親愛なるあなたへ Ⅱ


〜〜第2章〜〜

初めての出会いは、職場である。

異動で来た僕とほぼ同じタイミングで

挨拶をしていた。

今だから言えるが

この時から気になり始めていた。

人の第一印象はすごく大事と言われている。

その印象があっているか、あっていないかは

さして重要ではない。

僕にとっての第一印象がその人の

基準を勝手に決めてしまう。


当然話したことはないし、仕事的に

そこまで深く関わるタイミングも少ない。

それでもほぼ同じタイミングで来たこと

多少僕の方が会社の事を知っていたので

少しは話す事ができた。

ただ所詮その程度。

僕自身も新しい環境に慣れる必要もある。


初めてしっかりと喋ったのは会社の研修。

新しい職場に来たばかりの僕達は

たまたま同じ研修を受けた。

その時少しだけ事務的な話以外の話をした。

第一印象の影響を受けている僕は

そこでも好印象を抱いた。

けど所詮研修。

1日、それもほんの数分程度しか話していない。

そこからしばらくはまたいつもの日常に戻った。


大雪の冬を迎え

気になったまま具体的な事は特に何も起こせず

春になった。



『僕、御朱印集めてるんです。』

どうしてこのフレーズが出て来たのか。

話の流れは覚えていない。

たまたま帰る時に廊下で

軽く話した時にふと言った。

会社の人、誰にも言っていない事を

もしかしたらバカにされるかもしれない事を

なぜか言った。


『本当!?実は私も集めてるんです!そんなに行っている訳じゃないけど。』


言ってよかった。

結果良ければ全て良しにもほどがあるが

謎の賭けには勝った。

ここで社会人にありがちな約束をした。

『今度ぜひ見せ合いましょう。』

僕なりのきっかけを作った。

どれくらい本気で捉えてくれているか

その辺を考え出すと答えが出ないので

タイミングを見計らって、仕事終わりに

食事に誘ってみた。


僕補正が入っているかもしれないが

彼女は誰にでも優しい。

特に何も思っていなかったであろう僕の誘いにも

応じてくれた。


最初は僕の御朱印帳を見てもらい

次に彼女のものを見せてもらった。

同じ趣味を持っているだけで

僕はとても嬉しかった。

そこでいろんな話をした。

舞い上がってどんな話をしたか覚えてはいない。

ただ印象に残っているのは、どんな時にも

彼女は笑顔で話題を終わらせてくれた。

僕も話の最後は笑顔で終わらせたい性格だ。

とにかくたくさん笑って

たくさん笑わせてくれた。

そんな初めての二人だけの食事だった。


僕は確信した。



彼女が好きだ。



奥手で積極的にアピールする事ができない僕だけど

少しだけ頑張ってみよう。


だが、そう簡単に話はうまく進むものではない。

僕の物語も例に漏れず、現実に少しずつ

打ちのめされることになる。


〜〜続く〜〜



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