初めて実名取引した話

実録ネタが残念な取引ばかりなので、よかった取引も記録しておこうと思います。

私には欲しいものがありました。とあるカプセルトイのぬいぐるみです。SNSで見かけて一目惚れでした。
その存在を知ってからというもの、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、家電量販店、本屋、カプセルトイ専門店……近場でカプセルトイを置いている場所を巡ったのですが、目当ての筐体は見つかりませんでした。カプセルトイ売り場は漫画原作の人気アニメや子ども向け番組のものなどが席巻していて、オリジナルIPは肩身が狭いのです。

こうなったらメルカリで探すっきゃない。そう思い至った私はさっそくスマホでメルカリを開きます。
カプセルトイの商品名を検索すると、いくつもヒットしましたが……高い、高いです。元値は300円なのですが、2倍どころか3倍、4桁でも当たり前の顔をして並んでいます。
もともとがランダム商品なので、好きなものを選んで手に入れられる状況では多少価格が上がっても仕方がないとは思います。とはいえ、当時このカプセルトイは発売開始からまだそんなに経っておらず、割合が少ないレアキャラクターはおそらく存在しません。人気も価格に反映されるものですが、私の欲しいキャラクターはそこそこ多く出品されているので不人気な方です。付加価値はそれほどないので、高値の理由がわかりません。納得できない高額設定は差額で儲けるための出品、転売ヤーに見えます。

しかし、こうでもしないと手に入らないのが地方のつらいところです。
だからといって、転売ヤーの片棒を担ぎたくはありません。転売ヤーに儲かると認識されてしまえば買い占められ、今後さらに普通に入手できなくなり、今まで普通に買えていた人も買えなくなってしまい、最悪の場合はそのタイトルで楽しむこと自体を諦めてしまいます。転売ヤーの買い占めで企業は売れると思って次弾を多めに展開、しかしその頃にはすでに転売ヤーは去っており本来のファンも減っていて、残るのは在庫の山。そうなればシリーズは打ち切りになってしまうでしょう。なんて恐ろしい。
私は検索条件を保存し、しばらく様子見をすることにしました。並行して筐体も探します。

相変わらず筐体は見つからず、ときどきメルカリ内で検索して価格帯を調べること数日、ある出品が目に留まりました。状態が「新品、未使用」なのに500円です。倍額を割っている出品は初めて見ました。
「これだ！」と思った私は購入ボタンを押そうとしましたが、その手はピタリと止まりました。
発送方法が普通郵便だったのです。
メルカリではメルカリ便を使えばお互い匿名で発送・受け取りができますが、他の発送方法では匿名になりません。購入すれば出品者に住所と名前が伝わります。
私は悩みました。信頼も何もない見ず知らずの人に個人情報を渡していいのだろうか、でもこれを逃したら、この先この価格で購入することはきっとできない……。
悩んだ末に、私は購入ボタンを押しました。
決め手はやっぱり価格です。ですが、ただ安いからだけではありません。販売価格500円からメルカリ手数料50円、カプセルトイの元値300円、さらに送料を引いたら利益らしい利益はほとんど出ないのです。儲ける気が感じられないので、無闇に高値な出品者よりは信頼できるだろうと判断したのでした。

さっそく購入のあいさつを取引メッセージで送ると、少し経って返信がありました。メッセージの中で本名（名字のみ）で呼ばれていてかなり驚きましたが、相手も本名（名字のみ）を名乗っていました。その姿勢は「自分だけ相手の個人情報を知っているのはフェアじゃない。自分も名乗ることで相手を安心させようとしている」のであろうと感じられました。
こちらが送ったメッセージに必ず返信をくれる丁寧な対応にも感服しきりです。この人はいい人かもしれない……そう思わせる言動に、信頼度がアップしていきます。

そして、ついに商品が届きました。
まず、とても丁寧な梱包に驚きました。使っているのはごく普通のクラフト封筒（茶封筒）なのですが、透明袋（OPP袋）に入れられており、閉じ口の左右の隙間は透明テープで塞がれています。封筒の中で商品自体も透明袋に入れられているのに、水濡れ対策がすごいです。
宛名シールには華やかなイラストが描かれているものを使用しており、上から透明テープを貼って濡れて文字が滲むのを防いでいます。さらに配達員へのお願いがかわいらしいシールで貼られています。味も素っ気もないシンプルな梱包とは一線を画す、なんだか特別なもののような気がしてきます。演出力がすごいです。
封筒の中には気泡緩衝材で丁寧にくるまれた商品とともに、手書きのメッセージカードとオマケの品が入っていました。「オマケ付き」と書いてある商品を購入したらオマケが入っていなかったという地味に悲しい経験があったので、その逆パターンに驚きました。そのオマケが100均で売っているものだと知っているけれど、胸に響きました。心遣いがすごいです。
最後に、私にトドメを刺したのが郵便証紙です。これは切手の代わりに貼られている、白地に赤字のシールのことです。書かれている数字は受付日と送料を表しており、送料は「200」とあります。グッズ取引では送料の安さでお馴染みの定形外郵便物の料金は120円からですが、今回の商品であるぬいぐるみは小さくて軽くても厚みがあるので規格外料金になるわけです。
……ちょっと待ってください。ということは、つまりですよ？　販売価格500円からメルカリ手数料50円、カプセルトイの元値300円、送料200円を引くと−50円です。利益がほぼ出ないどころか赤字ですよ！？　いいんですか！？　それなのに梱包は凝っていて、オマケまでつけて……。

念願のカプセルトイを入手できたことはもちろん嬉しかったのですが、それ以上に、初めての実名取引の相手がとても丁寧ないい人でよかったという思いが強いです。この人のように、取引前から少しでも相手に信頼、安心してもらえるような出品者になれたらいいなと思います。
現実は「この人オタクじゃないみたいだし、過剰梱包で嫌がられないかな」「これにも返信したらうざい？　通知バッジの押し付けだと思われたりしない？」「折り曲げ厳禁って書いても絶対的な効力はないんだよね。配達の人の迷惑にならないかな？　伝票の大きさ知らないから、長3封筒だとどこに書いていいかわからないし」などの思考が邪魔をして、なかなか難しいのですが。

これからメルカリを始めてみようという方がいらっしゃいましたら、よければ招待コードを使ってください。登録時に入力するとポイントがもらえます。その際、私にもポイントが入りますことをご了承ください。
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