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【記者コラム】言い分と言いなり

今年2月ころ、新潟県上越市の飲食街・仲町に呑みに行った帰り、高田駅前のタクシーセンターの年配の方と話していると、石川県の能登半島地震に上越市本社のタクシー会社所有のタクシーが呼ばれていて、上越市内のタクシー台数が減っているとのこと。

なんでも、地震保険から委託された調査員がタクシーを貸し切って地震の調査をしているというのだ。その会社は上越タクシー最大手。石川県だけではタクシーの台数が足りず、上越市まで要請がきたという。ある意味、社会貢献でもあり、あまり表に出ていない情報といえよう。

いうまでもなく、元旦を襲った能登半島地震は、新潟県上越市での津波や新潟市西区での液状化現象など、新潟県内でも大きな被害があった。

一方で、能登半島の知人から地震保険に関するある話を聞いた。それは、地震保険の調査員の査定内容が全て妥当なわけではなく、被害状況によっては再査定の余地があるというのだ。つまり、査定員が隅々まで被害箇所を見ておらず、見落としがあるということになる。

地震保険は掛け捨てで、一生に一度使うかどうかの損害保険である。ということはほとんどの人が今回の地震で申請が初めてということになり、査定の判断基準も分かるはずもなく、どれくらいの認定額になるかどうかは、査定員から一方的な判断で「言われた通り」ということになる。

倒壊数が多く保障が莫大になると大変なので、調査員のさじ減が入り、抑えられる傾向になる。本来であれば契約者が対等な立場で交渉の余地があるべきだが、契約者は査定の見方が判らないため「言われた通り」に従うしかない。

「保険会社は簡易査定でよりスピーディーに支払いができると謳っている。今回の地震は国の激甚災害に認定されており、お金の出どころは国からだが、一般的には知られていない。査定内容の開示義務があると聞いているが、保険会社は基本的には開示していない。現地に来る調査員によって判断基準が曖昧で、査定の強弱も様々だという」(能登半島の知人)。

知人は被災者の生活のため、経済の立て直しのために使命感を持って情報収集に取り組んでいる。

知人は「自動車保険はプロ同士の話し合いだが、地震保険はプロと素人が話している状態。しっかりと情報開示をして、双方が共通の認識を持たいないとお客様は常に不利な立場にあり、納得しないでしょう」と話していた。

地震の影響はこんなところにも出ていた。石川県の一刻も早い復旧を願って、筆を置くことにする。

(編集部・梅川康輝)

にいがた経済新聞 2024年9月1日 掲載


【にいがた経済新聞】

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