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東北電力の家庭向け電気料金値上げを申請したことの妥当性について

2022年11月24日、東北電力は経済産業省へ電気料金値上げ認可申請を提出し、11月25日、経済産業省がこれを受理しました。

今回は、この値上げ申請が妥当・適切なのかを各種公開データから考案してみます。

尚、今回参照しているのは東北電力が公表している資料から抜粋して考察していますが、あくまでも数値上から判断しているだけであることをお断りいたします。
(参考)規制料金値上げ申請の概要について
(参考)経営効率化への取り組み

妥当かつ適切な企業努力の上での申請

電源調達原価が高騰しづける以上は料金反映やむなし

今回の値上げ申請に関する根拠として、これまでの燃料調整単価の推移や販売電力量に関する固定費の割合等を確認する必要があります。

東北電力に限らず、規制料金によって6月以降は燃料調整単価が上限値で高止まりしている状況です。

これによって2021年4月には706社あった新電力会社のうち、15%となる104社が電力事業を停止・撤退、契約凍結などが相次ぐこととなり、電気の契約先を失った企業が「最終保障供給」を受けることになりました。その数は2021年10月に445件から2022年10月17日には45,309件と100倍以上の増加するほど。

しかし、規制料金によって燃料調整費が上限で止まっていることから最終保障供給を提供する電力会社は不足する燃料費・購入電源費を自社負担する他にない状態が続いていました。

出典)東北電力「規制料金値上げ申請の概要について」(p10)

この状況は日本が電源資源を保有していない状況が改善されなければ今後も変わることはなさそうであることは明白です。なぜなら、日本には電源資源がないからで、これからも抜本的にそれが改善されることはないでしょう。

そのため、今後も日本は化石燃料や液化天然ガスを輸入しなければならず、それは企業単位でも大勢が変わることはありませんから、輸入価格が高騰すれば電気料金に反映させる他にありません。

今回の値上げは規制料金の上限撤廃分がほぼ

今回、基本料金の引き上げが17%であることは東北電力の公表している資料から明白ですが、以下から読み取れる情報をまとめると以下の通りです。

  • 基本料金は一律17%の値上げ

  • 従量電灯Bの第3段階での上限撤廃による値上げ幅は28%(9.10円/kWh)

  • 規制料金の上限撤廃分を除く純粋な全体的な値上げは3%(1.04円/kWh)

出典)東北電力「規制料金値上げ申請の概要について」(p40)

基本料金の割合が増えているように見受けられるのは、販売電力量が減少したことによって固定費割合が増加したことが理由だと考えられますが、金額は全体の1割程度で、燃料調整費上限撤廃分を除いた従量料金の値上げは3%と低水準だと言え、今回の値上げ分は燃料調整費の上限撤廃分がほぼであると結論づけられます。

出典)東北電力「規制料金値上げ申請の概要について」(p5)
出典)東北電力「規制料金値上げ申請の概要について」(p16)

経営の効率化は継続する方針もすでにやり尽くした感も

値上げをするのであれば、民間企業らしく経営の効率化を図ってから行うべきだとする向きもあるでしょうが、東北電力では2013年の料金改訂時に年間で1,139億円もの経営効率を前提に値上げを行なっています。

そこから更に2021年度までに613億円もの経営効率化を行っており、非常に大規模な経営のスリム化を行なっていることが伺えます。

出典)東北電力「規制料金値上げ申請の概要について」(p11)

何より、人件費割合は原価構成内で2.1%と低く、これを経営のスリム化だとして更に削り出したとしても赤字体制を改善することに対するインパクトは決して大きくはありません。

事実、前回の値上げ時と比較しても効率化を図れていることに加え、原価自体が引き上がっていることが以下の資料からも分かります。

出典)東北電力「規制料金値上げ申請の概要について」(p21)

おわりに

これまでの情報を鑑みると、今回の値上げ申請は電力事業を継続するために必要なものだと見ることが妥当です。

公益的な事業を取り組んでいるからといっても、民営事業者である以上は赤字を延々と垂れ流しながら事業継続できるのかというと違います。

電力会社は公営事業でもなければボランティアといった非営利事業ではありません。公益的な事業を行う民間事業者であることを踏まえると、決して簡単に「値上げを否定すること」はできないのではないかということが今回の記事における結論です。

同じ電力という生活インフラを扱う事業を営む身として、経営の効率化等は当然ではあるものの、それをどうやってお客様と一緒に電力と適切な付き合い方をできるのかを模索しなければならないのだと身が引き締まる思いです。

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