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イタリア オリーブ旅日記#2

第2回 プーリア州 モッカリ農園 〜ハート型の街の家族愛に乾杯〜

 “Benvenuta Yoko” (ようこそ 陽子)
 用意されたケーキの文字、そして勢揃いした家族の笑顔に、思わず涙があふれてきました。

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▲ 私のためにわざわざ用意してくださったオリーブのデコレーションケーキ

 2014年10月、私はプーリア州、ブリンディシ県、メサーニェにやってきました。アンジェロの農園を訪ねるためです。アンジェロとはSNSで友達になり、会うのはこれが初めて。ぜひ私の農園に来てくださいと言われたら、ほんとうに行ってしまうのがYoko流オリーブ旅。
 それでももちろん緊張します。
 そんな私を、若当主アンジェロと奥さんのマリエッラ、アンジェロのお父さんとお母さん、娘のロザデアとキアラ、妹さん夫妻とその子供たち、三世代大家族が農園の*マッセリアに一堂に集まって温かく迎えてくれたのでした。
 テーブルには、農園でとれた野菜のお料理にワイン、オリーブオイル。豊かな恵みに感激しながら舌鼓をうちました。(てっきりお夕飯だと思っていたら、これはアペリティーボだったことが判明。その後レストランにもお連れいただいたのでした。さすがプーリア州!)

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 ▲ 樹齢500年以上の古木には温かみがあって、思わずしがみつきたくなります。

メサーニェは珍しいハート型をした街なのよ、とマリエッラが街を案内しながら教えてくれました。アッピア街道の終点ブリンディシより15kmあまり内陸に位置し、古代ローマ時代から重要な宿場町として栄えたこの街の下には遺跡がたくさん残っています。
昔のオリーブ搾油所跡も。この石臼でオリーブの実を挽いていたのだと思うと、この部屋いっぱいに漂っていたであろう香りが頭によみがえります。

 モッカリ農園は、現在、約80ヘクタールの畑を持ち、オリーブ、ワイン用ブドウ、果物、野菜を栽培しています。アンジェロの代になって、こどもたちに、未来の子孫に自然で健康な土地を残したいと、すべてオーガニック栽培に切り替えました。これは大変だけれど大切なことなんだ、とアンジェロ。
オリーブの木は、推定樹齢が500年という古木もあり、古木の間を歩いていると、私たちが生きているのは地球の歴史のほんの一瞬なのだなということに改めて気づかされます。

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▲ アンジェロにとってオリーブはまるで愛する子供のよう。

 また彼は、この南プーリア、サレント地方の品種を守ることにも力を入れていて、オリーブでは、土着品種のチェリーナ・ディ・ナルドの単一品種オイルも作っています。この品種、とてもよい状態で搾油できると、青い野生のイチゴのような優しいフレーバーを感じることができます。

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 ▲ ラベルもモダンなアンジェロのオリーブオイル。こちらは土着品質のチェリーナ・ディ・ナルド種のもの

 家族を愛し、大地を愛する。
 オリーブを見つめるアンジェロの瞳には希望が満ち溢れていました。

Az. Ag. Moccari
Contrada Moccari
72023 Mesagne (BR)

*マッセリア= プーリア州の荘園のこと。またはその荘園の屋敷のこと。

Profilo:森山洋子さん(オリーブオイルソムリエ)

商社、法律事務所勤務を経て、食や健康を仕事にしたいと、2009年にイタリアに語学留学。シエナでの豊かな食生活の中で特にオリーブオイルの素晴らしさに感動し、オリーブオイルソムリエの資格を取得。以降、イタリアを中心に、世界のオリーブオイル農園を旅し、日本でオリーブオイルセミナーを主催している。オリーブオイルのみならず、オリーブの生まれる風土、食文化、作り手の想いを伝えるべく活動している。

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