期一会」とは、こういうことなのでしょう。