国土形成計画(全国計画)中間とりまとめ)についてー議事録から国の説明部分のみ整理

今後の議論のための備忘録として。

経緯

現行の国土形成計画は平成27年、2015年に策定された。

その後、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国民の暮らし方や働き方が大きく変わるなど、我が国の国土をめぐる状況は時代の転換点を迎えている。

そこで、国民の価値観やライフスタイルが多様化する令和の時代における人々の活動分野の政策に力点を置いて、全国様々な地域で人々が安心して暮らし続けることができるための道筋を示すため、昨年7月から、国土審議会計画部会で、新たな国土形成計画及び国土利用計画の策定作業が開始された。

中間とりまとめの概要

国土の課題

・人口減少・少子高齢化
・巨大地震や激甚化
・頻発化する水災害などの巨大災害リスク
・気候変動
・東京一極集中の是正
・地方の暮らしに不可欠な諸機能の確保
・国際競争力の強化
・エネルギーと食料の安定供給

国土づくりの基本的な方向性

・新たな官民連携によって社会課題を解決していく新しい資本主義の体現
・全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指すデジタル田園都市国家構想の実現

共通して取り入れるべき課題解決の原理

・民の力を最大限発揮する官民共創
・デジタルの徹底活用
・生活者・事業者の利便の最適化
・分野の垣根を越えること


特に重点的に取り組む分野

①地域生活圏の構築


人口減少下においても、将来も安心して暮らし続けられるよう、地域の関係者がデジタルを徹底活用して、自らデザインする新たな生活圏づくりを全国で進めることとする。

具体的には、例えば地域交通に関して、高齢者 をはじめとする地域住民の移動手段を確保するため、MaaSであるとか自動運転など、 デジタル化、最新技術の活用により利便性を向上するとともに、官と民、交通事業者相互 間、また、医療・介護、教育等の他分野との垣根を越えて共に創る「共創」により、地域交通を刷新、再設計することが求められる。

また、デジタル技術の実装による地域の製造業やサービス業の生産性の向上、また、スマート農林水産業による成長産業化などにより、地域産業の稼ぐ力を強化したり、テレワークにより、地方での多様な暮らし方や働き方を実現することなどに取り組む必要がある。

こうした取組みを進める地域生活圏について、参考となる1つの目安として10万人前後といった人口規模を示しているが、日常生活や事業を営む生活者や事業者の行動の実態に即して、市町村界にとらわれずに、デジタルの活用や人々の行動範囲の広域化などを考慮して、地域ごとに主体的に考えていくことが重要としている。

この地域生活圏の実現に向けては、地域活動の担い手となる多様な人々の確保が不可欠となる。

特に、二地域居住者等を含む関係人口の拡大・深化として、企業や学校との関わりを含め、人の発掘や育成、 デジタルも活用した交流機会の場づくりや、活動を支える基盤となる仕組みづくりを進める。

また、地域における女性、高齢者、障害者、外国人など、あらゆる人材が活躍できるようにする必要がある。特に若い女性の都市部への流出が顕著な地 方部における女性活躍の拡大の重要性を示している。

今後は、こうした地域生活圏の具体的な姿についてさらに検討を深め、実現するための制度的枠組み等について検討することとしている。

②スーパー・メガリージョンの魅力・効果をいかした国土づくり


スーパー・メガリージョンとは、リニア中央新幹線の開業により1時間で結ばれることになる東京、名古屋、 大阪を含む一連の圏域のこと。

移動時間の短縮効果やデジタル基盤の強化等を通じて、テレワークなどにより多様な価値観に応じた暮らし方が可能となるとともに、交流・対流機能の強化を通じたイノベーションやスタートアップを含めた多様な経済活動の環境が整うということになる。

これによって、世界からヒト・モノ・カネ・情報を呼び込み、国際競争力の回復・強化を牽引していくことが期待される。

加えて、例えば東北と名古屋間の移動時間の短縮をもたらすなど、その他の地方にとっても、新たな圏域との連携によりその効果を地方に波及させるなど、地方の活性化を牽引することにつなげていく。

今後はテレワークの普及、デジタルのさらなる進展を見据えながら、多様な暮らし方や経済活動の選択肢の提供ができる環境形成のあり方、地方の活性化を牽引し、新たな一極集中を生み出さない方策等について検討する。

③巨大災害リスクへの対応とカーボンニュートラルへの対応を同時に取り組む産業の構造転換・再配置


人口や産業が集積する太平洋ベルト地域は、首都直下地震、南海トラフ巨大地震等の巨大災害による被災が想定されている。

それと同時に、CO2を多く排出する臨海コンビナートが集積する地域でもある。

このため、今後、水素・アンモニア産業など、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素投資の促進を通じた産業の構造転換を進める機会に、巨大災害リスクの軽減のための必要な産業再配置を促進することにより、成長産業の分散立地を図り、全国的な観点から産業機能を補完し合える国土を構築する。

今後は、経済界、関係省庁、地方公共団体が一体となって、産業機能の補完・分散の具体像、対策の方向性を明確化し、サプライチェーンを構築する企業間の連携のあり方等について検討する。

④国土の適正な利用・管理

人口減少・高齢化に伴い、農地、森林をはじめとする国土の管理水準が低下し、災害リスクの増大や自然環境、景観の悪化などが懸念される状況となっている。

このため、デジタルの徹底活用を促進しつつ、住民自らが話し合い、官のサポートでメリハリをつけた土地の利用・管理を図る、地域の管理構想を進めていく

具体的には、長野市の中条地区において、耕作放棄地の耕作者年齢や後継者など、地域の将来像を見据え、優先的に維持する土地の明確化を図り、優先度に応じて、積極的維持したり、手のかからない方法で管理したり、あるいは必要最小限の管理にとどめるなどの管理方法について、住民の方々が合意形成を図る先進的な取組が進められている。
こうした取組を全国展開していくということが期待される。

今後は、適正な国土の利用・管理に向けた官民共創とコーディネート機能の確保等について検討する。


こうした方向で策定する新たな国土形成計画により、持続可能な国土の形成、地方から全国へのボトムアップの成長、東京一極集中の是正が実現していくことを期待すると整理している。

 この中間とりまとめをベースに、今後、計画部会においてさらに検討を深め、具体的なあるべき国土像を提示するとともに、エネルギーや食料の安定供給、防災・減災、国土強靱化、カーボンニュートラルへの対応、交通ネットワーク等についても引き続き検討を進め、最終とりまとめを提示していくこととしている。
                               以上


※国HPに掲載の第24回国土審議会(令和4年7月15日)から一部抜粋して読みやすくまとめなおしたものです。


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