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20XX年のゴッチャ その36

 ソウル市瑞草区
 本文割愛し先を急ぐ
 
 養鶏場
 本文割愛し先を急ぐ
 
 臨時部長会
 
 
「戸山班は当分、丹東に残すしかないとして、問題は北朝鮮取材ね。中国政府かWHOが取材ツアーをオーガナイズしてくれると良いのだけれど…」
 
 北京発羽田行最終便に搭乗した菜々子は、窓の外から見える東京の夜景を見詰めながら
今後の取材を如何に進めるか思い悩んでいた。
 
 東京の透き通った冬の夜景は実に美しい。奇抜なデザインのメトロポリタン放送本社ビルなど余計なものがはっきり見えないのも良かった。見えていたらきっと憂鬱な気分になっていただろう。
 
 今回の封じ込め作戦を中国政府は世界にアピールしたい筈だ。始めの内は中国の国営メディアだけが取材を許されているが、作戦が順調に進めば、いずれ外国メディアも招待される可能性がある。菜々子はそう考えていた。
 
 勿論、中国主導の広報戦略に北朝鮮政府が全て賛同するとは限らない。むしろ自分達が先に外国メディアを招待することも考えられる。しかし、封じ込め作戦が完了してADE株消滅宣言が出る前に、安全を北朝鮮政府だけに委ねるような取材ツアーには不安がある。これには本社、特に産業医が強硬に反対するだろう。そうかと言って、手を拱いて日本の同業他社に先を越されると絶対に文句を言われる。
 
 ADE株出現という事の重大性に比べれば、菜々子のこんな悩みはちっぽけでどうでも良い事だったが、取材で他社に先を越されるのは嫌だった。
 
 その日、月曜のメトロポリタン放送報道局の定例部長会は持ち回りで開催され、翌火曜に臨時部長会が開催される手筈になっていた。
 
 菜々子はその月曜の夜に金正恩総書記の帰国を確認してから自分も帰国した。空港で受けた任意の抗原検査の結果は陰性だった。
 
 翌、臨時部長会当日の朝、菜々子はシャワーを浴びながら、改めて、事態の今後の展開と取材対応を考えていた。局長からは色々突つかれる筈だ。
 
 正哲のコンサート行き情報も忘れた訳ではなかった。今のところあの情報は外れと出ているが、底まで見えた訳ではない。まだ浚う必要がある。やはり、ルークと桃子に相談しよう。そう決めて、菜々子は浴室を出ると身支度を始めた。太田博一と会えるのは、どんなに早くとも週末になる。それが少し残念だった。
 
 出社するとまず菜々子を待ち構えていたのは決裁書類の山だった。面倒だったが、処理し始めると珍しいことに間もなく加藤昌樹報道局長が近寄って来た。手ぐすねを引いて待っていたようだ。
 
「あ、おはようございます」
「おはよう。ご苦労さん」
 加藤が声を潜めて応じた。
 
「あの件はどんな感じだい?」
 相変わらずせっかちで単刀直入だ。
 
「一応、訊いてくれると…」
「感触は?」
「今はまだ…それどころではないでしょうし」
「それはそうだな。訊いて貰えるだけで一歩前進か」
「そうだと思います」
「分かった。コロナの見通しは会議で」
 そう言い終えると加藤はそそくさと立ち去った。
 
 どっちが重要なのですか?と訊いたら、勿論コロナさと応えるに決まっているが、本心はどうだか怪しかった。そんなタイプでなければ出世できないのが残念でならなかった。
 
 菜々子は特派員達の伝票処理を続けた。日本以外の先進国は物価高で何でも高く付くとは言え、支局の取材経費は慎ましやかなものだった。全盛期の金満テレビ局の金遣いをするような社員はもう居ないのだ。
 
 臨時部長会は十時に始まった。定例部長会は前日に済んでいるので出席したのは取材部門と編集部門の部長達だけで、全体の三分の二程だった。ただ、情報番組制作局の業務部長の他に編成部のデスクまでが居るのが異例だった。
 
「それでは臨時部長会を始めます。まず、加藤局長、お願いします」
 
 業務部長が開会を宣言し、加藤に発言を促した。
 
「皆さんお疲れ様です。宮澤部長は北京取材、ご苦労様でした。
さて、今日臨時に集まって貰ったのは他でもない、ADE株出現に関して、今後の見通しを各取材部長に披露してもらう為ですが、その前に、まず、取材・編集方針について、申し上げたい。
 言うまでもないことですが、現在は世界にとって一大事とも言える状況です。皆さんには総力を挙げて、関連情報を逐一報道してもらいたいと思います。海外取材だけではなく、国内取材、専門家取材、医療業界取材など総力挙げて進めて頂き、素早く、そして、丁寧に放送に繋げていただきたい。よろしくお願いします。それでは次に坂口編集長から報道方針について具体的に説明をお願いしたいと思います」
 
 坂口淳編集長が発言する。
 
「局長からお話がありましたように現状は重大な局面にあります。前より酷いパンデミックに襲われる恐れがある訳で、国民の関心も極めて高いとしか言いようがありません。我々としては、事態の進捗に応じて随時カット・インなり特番なりを放送するのが責務と考えております。編成部にも、この点は御理解頂いていると思っています」
 
 ここで少し説明すると、カット・インとは通常の番組を途中でカットしてでも緊急報道番組を入れ込みニュースを伝えることで、特番とは、そのようにカット・インして始める報道特別番組や通常の放送プログラムを切りの良いところで変更し放送を始める報道番組の事を指す。
 
 いずれもスポンサーとCMが決まっている通常番組の放送を取り止め報道番組に差し替えることになる為、時間帯と内容にもよるが、民放では編成部や営業部門は嫌がることが珍しくない。CMの売り上げ減に直結するからだ。
 
 因みに編成部とは、どんな番組を制作し、それをいつ放送するかなどを決めるテレビ局の司令塔とも言える部署で、局によるが、番組制作予算も事実上統括する場合が多い。
 
 公共放送とは異なり、民放はCMの売り上げで飯を食っていく民間企業なので、金にならない報道特番、特にカット・イン特番を嫌がるのは自然と言えば自然である。しかし、民放といえども報道機関である。その責務を果たすことが期待されるからこそ、国民の共有財産である限られた電波帯を独占的に利用する免許が与えられている。
 
 どんな状況・事案なら報道特番を放送すべきか、それをいつまで続けるべきか、それはそれで議論が尽きないのだが、必要に応じて報道特番を放送するのは地上波テレビ局の使命であった。例えば大震災の発生時に報道特別番組を放送する意思も能力もないテレビ局に地上波の免許は要らないのだ。
 
 坂口編集長は続けた。
 
「皆さん、そのつもりで全力を挙げて取材と出稿に取り組んでいただきたいと思います。
 また、早め早めの情報共有の徹底をお願い致します。いつ、どんなタイミングでカット・インなり特番なりを放送するのが適切か、また、専門家の仕込みやネタの展開、サイド企画を皆で考える為には、早めに情報を、特に予定や見通しに関する情報を上げていただくのが大事です。情報はたとえどんなに仔細な物でも、抱え込むのではなく、共有するようにお願い致します。
 この点に関して具体的に申し上げますと、差し当たり、現地取材の可能性や封じ込め作戦の成否に関わる見通し、日本政府や各国政府の今後の動きの見通し等について、編集会議で各部のデスクに披露してもらっていますが、もう少し長い目で見た中長期的なものを部長の皆さまにお話しいただければと思っています。宜しくお願いします」
 
 普段は吸い上げるばかりで一番出し惜しみをするのは自分達、編集サイドではないか、いけしゃあしゃあと良く言うわと、取材部門の部長達は其々思ったが、そこは大人である。噛みつく者はいなかった。ADE株の出現で内輪揉めをしている暇など無いのも分かっていた。
 
 実際に、ネタの囲い込みが大好きなのは編集サイドの各番組担当者であった。皆、視聴者の関心の高いネタで放送枠を埋めるのに必死なのである。そして、誰もが自分の企画は自分の番組で初出ししたいのだ。それに、時には取材部の意に染まぬネタを放送することもある。そんな時こそ、うるさ型の多い取材部に口出しされ邪魔されるのが嫌なのだった。
 
「それでは宮澤国際取材部長から、今後の見通しをお願いします」
 
 司会の業務部長が指名した。
 
 菜々子が口を開く。
 
「これまでの流れについては既に皆さんご存知と思いますので割愛いたします。まず、北朝鮮で出現した変異株がADE株か否かです。
 正式にはWHOの調査結果を待つしかないのでしょうが、多分、そうなんだろうと想定して取材をしていくつもりです。
 中国政府の調査はかなり進んでいる可能性が高いので、WHOにきちんと協力し、ウイルスそのものや関連情報を彼らが共有すれば、断定までそんなに時間は掛からないのだろうと推測しています」
 
 ここで加藤が割って入った。口調は不快感を隠さない。
 
「国際取材部として、北朝鮮で変異株の出現の可能性を把握したのはいつ頃だ?」
「それは、正確に何日だったか覚えていませんが、聯合通信社が未確認情報を報じてからです」
 
「では、ADE株の恐れは?」
「中朝首脳会談が終わってからです。いずれも我々はすぐに報道しました」
 菜々子は顔色を少しも変えず応えた。
 
 加藤は、菜々子がもっと早くにこの事態になる恐れを把握していたからこそ、自ら北京に出向いたのではないかと疑っている。その疑念は正しいのだが、菜々子も今更そう認めるわけにはいかない。
 
「疑いはこれっぽっちも無かったということか?」
 加藤は追い打ちを掛ける。今後の為にも菜々子を少し吊し上げたいのだった。
 
「ADEという現象を起こすウイルスがこの世に存在することは知っていました。例えば、デングウイルスがそうだということは専門家に訊けばすぐ分かることですから…。そして…、コロナでそれが起きたら非常に怖いというのも一部の専門家はずっと危惧していました。でも…、新型コロナに関しては、もう既に人々は十分苦しんでいます。そこにオオカミ少年のようなことを言うのは適切ではないと思っていました。たとえ、そうなったとしてももっと情報が明らかになってから言うべきことだと考えていました」
 
 菜々子は言葉を慎重に選びながら反撃する。
 
「報道するかどうかは別問題だ。それは最終的には私が判断する。耳打ちぐらいはできた筈だ」
 怒声こそ挙げなかったが、加藤の声には明らかに怒りが籠っていた。
 
「…」
 耳打ちくらいしてもらえるように普段からもう少し勉強したらどうですか?とは菜々子も言わなかった。しかし、あんたは信用できない…と言っているに等しい。それが加藤には気に入らないのだ。だから、周りに示しを付ける為にも菜々子を搾り上げるのだ。
 
 ルーク以来の歴代国際取材部長は皆似たり寄ったりだと、さんざ煮え湯を飲まされた思いを持つ加藤は一層腹を立てていたが、これ以上は追い込まない。やればヒステリーを起こしたと揶揄されるだけなのは加藤も分かっていた。
 
「封じ込め作戦の見通しは?」
 
 話を先に進めたいと考えたのであろう坂口編集長が割って入り、菜々子に尋ねた。坂口は結構腹が座っている。ヒラメではないのだ。自らの感情を抑え付けた加藤も頷いた。
 
 ここからは菜々子も出し惜しみはしない。披露するのは情報そのものではなく情勢の分析に過ぎないからでもある。
 
「予断は出来ませんが、中国政府は確信を持っているようです。そうでなければ、今回のように現地に全面介入し、北朝鮮国内で封じ込め作業に乗り出すのではなく、例えばですが、北朝鮮そのものの封じ込めを画策したかもしれません。しかし、中国政府は現地介入を選択しました。確信が無ければ違ったと思います。アメリカなど各国もWHOも全面協力の構えです。ということは、つまり成算もあるのだと思われます」
 
「なるほど…」
 
 加藤が相槌を打った。少しは機嫌を直し始めたらしい。
 
「思い起こせば、イギリス由来のアルファ株、インド由来のデルタ株、南アで最初に発見されたオミクロン株は、いずれも気付いた時には既に各国に広がっていました。封じ込めにはもう手遅れだったのですが、幸いに北朝鮮は事実上の鎖国をずっと続けています。北朝鮮からは、そもそも人が自由に外国に出ることは出来ませんし、国内でも移動は簡単ではありません。
 コロナに関して言えば、北朝鮮は陸のガラパゴス状態にあると言えます。これが、まだ、ADE株が北朝鮮の外には出ていないと期待できる所以です」
 
「陸のガラパゴスか。確かにね…」
 坂口編集長が感心したように声を上げた。
 
「また、ADE株の感染力自体はそんなに高くないのかもしれません。勿論、ワクチン接種済みで既に抗体を持っている人にはとんでもない脅威になるだろうと思われますが、北朝鮮の人口の大部分はワクチンを接種していません。そうした一般の人々の間で、感染爆発を起こしているという気配は、現時点ではありません。 
 また、北朝鮮では都市封鎖も続けられていますし、人々は配給を待ってじっと大人しく暮らすのにも慣れています。ですから、北朝鮮国内でも、ADE株はそんなに広がっていない可能性があります。
 治療薬が効かない理由もありません。勿論、推測の域を出ませんが、封じ込め作戦が成功する可能性は十分にあると考えられる理由です」
 
 ここまで言えば、加藤もラスボスや社長ら彼自身の上司達に見通しをしっかり説明できる。菜々子から加藤に対する十分な土産話になるのだ。きっと、この後、報告に呼ばれているのだろうと菜々子は思っていた。
 
 加藤の機嫌は見る間に良くなった。菜々子の説明に満足したようだ。それだけ、最高幹部達への説明を気にしているということだ。
 
「わかった。WHOの動きは?」
 加藤が尋ねた。
「調査団の規模や本隊の現地入りのタイミングはまだ不明ですが、きっと中国政府が全面的にバックアップするでしょう。そうでなければ招聘した意味がありません。調査結果は思いの外早いかもしれません」
 
「現地取材の見通しは?」
 坂口編集長が問いかけた。
「一応、北朝鮮大使館に問い掛けはしていますが、まだ反応はありません。中国政府やCCTVにも尋ねています。現地映像は、暫くの間、中国と北朝鮮の国営放送に頼ることになりますので、デスクが常にモニターしています」
 
 一息入れると菜々子は続けた。
 
「ただし、ここで考慮しなければならないのは、仮に、北朝鮮から取材許可が下りたとしても、それがどんな状況下で出たのか、よくよく吟味する必要があるという点です。
 例えば、あくまでも仮にですが、封じ込めが完了する前に、ほぼ百パーセント自力で取材するならヴィザを出すと言われても、どんな状況でどんな態勢なら安心して取材できるのか、慎重に検討する必要があると思います。
 本当に万が一になるのでしょうが、ADE株に感染した日本人第一号が我が社のスタッフになってしまうのは非常に拙いと思います。そうなってしまった場合、どこでどうやって治療してもらえるのかもまだ分かりません。北朝鮮で隔離治療を受けるのは誰もが避けたいと思うはずです。本当に慎重に検討するべきことと思います」
 
「おう、それはその通りだ。必ず、事前に相談してくれ給え。現地取材はあくまでも慎重に検討しよう」
加藤が応じた。
 
 新型コロナ以前の事だが、新型インフルエンザの日本国内初の感染者が確認された時の大騒ぎ、誹謗中傷の嵐を思い起こせば、ADE株感染者日本人第一号を自社のスタッフから出すのは何としても避けなければならない。加藤もそう決意したようだ。勿論、そんな状況は菜々子も望まない。菜々子としては番組編集サイドが独断で現地取材をしようと画策するのに釘を刺す必要もあった。
 
 こうした面では坂口が一番危ないのだ。何でも無邪気に突っ込むタイプだからだ。部下には功名心が先走るスタッフも多い。大トラブルの後始末だけお鉢が回ってくるのは困るのだ。
 
「ところで戸山班はどうするつもりだ?」
 最後に加藤が思い出したように尋ねた。
「ホテルの外には出られない。戻るにも二週間の隔離になるのだろう?」
「その通りです。暫くは丹東で頑張ってもらうしかありません」
「それはそうだろうが、何か手立てはないのか?」
「今のホテルに居る限り、国境の橋の往来は部屋からチェックできます。情報収集はネットと電話でやるしかありません。辛いかもしれませんが、スムースな撤収が可能になるまで辛抱です」
「撤収のタイミングも状況を見た上でだが、早めに決めて欲しい。相談を宜しく」
「わかりました」
 菜々子は素直に応じた。
 
 外出禁止令下の丹東に戸山班を余り長く置いておくことは出来ない。そうかと言って、代わりを送り出すことも当分出来ない。当人達はかなり辛い思いをするだろう。
 
 遼寧省と吉林省の外出禁止令までは菜々子も岩岡も予想していなかった。そこまで考えが及ばなかったのだ。悩ましいのは皆同じだった。
 
「では、日本政府の動きは?」
 坂口が議論を進行させると政治部長が説明を始めた。
 
 水に落ちることなく、菜々子の出番は終わった。
 
 臨時部長会終了後、菜々子が当番デスクに最新情報を確認し終え、自席に戻ろうとすると、ニュース制作部長の雨宮富士子がすっと寄って来て一言「大変だったわね。でも、上手く切り抜けたわよね」と囁くと直ぐに立ち去った。菜々子に対しては何か言わねば気が済まぬようだ。
 
 中国国営の新華社通信は、封じ込め作戦初日に、中国側から陸路で五万人以上の人員とおよそ一万五千台の車両が北朝鮮に入ったと伝えていた。北朝鮮のプライドを気遣ったのか支援物資の量には言及していないが、国境越えの道路の通行キャパを勘案すれば、中国の大行軍は二十四時間、間断なく続いたはずだ。
 
 丹東の戸山からの報告では、今朝もトラックの列は延々と続いていた。鉄道輸送も同様だった。
 
 日本のテレビ各社の昼ニュースは、こうした情報と前日のCCTV報道を元に、封じ込め作業の滑り出しは順調と伝えていた。
 
 メトロポリタン放送の昼ニュースの時点で北朝鮮側の報道はまだ無かったが、その直後、日本時間と同じ現地時間正午のニュースで、国営・朝鮮中央放送が、平壌市内でも封じ込め活動が始まったことを伝えた。
 
 市内の何処なのか明らかにされなかったが、街中の広場で、新義州市と同じように、この日朝から、検査が整然と行われる様子を捉えた映像が報じられた。当然行われているはずの食料配布の模様を映した映像は含まれていなかった。
 
 また、平壌中心部の金日成広場の映像も無い。支援の規模から考えると金日成広場にもテント村が作られていても不思議ではなかったが、金日成広場は、中国で言えば天安門広場、日本で言えば、性格は全く異なるが皇居前広場に当たる象徴的な場所だ。やはりプライドの問題があるのだろうと推測された。
 
 しかし、アメリカのスパイ衛星は、金日成広場にも大規模なテント村が設営されつつあるのを確認していた。ただし、こちらには北朝鮮軍の物と思われるテント群もある。軍同士の連携も粛々と進んでいる様子が窺えた。中国による全面介入と封じ込め作戦が順調に推移していることをアメリカ政府も確認していた。
 
 朝鮮中央放送の正午のニュースの二時間後、北京時間の正午には、中国のCCTVが平壌での封じ込め作戦始動の模様を伝えた。市内の違う場所の映像だったが、内容的には代わり映えはしなかった。
 
***

これは近未来空想小説と言うべき作品である。
当然、全てフィクションと御承知願いたい。
 
©新野司郎
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