四間ミレニアム 先手編 Part1.序盤の駒組み
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ミレニアムは高美濃の攻撃力と穴熊の深さを併せ持つ振り飛車の新しい囲いとして近年注目されている。「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」(村田顕弘六段著)を始め、数冊の書籍で解説されているが、ほとんどが後手番での解説であり、先手振り飛車の解説書は少ない。
先手ミレニアムが少ない理由
①急戦されたときに困る
「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」および、shinri氏の四間飛車検討室(下記URL)のレビューに詳しい説明が記載されているので引用させていただく。
https://shikenbisha.com
まずは、「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」から
「第13図になった場合、先手が振りミレを目指すなら▲4六歩か▲3六歩を突くことになる。勿論これはこれで、簡単に居飛車がよくなるわけではないので1局の将棋なのだが、急戦されたときのリスクを考えると得策ではないと思う。」
"将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法"より引用
次に、shinri氏のレビューを見てみる。
第13図で▲4六歩として急戦になった場合はA図が想定されますが、▲4六歩がどの程度損なのかはっきりしません。むしろ問題なのは第13図から▲4六歩△3三角となったとき、ミレニアムにするには▲3六歩(B図)とするしかないことだと思います。▲3六歩は美濃囲いにしたときにコビンが空くという明確な損があります。先手の▲3六歩を見て急戦に切り替えられる方が先手にとって不満です。
shinri氏の"『将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法』 レビュー"より引用
いずれにしても、先手ミレニアムは急戦に対して美濃囲いで対抗したときに、手が進み過ぎている点が逆効果になるようだ。
②先手四間は美濃囲いでも端歩突き穴熊に対抗できる
元奨励会三段あらきっぺ氏の「最新戦法の事情 振り飛車編」に詳しく説明されているので、引用させていただく。
最新戦法の事情 振り飛車編(2021年1月号)
https://arakippe.com/archives/ranging-rook-202101.html
最新戦法の事情(2019年7月・振り飛車編)
https://arakippe.com/archives/ranging-rook-201907.html
ここから▲5五歩△同歩▲1五歩△同歩▲5五銀と攻めて先手ペースとなります。
以下の記事、電子書籍も参考になるとおもいます。(宣伝)
対端歩突き穴熊 鈴木システム(noteマガジン)
鈴木システムを指しこなす本 先手編 対端歩突き穴熊 Vol.1
この作戦は先手四間飛車限定の指し方ではありますが、非常に有力だと思います。何と言っても一方的に攻勢に出れることは大いに魅力的でしょう。
この仕掛けがあるので先手番ではわざわざミレニアムに組む必要性がなく、慣れ親しんだ美濃囲いを選択すれば良いので、採用数が少ないということですね。
解決策
「②先手四間は美濃囲いでも端歩突き穴熊に対抗できる」に関しては、使える手札は多いに越したことはないので良いとして、「①急戦されたときに困る」これをなんとかしないといけません。序盤の駒組み手順をブラッシュアップする必要があります。
序盤の駒組み
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩
▲6八飛 △6二銀 ▲1六歩 △1四歩
▲4八玉 △4二玉 ▲5八金左△3二玉
▲3八玉 △5四歩 ▲7八銀 △8五歩
▲7七角 △5二金右(途中図)
途中図まで進めて指し手が悩ましい。後手は右銀急戦も持久戦も選択できるため、先手は急戦持久戦両方に備えた構えをとらなくてはならない。
途中図からの指し手
▲3六歩 △5三銀 ▲2八銀(基本図1)
本譜▲3六歩~▲2八銀は、急戦には金無双、持久戦にはミレニアムをみせた工夫の構え。このように先手番でミレニアムを目指すには最初から美濃囲いを捨てる必要がある。
代えて途中図で▲6七銀と上がるのは急戦に弱くなる。
以下△5三銀(参考図1)に
参考図1以下
①▲3六歩は△7四歩▲2八銀△6四銀(参考図2)が一例で後手ペース。
また、
②▲4六歩は△3三角(参考図3)と手を渡され、
以下
A▲5六銀は△7四歩▲4五銀△5五角(参考図4)
B▲3六歩は△7四歩▲7八飛△6四銀▲2八玉△7五歩▲3八銀△7六歩▲同銀△7二飛▲6五歩△5五銀(参考図5)
が一例でいずれも後手ペース。
C▲5六歩は△2二玉以下穴熊に組まれ、5六銀型に組めず先手作戦負け(参考図6)。
次回は本当に金無双で急戦に対抗できるのか検証していきます。
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