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【福祉施設の表現活動】フルールこすど・粟森俊輔さん

新潟市秋葉区にあるフルールこすどと、そこに通う粟森さんについて紹介します。もくもくと新聞と向き合う粟森さん、そしてそれに目を留め、初めて作品として公募展に応募してくださった職員さんたちに話を聞きました。

「あたまの体操」

カラフルに文字を色分けされた新聞の記事。テレビ欄、政治の記事、スポーツの記事・・・一面すべてではなく、一部の記事がびっしりと一文字一文字違う色で塗りつぶされています。
よく見ると、母音が「あ」のものは赤、「い」のものは黄・・・というように規則性があります。1つの文字を半分ずつ2色で塗っている箇所も。
塗る記事と塗らない記事があり、テレビ欄はよく塗っていることが分かります。どんな法則があるのかをどんどん見つけたくなる、謎ときのような作品です。

粟森さんは平成12年生まれで、令和元年からフルールこすどの生活介護事業所へ通い始めました。小学生の頃から自宅で文字を塗っていたそうですが、フルールこすどに通い始めると新聞に色を塗っていくようになりました。軽作業や日常のスケジュールの合間、朝の30~40分の待ち時間に日課のように新聞を塗っては箱に入れていき、それがどんどん溜まっていったそうです。職員さんがそれに目を留め、アールブリュット公募展に応募したところ、初めて賞をもらいました。

作品については粟森さんの中で「終わり」があるのか、塗り終わったものには興味がなくなるといいます。まだ途中だと同じ箱の中に決まった向き・順番で入れ、ずらされると嫌がるそうです。

文字を塗る理由、粟森さんの日常

普段粟森さんに接する機会の多い職員さんたちに、粟森さんが文字を塗る理由などについてお話を聞いてみました。

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NASC:どんな理由があって塗っていると思いますか?

職員Aさん:新聞を見て色分けを思いついたのかな?漢字は形でなんとなく、覚えているんだと思います。

職員Bさん:粟森さんは普段から自分なりの「規則性」を持って生活しているように思います。例えば、部屋のものの位置がずれていたら直していたり、タオルを必ず8枚ずつもってきたり。
手持ち無沙汰だと爪をがしがしやって血が出るなんてこともあるから、新聞の色塗りをしてくれるのはありがたいんですよね。彼にとっては暇つぶしのようなものかなあ。こいのぼりの目を描いて、というお題に「め」という文字を書いたこともあるので、文字が好きなのかもしれません。

職員Cさん:塗る記事を選んでいるし、彼なりに「読む」という行為なのではないでしょうか。内容もなんとなく理解して、一文字ずつ追っているからこそ塗るのかもしれない。
初めてきれいに塗られた新聞を見た時は、これを誰かに見てもらいたい!と思いました。

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フルールこすどの生活介護事業部では、日中はスリッパふきやタオルをたたむ作業などを行うことが多いとのこと。朝や帰る前の空き時間にコツコツと塗る粟森さんの新聞は、「あれ、面白いよね」という職員さん同士の会話から目にとまったものでした。

発表することで励みになるのでは、と出品した新潟県障がい者芸術文化祭。職員さんたちは審査員からのコメントによって文字を塗る規則性やルールに初めて気がついたといいます。粟森さんがより良く生活を送れるような生活介護の観点でのサポートをつづけていく中で、彼の行為を作品としてとらえて見守っていくことが新たな可能性につながっていくのではと感じました。

障がい福祉サービス事業 フルールこすど
所在地:新潟県新潟市秋葉区矢代田3092番12
HP: https://nakakan.or.jp/office/disability/fleur-kosudo/


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