マガジンのカバー画像

にいがた経済新聞 編集後記・記者コラム(2023年下半期)

25
にいがた経済新聞に掲載した編集後記・記者コラムの、2023年7月〜12月分です。
運営しているクリエイター

記事一覧

【記者コラム】「情報多様化社会」 2023年の新潟県から2024年の新潟県へ

今年も新潟県内では様々なニュースが報じられた。新型コロナウイルス感染症5類感染症移行、G7、夏の猛暑、クマによる被害など。大きなニュースだけでも数えればキリがない。そこに天気や事件・事故、交通情報など、身の周りにあるニュースが日常に溢れる。 情報化社会を生きている我々は日々、情報の海に浮遊し、波の色一つ一つに気を配らなければ、日常の生活に支障をきたしてしまう恐れがある。 そんな中、にいがた経済新聞社は「新潟県のニュース」を発信している。「社会」という大枠に関連する情報、行

【記者コラム】30年前の「常識」「日常」「正義」

すっかり年の瀬となったが、相変わらず新聞紙面やニュース番組を賑わしているのは自民党の裏金問題。政治資金パーティーの収入を明確にせずにキックバックを受け、裏金プールする手法だが、今になって考えればこんなやり方は1994年に政治資金規正法が改正された直後に、大なり小なり発見されていたのではないかと思う。 記者がまだ駆け出しの頃、建設業のネタ元を訪ねると「昨日、〇〇の秘書が来て50枚置いていったよ」などとコボしているのを腐るほど見た。考えてみれば1枚2万円のパー券を50枚買えば、

【記者コラム】記事のエッセンス

師走、忙しい季節になると思い出す。私がにいがた経済新聞社に入社して、まだ数ヶ月の頃。特集記事の原稿がなかなか書き終わらなかった。そんな時、当時の社長兼編集長から言われた言葉がある。「時間をかけていい。そのうち本当に必要な内容だけが抽出されてくる。そのエッセンスを記事にしろ」。 仕事を抱え過ぎていた私を励ましただけかもしれない。実際、その後「仕事が遅い」と何度かお叱りも受けた。私自身も現在は、執筆は早いに越したことはないと思っている。当然、早く手をつけたほうが書きやすいし、ネ

【記者コラム】これからの行政組織を牽引するのは、サーバント型首長!?

サーバントとは「Servant」(支援)を意味し、1970年、哲学者のロバート・k・グリンリーフ氏が提唱した実践哲学が元となっている。 特徴はメンバーに奉仕することを基本にするという点で、部下の支援や育成やアドバイスをすることに特化したリーダーシップスタイル。部下の自主性やパーフォーマンス、積極性の向上などを図る。従来のトップダウン型の「支配型リーダーシップ」とは真逆の考え方であり、近年の社会情勢や環境の変化で注目を集めている。 〈意思決定の流れの違い〉 「サーバント型

【記者コラム】リトリートの島

11月8日に新潟県立海洋高校で開かれた、ジープ島開島者の吉田宏司(新潟県上越市出身)さんの講演会を取材した。 ジープ島とは、赤道直下の常夏の島でフィリピンの東、パプアニューギニアの北に位置し、ミクロネシア連邦という国に属する。ミクロは小さい、ネシアは島々という意味。 徒歩3分で1周できてしまうくらいの小さな島で、野球の内野の広さに近いという。そこにヤシの木と、2つのコテージがある。 2度ジープ島に旅行に行った男性は、「ジープ島はあえて不便を楽しむ島です。水道もない、電気

【記者コラム】 ジェネラリストというスペシャリストか

先日、多角的なビジネス展開とライフデザインに即した雇用システム採用で注目される株式会社トアイリンクス(新潟市中央区)の佐藤ユウキ代表取締役にインタビューした。 佐藤さんは、都内大手でキャリアを積んだ後、故郷の新潟市にUターン。出産後に再び仕事に復帰しようと思い就活を開始したが、地方都市で女性活躍の場があまりにも少ないことに驚いたという。前職で、チームのマネジメントや生産工程の管理業務、運用フローの作成など、マネジャーとしてキャリアを積んだ佐藤さんだったが、新潟でそういう仕事

【記者コラム】 裸王症

裸王症。 経済学者の清水公一氏が考えた造語でアンデルセンの童話「裸の王様」を由来とする社会的病である。 人は権力を持ったとき、身の回りに反対者が少なくなり、驕りが生まれ正当な意見や批判を聞く耳を持たなくなる。そして組織の腐敗を招き、自浄作用を失う。 記者という仕事の魅力の一つに、普段お会いすることが出来ない方々に直接インタビュー出来る点がある。 取材の中には記事には出来ない、オフレコ話などがあり勉強になる。 とある企業の社長が仰っていたのは、 「バブル以降の失われた

【記者コラム】 「資本主義のバージョン2」

先日、新潟県妙高市主催のSDGsセミナーを取材した。妙高市は令和3年5月、「誰一人取り残さない」というSDGsの考えを取り入れ、人と自然が共生する持続可能なまちを目指す当市の提案が、SDGsの達成に向けて優れた取組を行う自治体として「SDGs未来都市」に認定されている。 講師の五十嵐悠介氏は建設業界の総合商社、東邦産業株式会社(新潟市中央区)の代表取締役社長を務めるほか、SDGs推進コンサルタントとして、年間20件以上の研修講師、講演活動を実施している。ちなみに、五十嵐氏は

【編集後記】 変化と革新

燕三条で発行されている「産業カレンダー」について、三条市側は今年限りで廃止されるとの報道があった。他地域の人にはピンとこないかもしれないが、この地域で働く人にとっては生活と密接に結びついた存在。幼少の頃から燕市に住む私も、大学に上がって県外へ出た時に初めて「え? 産業カレンダーって地元だけなの?」と気づいたほどである。需要が低下していたとはいえ、今回のインパクトは大きい。 話は変わるが、26日、27日には燕三条地場産センターで見本市「ものづくりメッセ」が開かれた。2年前に取

【編集後記】 「相談できる環境」

10月17日、新潟市西区内での80歳代の女性が運転する軽自動車が誤って電車の線路内に進入する事案が発生した。筆者も記者として現場に赴き、記事作成や現場撮影などを行った。 現場に行ってみると、車両が進入したとみられる場所は非常に車通りも多く、進入したとみられる時間も帰宅ラッシュの時間で、目撃者が皆無という状況は考え難い印象を受けた。 何人が目撃していたのかという事はわからない。もしかしたら、たまたま皆が目を離した瞬間だったのかもしれない。または、運転手の女性の認識と同じで手

【編集後記】 見せる工場は魅せる

「燕三条 工場の祭典」が10月26~29日の4日間開催される。金属加工の産地である燕市と三条市の「KOUBA(工場、耕場、購場)」を地域内外に公開する、いわば工場見学を地域ごと行う恒例イベントだ。 2013年の第1回開催でオープンファクトリーに参加したのは54カ所、来場者は4日間の延べで約1万人だったが、2019年には133カ所の参加、来場者は約5万6000人にのぼるほど定着し、また拡散していった。 「工場の祭典」が生まれたきっかけに、2011年頃スノーピーク(三条市)や

【編集後記】 生成AIのこれから

昨年2022年の11月にリリースされて、世間を席巻したOpenAIが米紙ニューヨーク・タイムスに訴えられている。日本でも日本新聞協会など4団体が、8月17日、声明を発表している。 新潟県の複数の市町村でも、公認でOpenAIのchatgptGPTを導入している。同技術が報道業界、出版業界、広報業界など業界全体がライター不要論までに及んだ。しかし、実際使ってみてどうだろうか。 毎回、会話の内容が違う。それは、チャットとして、ランダム性というか「ゆらぎ」を持たせているからだろ

【編集後記】 ブラタモリを観て

9月前半、NHKの番組「ブラタモリ」で新潟県の長岡市と燕三条地域がテーマとなった。その少し前には同じくNHKの「突撃!カネオくん」でも燕三条が取り上げられている。地元だから目につくのだろうと言われればそうかもしれないが、なんとなく最近、同地域が全国区の番組などに取り上げられる機会が多い気がする。 「ブラタモリ」の話に戻るが、燕三条回では例のごとく「燕vs三条」の対立構造で語られた。もちろん、本気でPR合戦をしたわけではなく「互いに高めあってきた」的な落とし所だ。実際、両市は

【編集後記】 談合と官製談合

まだ雑誌記者になって駆け出しのころ、ひょんなことから「北陸信越の談合仕掛け人」という人物に会ったことがある。 もう25年ほど前の話になるが、当時の東日本では、そこそこ大きな公共工事が発注されると、「建設」と「土木」のそれぞれに「交通整理役」がいた(と記者は教えられた)。記者が会ったのは「土木」の仕掛け人「だった」という人物。大手建設会社の社外役員だったと記憶する。「建設」の仕掛け人もやはり大手建設会社の社員だと言われていた。 仕掛け人氏は「談合は必要悪だから無くならない」