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手放すこと


「ずっと続けてきたこととか頑張ってきたこと」って一度でも手放すの相当難しいですよね。
なにか失ってしまわないか、何か悪い影響が出ないか考えてしまったりすると思います。
皆さんもそういった経験ありますか?

私はあります。
ウエイトトレーニングです。


私、大学4年間、千葉県の南端の海の近くに住んでいたんですね。
当時の私はあまりラグビーのスキル向上の方法もよく分からなくて、グラウンドで走るかウエイト場でトレーニングすることが全てでした。

一緒にコソ練付き合ってくれる友達もいなかった(いたけど、毎回は誘えないですよね。笑)ですし、本当にその時私ができることと言ったらフィジカル向上だったんです。
やっていれば、もちろん身体も大きくなるし、持てる重りも上がっていくし、ウエイト場に入り浸っていました。ウエイトトレーニングをしているということが安心にも繋がっていました。


何年かはそれでも良かったんです。


ただ、自分はトレーニングをしているという"安心"から、段々とオフをしている日の"不安"がすごく大きくなっていきました。

なんかサボっているという気分になるんですよね。でも身体は疲れているし。

身体もその疲れから、回復しにくくなっていて、集中力も薄れていっているような気持ちになっていました。それが、大学4年生の頃から本当につい最近までですね。
集中力の薄れは本当に悩んでいました。頑張りたいのに身が入らない感覚があって。トレーニング好きなはずなのに、楽しくなくて。ちょっと辛かったですね。

「身体は休みたいって言ってる。でも休むと心が不安定になる」そんな感じでした。ウエイトをちょっとでもしないと、ラグビーのパフォーマンスまで悪くなっている気がして。
でも疲れている身体でラグビーしているから結局はそんなにパフォーマンスも良くないんですね。笑

私自身、ウエイトトレーニングを1週間ぐらいやらないだけで、すぐ重りを上げられなくなるタイプでして。その分、元に戻るのも早いんですけど、戻すのも結構大変ではあるし、本当に休むことが苦手でした。


休まなきゃとはずっと思ってるんですけど、そう思うとより休めないんです。
2日やらないだけでとても不安でした。


なので、私は、
「ウエイトトレーニング、やることはとても大切だけど、あまり直接的にラグビーと繋げて考えすぎるのはやめにしよう。」

そう思うことにしました。
こう思うことで、休むことへの抵抗感を減らそうと考えました。

「休んだとしても、貴方の価値は急に簡単に変わることはない。」

今までの地道な積み重ねで、今の自分ができているので、そんな数日休んだところで、自分の価値が突然変わるわけないんです。笑

そう思えるようになったのは、3回目NZに渡航してからですかね。みんなのウエイトする姿を見て、なんかみんな意外とサラッとやっていて「あれ?」となりました。それでもみんなラグビーするときはすごいパワーなんです。

なんだか死ぬ気で死ぬ思いでやっていた自分が馬鹿馬鹿しくなりました。だってね、試合前日に45分ぐらいだけあるパワー系のウエイトトレーニングだけ毎週して試合にスタートから出る選手だっているんです。我々日本人選手からすると信じられないですよね。
元々の血の違いはすごく大きいと思うんです。だからこそ、日本人はウエイトトレーニング真剣に取り組むべきではあるのですが。

「一旦、肩の力抜いてみるか」
とそこで初めて思えるようになりました。

それでも、Bluesからもらっていたメニューとスケジュールは自分の中で足りなくて、かなり無視して、週4で自分で内容を決めてトレーニングはしていました。

でもそれは「やりたい。必要だ。」と思ってやっていました。やらなきゃという義務感とかはあんまりなかったですね。なぜなら、今死ぬ気でやったとしても、この大柄で強いニュージーランド人に大きさやフィジカルで勝つことは難しいですから。

いい諦めでした。

その代わり、スピードや瞬発系のトレーニングにシフトチェンジしました。小柄な私はそこで勝つしかないと思いました。この判断はすごくよかったなと今でも思っています。

試合にスタートから出た次のウエイトトレーニングはら疲れからか、重い重りを上げることはできませんでした。スクワットとか、とんでもなくできなかったです。笑
いつもだったらそれでも追い込むのですが、それをするのはやめにしました。今追い込んでも疲労している時間が延ばされるだけなので。毎週試合があるので、疲労を取ることが最優先です。

何よりも「自分の身体すごく疲れてる。」という感覚にきちんと気づいたのが初めてでした。

「これならできる」ということをしたり、ボリュームを落としたり、その時間をリカバリーやリハビリ、何もしない時間にあてることにしました。


なぜこんな簡単なことに気が付かなかったんだ。そう思われる方も多いと思います。これは自分の中で明確な理由があります。

それは私、Bluesに参加するまで、ほとんどスタートでしか出場してこなかったんです。

本当に今思うと贅沢な話ですね。2022年のワールドカップNZ大会のアメリカ戦で初めてベンチスタート、そこからオークランド州代表で大会最初の試合で2回目のベンチスタート、あとは昨年の代表試合ですね。
スタートとベンチスタートの試合後の身体の疲労度ってどんなにベンチスタートで頑張ったとしても、全然違うんです。しかもフロントロー(特にプロップ)はスクラムの一番前で組むから、首とか腰の疲労が本当にすごいんですよね。

ただ、スタートでずっと出続けていた私は、スタートでプレーすることがどれだけの疲労の大きさなのかをよく知りませんでした。

でも、ウエイト場に行けば、メニューはみんなと同じように出されるし、みんなも一生懸命取り組んでるから、私もそれについていかなきゃいけないと思っていました。

Bluesでずっとベンチスタートで試合に出てて、ようやくスタートで出ることができた次のウエイトトレーニングで、ようやくその疲労度の違いに気がつくことができました。

「あ、これはもっと身体労わるべきだ。」と。

スーパーアウピキで優勝したときの写真



Bluesとしての活動が終わって、私は初めて、ウエイトトレーニングを手放して、本当の意味で休むことにしました。

実はね、日本の15人制シーズンが終わったら休むつもりだったのが、Bluesから声をかけていただいたので、すぐNZに行くことになったんです。
そして帰国しても3週間後には代表合宿が迫っていたのですが、とりあえず、
「またトレーニングしたいなあ」と思えるまで休みました。
今までなら休みの日でもトレーニングのことが頭の片隅にあったのに、本当にトレーニングのことを忘れて、休みに集中しました。

最近会えていなかった人たちのところに会いに行く旅をしたり、太陽生命カップのパールズの応援に行ったり、兄弟と動物園に行ったり、母と美味しいもの食べたり、お花見に行ったり、本当に素晴らしい時間を過ごすことができました。

約4年ぶりの桜を母と見ました🌸


そしてふと、「あ、トレーニングするか」と思いました。

意外と時間はかからなかったです。12日間ぐらいかな。
そこからのトレーニングは大変でした。まあ筋肉痛はすごいし、重りは上がらないしで。でも何より回復してる身体でトレーニングするのは楽しかったです。その身体は、今までの疲れていた身体よりももっと上を目指せるような気がしました。

ラグビーも今は、今までよりも遥かに楽しいです。
その理由は他にもあるけど、この影響は本当に大きなものでした。
振り返れば、私は疲れた身体でしかラグビーをしてこなかったなと。
ラグビーをするために、パフォーマンスを上げるためにトレーニングをしているはずが、パフォーマンスを下げる足枷にトレーニングをさせていました。

また、大好きなウエイトトレーニングが、もう一度楽しむようになれて本当に良かったなと思います。

一度手放すことで生まれた余裕•余白からしか、得られないこともありますね。

というお話でした。



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前回の投稿から月日は流れ、私はNZに行き、Bluesでスーパーアウピキに参加して優勝したり、初めてアジアチャンピオンシップに参加したり、気がついたらと言ってはなんですが、人生初の会社に勤め先が決まりました。
ようやく社会人1年目です。高校を卒業して就職された同じ歳の人たちは、社会人6年目…もう尊敬しかないです。

この期間でも、選手のお母さんや友人から「note見てるよ」というお声をいただきました。こんなに更新頻度少ないのに、見ていただけていたり、楽しみにしてくださっている方がいることに、驚きと共に、とても嬉しかったです。

ようやく日本の拠点も定まり、少しずつこの新生活も落ち着いてくるはずなので、note更新したいところです。
もし本当に楽しみにしてくださっている方はインスタグラムやXなどで連絡をしていただけると、本当にタイピング打つ指が進みます。
書きたいことはたくさんあるんです。どうぞよろしくお願いします。笑

最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊

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