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2023年1月26日 yonige×AgeFactory yonigeレポ

2023年1月26日 yonige×AgeFactory @GORILLA HALL OSAKA

何年か前、高校生だった私は、こんなことを呟いていた。
「yonigeとAgeFactoryの、日常と非日常の狭間みたいな対バンをしてほしい。」
大阪市住之江区に新しく作られたGORILLA HALL OSAKA。
2023年1月26日、まだ新築の香りが残る、この新しい遊び場。
そこで繰り広げられたyonigeとAgeFactoryの対バンライブはまさしく日常と非日常の狭間だった。

SEも無しに、登場した彼女たちは、「yonigeです。」といつものように簡素な挨拶をする。ギターをかき鳴らして始めるでもなく、無理に煽るのでもない。
そこにあるのは、日常の延長線としてのライブだ。
ドラムのカウントから始まった一曲目は「リボルバー」。そして、イントロのリフが印象的な「最終回」へと続く。牛丸ありさ(Vo.Gt)は、ギターもライブもあまり得意ではないことを公言していた時期もある。しかし、彼女が鳴らした疾走感のある力強いギターは、それが過去のことだと言い切るかのようであった。

2曲を終えると、MCに入る。
ごっきん(Ba&Cho)が、「今日は3人編成なので、スペシャルエディションのyonigeです。」と普段とバンドの編成が違うことを口にする。
そう、今日のyonigeはスリーピース編成なのだ。
牛丸とごっきんの2人からなるyonigeは、サポートドラムのホリエを入れて活動。2019年の「これ落としましたよツアー」以降、サポートギターとして土器大洋を迎え、4人でライブをおこなっていた。つまり4年ぶりのスリーピース編成でのライブなのだ。前述した「最終回」のリフは、ここ数年土器が演奏していた。そのため、牛丸が演奏しているのを久しぶりに目撃して、ギターの技術があまりにも向上していることに驚かされた。

MCを終え、続けて演奏されたのは、
「最近のこと」「あのこのゆくえ」の二曲。
「あのこのゆくえ」の跳ねるようなリズムに、思わず白のスニーカーの踵も上がり、体が揺れる。

「三人なので久々の曲を」と始まったのは「アボカド」。フロアからは驚きの声が上がる。
彼女たちの代表曲でありながら、ワンマンライブでもなかなかセットリストに入らない曲だ。改めて聞くと、ドラムの四つ打ちにベースのオクターブでの奏法と、シンプルな曲構成であることが分かる。シンプルかつポップで、スリーピースバンドの洗練されたサウンド。それが、ゴリラホールの新品のアンプを通して、内臓を揺らす。
アルバム『健全な社会』や『三千世界』は、より日常的なことを描いていた。それは、『Coming Spring』や『girls like girls』で描いていた赤裸々な恋愛とは、重なりつつも異なっていた。日常を歌うyonigeは、リアリズム的な歌詞にオルタナティブなサウンドを奏でていた。それは、彼女らが大人になったことを感じさせた。しかし、久々に「アボカド」を歌い、"バイバイ"と別れを告げる牛丸には、どこか少女の姿が重なった。

会場のざわめきがまだ残るなか、
ギターのクリーントーンが美しい、しっとりとした「紗希」へと入る。
「アボカド」からの緩急が凄まじい。牛丸を上から照らす白いスポットライト。それは、まるで「ヘッドライトの光」が「天井を泳いでいる」ようであった。

「紗希」が作り上げたゆったりとした雰囲気を受け継ぐように演奏されたのは「サイケデリックイエスタデイ」だ。元々『Coming Spring』に収録された楽曲であるが、2022年にリアレンジバージョンが配信されている。アコースティックギターの、歪まないそのままの音色は、どこか懐かしさを感じさせる。それは、田舎の夕焼けを見た時の、5時のチャイムがなる時の、寂しさみたいだった。

金色のレスポールに持ち替えた牛丸の、弾き語りから始まったのは「さよならアイデンティティー」。原曲とは違うアレンジであるが、これもライブではお馴染みのアレンジだ。どこか鼻にかかったような丸みと、哀愁と力強さが共存する牛丸の声が響く。

エモーショナルでありながらも、確かに熱を帯びる会場に、「ワンルーム」「さよならプリズナー」の2曲を続けて投下。
ホリエの力強いドラミング(ゴリラが胸を叩いている様ではない)と、ごっきんのメロディアスなベースが、心拍数を上げ、拳をぎゅっと握りしめてしまう。特に「さよならプリズナー」の最後のサビでは、爆発するような破壊力を見せていた。

会場の高まったボルテージそのままに、
牛丸は、「あけましておめでとう。最後の曲やって帰ります。」と挨拶。

そうして放たれたのは「最愛の恋人たち」だ。
"愛されたかったわたしはあなたを愛しているふりをした"と、あまりに切なくて、リアルな歌詞を歌うこの曲。ごっきんのコーラスもその切なさに拍車をかける。
牛丸と、ごっきん、ホリエが三角形の形で、向き合いながら、歪んだオルタナティブなサウンドをかき鳴らす。スリーピースの編成だからこそ見られる、シンメトリーな形。
先ほど、『健全な社会』以降の最近の作品が、よりリアルな日常を描いてきたことに触れた。しかし、『Neyagawa City Pop』に収録されたこの曲にも、その片鱗は見られる。彼女たちの目線は鋭く、思わずドキッとしてしまうような、本質的なことが歌詞に描かれているのだ。それがyonigeの通奏低音であるようにさえ思われる。

コンビニから家に帰るかのように、軽やかに舞台を立ち去る三人。三人の残響は、確かにゴリラホールに熱を残した。

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