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旅行雑記 #4

未来からのホットライン

 「ホテルにチェックインしたらオペレーターに外線接続可能にしてもらうこと」「ピーガーーという音がしてCONNECTしたらじっくりと次の表示が出るまで待つ」。何のことかおわかりでしょうか?実はこれ、20年前のイタリアにおける、ホテルからインターネットにアクセスする手順書のなかの一文です。当時ネットに繋げるには、パソコン(スマホなど影も形もありません)からモデムという通信機器を使って、アクセスポイントと呼ばれる通信サービスの番号に電話をかけるという「儀式」が必要でした。当然これがイタリアなどの海外でとなると更にハードルは高くなり、コネクタの違う電話線や回線の違いへの対応や、電流のプラスマイナスが逆でモデムがすっ飛んでしまうなどの機器のトラブルは日常茶飯事。

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 そして何より重くてかさばるノートPCと、ホームページで旅行記を発信する前に、まずインターネット環境を整えるのが一苦労な時代でした。それが今ではポケットからスマホを取り出し写真を取ったら一文添えて「送信」!ですから、言葉では到底言い表せないくらいハンパない未来感です。

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 20年ぶりに訪れたフィレンツェは、沢山の世界遺産や古い街並みは変わらずそのままでしたが、その裏では高速なネット環境が整備され、公衆のWi-Fiは街のあちこちに空気のように飛んでいて、SNSを活用した文化施設やイベントの案内、果てはチケットまであったりと、まるで古い街並みを舞台にしたSF映画のワンシーンに入り込んでしまったようでした。

 でも一方で、日本と変わらない環境でスマホを使って番組を見たり友達とやりとりしている息子を見ていると、ワクワク感は当時のほうがあったように思えて複雑な気持ちになります。ふと気が向いて、バールでの休憩時に、今もまだ残るその旅行記を現地からスマホで覗いてみることにしました。写真と文字だけのシンプルなページの向こうに、一生懸命HTMLを書いている自分が今もいるような不思議な感覚になり、おすすめのトラットリアや観光地の情報などをメールで送ったら届きそうだと考えたら、つい声に出して笑ってしまいました。

 こんな街歩きとはまた違った思い出の辿り方ができるのもよいものです。次に来るときはどんなふうに変わっているんだろう、などと思い巡らせながら、また現実のフィレンツェの街に向かって歩き出したのでした。

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