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【第2回】「まなざし」について考える

NASCのアートディレクターの角地智史と、今年度参加型展示会でアドバイザーとしてご参加いただいた飯塚純さんは、偶然にも「ファウンド・フォト」という美術のジャンルを研究するアーティストです。そんな2人が2020年9月10日から12月5日までアール・ブリュットに関して対話を重ねました。その対話を飯塚さんに全4回で報告いただきます。

こんにちは!

美術家の飯塚純(いいづか じゅん)です。

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さて、前回に引き続き、「ファウンド =見出す」という言葉を通じて、「アール・ブリュット」というものを一緒に考えていきたいと思います。

さて、ちょっと前回の復習をしてみましょう !

詳しい自己紹介とこの連載の趣旨などは前回でご説明させていただきました。今回は連載2回目の記事となります。まだ前回をみていない方は、こちらからまずはご覧くださいね!

この動画は、私が新潟県の水族館で実際に撮影したものです。水槽から虹色の「光」が、まるでカーテンのように現れていました。

しかし、人々は魚がいる水槽しか見ていません。目には映っていたかもしれませんが、誰もその「光」をちゃんと見ていなかったのです。

私だけが、この「光」の存在をとらえていたような気がしています。実際、とても美しいものだと思い、撮影してみました。

__例えば、この「光」が「誰かの作品」だったとします。

これをつくった人が自分で「この光が作品」だと伝える術がなかったら・・・

あるいは、本人がこの光を「作品」だと認識できずにいたのなら・・・

光の作品は、誰の目に触れることがないですよね。

今回、私は美しいと思い撮影し、こうしてみなさんにお見せしました。

この「私」の役割は誰になるのでしょうか?

私は、この「誰かの作品を代わりに伝える」という言葉が「アール・ブリュット」というものに対して深く関連するように感じました。

なぜなら、角地さんから教えていただいたアール・ブリュットの作品の多くが、作品をつくった本人ではなく、そのご家族や関わっている施設の方々が「発見」して、「代わり」に作品として場に「出品」しているものだったからです。

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*参照画像:「ぼくらのアール・ブリュット」展 2020年10月 開催 出品作品より

「代わりに伝える」を考えるために

まず、私たちは「見つける」という行為を通じて、自分たちの「まなざし」について考えることにしました。そこで、あるウェブサイトで「気になるもの」を見つけて、それを見せ合い、なぜ選んだのか理由を説明するワークをおこなうことにしました。

このワークの目的は、「見つけた理由」を「見つける」ことで、まなざしに関する感覚を実践をもって学ぶことにあります。

*ウェブサイトは英語になります。

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*ウェブサイト利用した実践ワークの様子

角地さんから教えていただいたこのサイトは、「ファウンド =見出す」をテーマに作品を作っている私にとって感動を与えてくれるものでした。

なんと・・・アムステルダムの発掘調査で何世紀にもわたって川に投棄されていた廃棄物(約70万もののオブジェクト)が見つかり、それらをアーカイブとしてまとめたユニークなサイトなんです!膨大な数のオブジェは、街そのものの記録として、詩のようなものにも感じることができます。

このサイトの最も素晴らしい点は、見つけた時の驚きがあるようにランダムでオブジェが出現したり、そのオブジェを自分で組み換えることができるんです!また、年代別や種類別、各オブジェの説明なども記録されています。

実際、一日中眺めていても飽きないサイトでした!

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このサイトは発掘されたものを「アーカイブ」させ、それをユニークな方法で探すことができるものでした。

調べ方は様々。こんな感じで種類別にも分けることができます。これは・・・フック?でしょうか・・・どうやら、釣り針のようですね。

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さて、ワーク開始です!

私と角地さんは10分の制限時間でこの約70万点ものオブジェの中から気になるものを探して、選んだ理由を説明するワークを開始します。

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↑開始3分経過。えっと・・・ああ。おもちゃのピストルが落ちていました。時代は1970年から1990年らしいです。

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↑開始5分経過・・・。膨大にありすぎるため、一番年代が近いものを探しました。2005年のものは、お菓子のオマケのような・・・オモチャの部品でした。

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↑開始7分経過・・・。私は、この膨大なオブジェの中で最も古いものを探そうと思いました。調べていくと・・・・・貝!!!!!!!年代が凄まじいですね。ロマンを感じます。これにしましょう!

・・・・という訳でワークを終えました。

ワーク終了!!

それではこの誰かが集めたものの中から気になるものを探して、それを言葉にして発表してみたいと思います。

さて、角地さんが選んだものは・・・

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偶然同じ「貝」でした!驚きです、、!

それでは、「選んだ理由」を発表していきましょう!

飯塚:最も古いものを選びました。また、人工物じゃなく生物っていう部分に惹かれていて、これは捨てられたもの・・・というより生きていたもの・・・とか、こうしてとてつもない時間を経て、アーカイブされたものをデジタル上で僕が見つけた・・・という部分にロマンを感じました。

角地:同じく膨大な数だったので、一番古いものを選びました。それと、画像で見ると、とても綺麗で驚きがありました。他のものは錆びていたり、傷があったり・・・なんとなく時間が経過したことがわかりやすく見えたのですが、この貝は最も古いのに、その綺麗な見た目から時間とのギャップを感じ、そこに惹かれました。

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やはり、この膨大なコレクションの中で「最も古いもの」を探す「視点」がお互い「ファウンド ・フォト」を使ったアーティスト同士なのか、考え方が少し似てたようですね。

しかし、その後の感想は少し違いました。

飯塚→人工物じゃない部分に惹かれたから。
角地→見た目が綺麗で、時間とのギャップを感じたから。

つまり、同じものを選び取ったとしても、理由や感想は(当たり前かもしれませんが)人それぞれ違うということです。

また、このワークを実践して見ると「なぜ、それが気になったのか」という視点が自分を通じて相手(この場合ですと角地さん)へ伝えることで、相手(角地さん)を通じて自分へと言葉にしている感覚にもなりました。

見出す行為の過程における最初の段階では「見つける」という行為がありますが、選んだ「意味や理由」を紡ぎ直すことで、「私」が介入していきます。この、「私」が介入する・・・という点が「代わりに伝える」に繋がっていくように感じます。

いや・・・「伝える」という言葉ではニュアンスが違うかもしれません。

「伝える」という言葉は、「伝えるもの」自体を(自分なり)に理解して伝達するイメージなので・・・もしかしたら(自分の言葉で)「語る」というニュアンスが近い言葉かもしれない・・・とこのワークを通じて考えました。

「代わりに語ること」

今回は、アール・ブリュットを理解していくための「見出す」行為における「見つける」について考えていきました。

次回は、「見せる=語る」ということについて一緒に考えていきたいと思います。

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2020年1月___ちょうど、この記事を執筆している中で「見出す」という行為を改めて学ぶために、ロラン・バルトの「明るい部屋 - 写真についての覚書」を読み直していました。

角地さんとの打ち合わせに向かうため、電車に乗って本を読んでいると、車窓から突然・・・太陽の光が差し込み、本の上に綺麗な模様が現れます。

普段、制作場や研究室などの部屋にいるとなかなか見つけることができない世界に触れ・・・とてつもない感動が私の内側から湧きました。

このような「ふとしたこと」を「見つける」ことを大切にしたいものです。

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この連載が、みなさまの活動へ「そっと差し込む光」になることを願っています。

また、お会いしましょう。(続く)

(文と写真:飯塚純)

*参考作品画像の一部はNASCの著作画像より。

飯塚純(いいづか じゅん)
1987年新潟県上越市生まれ、上越市在住。国内外で美術家として活動中。これまでにDOOKSより、多くの作品・書籍が出版され、2018年に 香港 のアート・スペース「Tai Kwun」にて作品の一部がア ー テ ィ ス ト ・ラ イ ブ ラ リ ー に 収蔵。近年では、講演やワークショップなどの教育活動もおこなっている。
飯塚純さんのホームページ:https://www.juniizuka.net/
飯塚純さんの研究実績はこちら:https://researchmap.jp/juniizuka

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令和2年度 新潟県障害者芸術文化活動普及支援事業

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