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自動車業界においてDXが進む理由とVRの活用

こんにちは。株式会社日本XRセンター、リサーチ担当の花木です。
本日は自動車業界においてDXが進む理由と、VRの活用について解説します。

自動車業界では、トヨタ自動車や日産自動車といった国産自動車メーカーだけでなく、フォルクスワーゲンやBMWといった外資系自動車メーカーもVRを導入していますが、その背景を知る上でDXの考察は欠かせません。自動車業界においてDXが進む背景には、いくつかの要因があります。


DXが進む要因

①人手不足

他の業界と同じように、自動車業界も日本全体の少子高齢化に伴う慢性的な人手不足に頭を抱えています。以下のグラフは、自動車整備学科の入学者数の変化を示しており、全体的に減少傾向にあるのが分かります。

出典:https://www.mlit.go.jp/common/001058685.pdf

さらに加速する人手不足に備えて、自動車業界に関連する多くの企業がDX化を進めています。VRもその一つで、以下のような効果が期待されます。

  • 新しい従業員や技術者のトレーニング:実際の作業現場を再現したVR環境でトレーニングを積むことで、現場での時間を減らし、人材育成スピードが向上します。これは製造業や接客業だけでなく、自動車業界で働く技術者なども活用でき、幅広い業種で活躍が期待されます。

  • 設計・製造プロセスの効率化と遠隔作業の促進:物理的な試作品を作るのではなく、VR上で再現することで設計変更をより早く且つ低コストで行えます。これにより、遠隔でのデザイン設計が可能になり、離れた場所からでもVR上でデザイン設計を共有できるようになります。また、複数のデザイナーがいればVR上で共同作業ができ、コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスの向上にも貢献できます。

②時代の変遷に伴う変化[CASEによる業界全体の変革]

「CASE」は自動車業界のDX化を語る上で、必要不可欠な言葉です。「CASE」とは、C(Connected):自動車のIoT、A(Autonomous):自動運転、S(Shared & Service):シェアリングサービス、E(Electric):電気自動車、の頭文字を繋げて作った言葉です。
昨今は環境への配慮が注視されるなど、環境にやさしいものづくりが求められています。また、高齢化により高齢ドライバーの事故の多発なども問題視され、ますますCASEの必要性が高まっています。

https://www.toyota-mobi-tokyo.co.jp/other_services/t-connect

トヨタ自動車は、日本国内でのCASEを牽引しており、その代表が2018年6月の新車発売時からスタートしているコネクテッドサービス「T-Connect」です。これには事故時の緊急車両やナビ音声による注意喚起に加え、「Toyota Safety Sense」という名称で、多くの車両に衝突の回避や事故による被害を軽減するためのADAS(先進運転システム)を搭載しています。

https://www.nissan.ie/ownership/nissanconnect-services.html

日産自動車も積極的にCASEを推進しており、「Nissan Connect」はスマートフォンとの連携を強化しています。これにより、スマートフォンからカーナビへ行き先を送信したり、スマートフォンとカーナビを連携させることで音楽を再生したり、車に乗る前にスマートフォンでエアコンを作動するといった動作が可能になりました。

VRを通して以下のようにCASEの推進ができます。

  • VRを通して車両のHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を設計できます。VRシミュレータを活用して自動車のHMIを設計することで、仕様変更件数を減らすなど、業務の効率化が図れます。実際にパナソニックが実用しています(事例集紹介の場面で詳しく説明します)。

  • VRを使用して利用者が車を仮想的に試乗できる体験を提供します。これにより、利用者は内部装備やデザイン、機能などを確認でき、サービス満足度が向上します。

③デジタル需要の増加

昨今、社会全体で急激にデジタル需要が増加し、それに伴い自動車業界もデジタルの活用が推進されています。例えば、デジタルキーの活用や「コネクティッドナビ」と呼ばれるセンター通信型のナビゲーションが挙げられます。

https://toyota.jp/digital_key/
https://toyota.jp/tconnectservice/service/connectednavi.html

デジタル需要の増加に対応するために、以下のようなVRの活用方法が挙げられます。

  • 顧客サービスとアフターサービスのデジタル化:VRを活用して、車両のメンテナンス手順を遠隔で指導するシステムを導入できます。こうすることで、サービスセンターの訪問を減らし、迅速なサポートが可能になります。

  • VR上でショールーム:自動車の展示をバーチャル上で行うことで、自宅からでも車の外装や内装のデザインを確認できる仕組みです。

これらの課題の解決のためにも、自動車業界ではDX化がますます推進されることが予想されています。
ここからは、実際に自動車業界においてVRがどのように活用されているのか紹介していきたいと思います。

VRを使った事例[プロモーション]

①日産自動車[VR上での試乗会]

日産自動車は、世界最大級の参加型VR SNS「VR CHAT」上で試乗会を開催しました。日本の四季を感じられるドライブコースで、バーチャルな車を運転することを可能にしました。

VRがもたらす利点:
・自分で運転席に座って運転したり、後部座席に座ったりと、現実の試乗さながらの体験ができ、新車の特徴を立体的に確認することが可能。
・VR上での試乗は通常の試乗とは違い、書類での手続きなども不要で、いつでもどこでからでも体験可能なのが最大の強み。

参照:https://www.nissan-global.com/JP/STORIES/RELEASES/nissan-goes-virtual-with-the-sakura/

②アウディ[VRショールーム]

アウディは、車の内部構造まで見れるVRショールームを展示し、全世界の店舗に展開します。
VRショールームでの基本的なモードは、「1. 車種を選び、座ったり、調べたりするモード」と「2. 自由に車の周りを歩きまわるモード」の2種類です。

VR導入のメリット:
・車種、色などをタブレットPCのアプリから変更することが可能で、それを即座にVRに反映することが可能。
・自動車の購入前に、よりリアルに自動車のデザインや大きさ、色などを確認でき、購入後の満足度向上にも貢献。

参照:https://www.moguravr.com/ces2016-ces/

VRを使った事例[効率化]

①トヨタ自動車[HOLOLENSで自動車整備作業を効率化]

業界国内最大手のトヨタ自動車は、HoloLensを活用し、サービスエンジニアを対象とした働き方改革を展開しました。従来の 2D の紙や Web の作業手順書・修理書を、3D ホログラムで実現し、生産性向上、技術スキルの標準化、習熟度の向上を実現します。サービスエンジニアが該当する車種の3Dの作業手順書・修理書を現実空間に重ねて表示することで、作業を行う自動車の部位の上に作業手順書が表示されます。

これまでの課題:

通常、現場のサービスエンジニアは作業手順書や修理書やWEBマニュアルを参照し、自動車の整備作業をおこなっています。しかし、現場では資料は車種ごとに用意されているため、膨大の資料を保管するための場所が必要となります。また、2Dのイラストでは内部の構造が分かりずらい、といった課題がありました。

VRがもたらす利点:
・より正確且つ効率的に作業を進めることが可能。
・新人や経験の浅い整備士でも、短時間でも質の高い成果を出すことが可能。
・作業時間に伴う人件費の削減や、作業効率の向上にも貢献。
・整備士の作業技術レベルの標準化や作業品質の維持確保にも貢献。

参照:https://news.microsoft.com/ja-jp/2020/10/06/201006-toyota-motor-started-introducing-hololens-2-in-gr-garage-nationwide/

②フォルクスワーゲン[車体修理にARヘッドセットを導入]

フォルクスワーゲンは、イギリスのディーラーにおいて、車体修理にARヘッドセットを導入しました。ヘッドセットを通じて、技術者は本社の専門家とコミュニケーションが可能で、複雑な問題に直面したときにアドバイスを得られます。サポートセンターは技術者の視界を共有し、現場に図や資料を示すなどの支援ができます。

AR導入がもたらす利点:
・修理工程を速め、顧客が車両を使えない期間を短縮。
・現場の技術者と本社の専門家が視界を共有し、図やコメントも用いたアドバイスややり取りが可能。
・作業時間を大幅に短縮。
・同社によると、トライアルで修理の効率は93%も改善。
・車両を使用できないダウンタイムは1年分削減、金額にして25万ポンド(約3,400万円)
・さらに、サポートチームが現場に行く必要がないため、移動に伴う二酸化炭の発生を抑制。この効果は、二酸化炭素排出量2.5トン分相当。

参照:https://www.moguravr.com/volkswagen-ar/

③BMW[独自のスマートグラスで現場の技術者支援]

https://ascii.jp/elem/000/001/882/1882492/

ドイツの自動車メーカーBMWは、ディーラーの技術者向けスマートグラス「TSARAVision Smart Glasses」を開発しました。ディバイスを装着すると、図面等がレンズ上に映し出される仕組みとなっており、技術者の作業を手助けする狙いがあります。スクリーンショット撮影や画像の拡大に加え、音声操作にも対応しており、様々な機能で作業効率向上に貢献できます。

スマートグラスがもたらす利点:
・音声操作などにも対応しており、作業者はハンズフリーで整備手順をチェックすることが可能。
・情報が必要な場合は、グラスをかけたまま電話をかけることも可能。
・本社ドイツの技術者が現場の整備士が見ている状況をリアルタイムで確認することができ、整備士は指導やアドバイスを仰ぐことが可能。
・マニュアルやPC、電話を用意する必要がないため、現場の作業効率も向上。

④パナソニックグループ[VRシミュレータを開発]

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003633.000003442.html
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2001/21/news050_2.html

パナソニックグループは、自動車用のコックピットのHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を仮想空間で検証するVRシミュレータを開発しました。

VR導入以前:
紙の仕様書やPoCと呼ばれる新しい概念やアイデアを検証するための、試作段階における検証やデモンストレーションなどを通してコックピットのHMIを検証していました。しかし、現実の運転感覚とは異なるのが問題点として挙げられ、コックピットの開発において仕様の修正に多くの費用と時間が必要でした。

VR導入のメリット:
・コックピットの開発効率化を可能。
・VRシミュレーターを用いた実際のHMIの設計開発では、仕様変更件数の総数を約30%削減
・従来よりも短い開発期間。

参照:https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2001/21/news050_2.html

⑤ボルボ・カーズ[車の開発に世界で初めてMR技術を活用]

https://jp.volvocars.com/pressrelease/2019-05-30/

2019年に、ボルボ・カーズはフィンランドのARヘッドセットメーカーであるVarjo(バリヨ)へ出資し、装着したまま実際の自動車を運転できるMRヘッドセットを開発しました。これは世界初の試みで、特定の要素や機能全体がドライバーと自動車用センサーどちらからも実際にあるかのように見えます。これにより、デザイナーやエンジニアは、まだ設計段階のデザインや技術の評価ができます。

MRヘッドセット導入の利点:
・開発における時間面とコスト面の効率が向上
・制作コストの大幅な削減。
・内蔵されている高精度アイトラッキング技術では、ドライバーは新しい機能をどのように使用しているか、また、何らかの原因により注意散漫になっているかどうかを容易に確認することが可能。

参照:https://jp.volvocars.com/pressrelease/2019-05-30/

 VRを使った事例[デザイン]

①SUBARU[UNREAL ENGINEを活用したVR]

https://www.unrealengine.com/ja/spotlights/subaru-harnesses-the-power-of-vr-for-user-research

これまでの課題:
ユーザーが求めるデザインのニーズや新しい提案に対する感度を知るためには、実物大モデルを制作し、直接確認してもらう必要がありました。しかし、この手法は制作や輸送にコストが必要となり代替案が検討されていました。また、機密を守るために、ユーザーが普段車を目にする環境とは程遠い閉鎖された環境が必要でした。

VRがもたらす利点:
・部品や質感も容易に再現。
・機密保持のための特殊な環境の用意も不要。
・コストの面で従来の約1/7に、デザイン開発からクリニックまでの準備期間を約6週間から3日に短縮。

このVRヘッドセットには、「目線トラッキング」と呼ばれる機能が搭載されており、これにより、より深くユーザーの嗜好を把握できるようになりました。例えば、あるユーザーはタイヤが大きく、スポーティに見えると回答していたにも関わらず、実はそれほどタイヤには注目しておらず、むしろ他のパーツを注視していたことが分かりました。このように、目線トラッキング機能を通して、アンケート回答と実際の行動には差異があり、従来の手法では、ユーザーの本音のデザイン評価まで深く調査できていないことが分かりました。

参照:https://www.unrealengine.com/ja/spotlights/subaru-harnesses-the-power-of-vr-for-user-research

②フォード[VR空間での共創作業]

https://www.axismag.jp/posts/2019/05/128343.html

フォードは、世界中のデザイナーが一つのVR空間に集合して、メタバース上で共同作業ができるシステムを導入しました。

VR導入以前:
通常、自動車のデザインはスケッチをし、2Dの高品質なイラストを作成した後、これらのレンダリングを評価します。その後、コンピュータでデータ化し、3Dモデルを制作します。そして、さらなるデザインの評価のために、リアルな環境で確認を行います。これらの一連の作業には数週間を要します。
そこで、フォードモーターは、Gravity Sketchと定消し、デザイナーがVRゴーグルを装着し、3Dデザインを可能にするものを開発しました。

VR導入のメリット:
・3Dスケットの描画、回転、拡大、圧縮が可能で、より効率的なデザイン作成が可能。
・共同作成機能でリアルタイムの調整を行いながら、複数のデザイナーがコンテンツ制作に取り組むことが可能。例えば、上海にいるデザイナーとアメリカにいるデザイナーが、一緒にVR空間上で自動車のデザイン修正できる。
・世界中のデザイナーが同じVR空間を使用することで、車両をデザインする際の意思決定をリアルタイムで行うことが可能。

参照:https://response.jp/article/2019/05/08/322082.html


以上が自動車業界におけるDXとVRの活用でしたが、VRが果たせる役割はまだまだ他にもあると考えられています。現在主にVRが活用されているのは、自動車開発や販売、プロモーションの部分ですが、これら以外でも活用される場面もあります。多種多様な場面でVRを効率的に活用することが、競争社会の現代で成功する一つの種になるのではないでしょうか。これからはますますDX化が推進されていきます。自動車業界では、自動運転やデジタルコンテンツの充実など、テクノロジーを駆使した開発が活発に行われています。ぜひこの機会にVRを活用して、新たなコンテンツの開発や業務の効率化を図りませんか?

以下のような場面でVRはさらなる活躍が期待されます。

  • 販売促進:日産自動車が行っていたようなVR上での試乗会を実施します。これは、試乗会には車と販売員が必要であるという今までの前提を覆すものであり、小さなスペースでさまざまな車に試乗できます。また、販売員による解説の属人性も排除できるため、セールス力の高品質化と均一化が図れます。

  • マーケティング戦略の強化:SUBARUがUnreal Engineを使用して目線トラッキングでユーザーの嗜好を把握したように、VRを通してユーザーの行動や操作などのデータ解析を用いたマーケティング戦略を強化できます。アンケートだけでは取れないようなデータを集めることができ、新しい戦略やユーザーの満足度向上にも貢献できます。

VRを使った共創や、VRを使ったDXにご興味のある方は、ぜひこちらまでお問い合わせください(thomas@vrarri.com)。

他の業界事例も以下にまとめてありますので、ご興味ある場合はぜひご覧ください。


詳しい業界事例については、以下のリンクまたはQRコードからお問い合わせください。

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日本XRセンターについて

・サンフランシスコ、インド、日本を拠点にVRコンテンツを開発(高いクオリティと圧倒的なコストパフォーマンス)
・日本を代表するVC、エンジェル投資家、金融機関より1.4億円の資金調達済み
・清水建設、JAL、東京ドーム、ベルク、Y's HOTEL、SUNNY SIDE UP GROUP、株式会社ソフトウェア・サービス、大手医療機器メーカー、大手自動車教習所、著名テーマパークなど実績多数
・CEO:小林大河
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お問い合わせ:thomas@vrarri.com


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