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【行政HPの英語】防災編➁ 用語集と訳出例

今回は、防災関連のHPでよく使うワードや、英訳でまちがえやすいポイントなどを解説します。

・緊急速報   emergency alert
emergency rapid mail と訳出している例がありましたが、rapid mailという表現は一般的ではありません。

・避難   evacuation
よくある間違いが「run away」。困ったことや嫌なことから逃げ出す、というニュアンスの熟語で、災害避難の意味合いはありません。避難はevacuationが定訳です。空っぽにするという意味のラテン語vacuusが語源で、動詞形(避難する)はevacuate です。

・警報、注意報   alerts
自然災害大国・日本では、気象警報の類が緊急度に合わせて細かく分類されています(特別警報、警報、注意報など)。これは日本独自の分類で、それぞれにぴったりと呼応する英語はありません。一つ一つの違いを訳出しようとせずに、ひとまとめにalertsとするのがわかりやすいでしょう。

・記録的短時間大雨情報    heavy rain warning(またはheavy rain alert)
これも日本に独自の概念で、対応する英語表現はありません。AI翻訳ではrecord-breaking rainfall information in a short period of time と直訳されることが多いようですが、説明的で非常に意味がとりづらいです。逐語訳することにこだわりすぎず、heavy rain warning などの簡潔な表現とした方が意味したいことは伝わりやすいでしょう。

・緊急時の安全情報    public safety または safety information
前回の記事で詳しく解説しましたが、「災害への備え」と「実際に災害が起きた時の緊急情報」とは見出しを分けて表示することが望ましいです。日本語の場合、「防災」の項目の下に両者が併記されていることが多く、日本語話者であればそのことに特に違和感を感じませんが、英語の場合は、防災を「disaster prevention」と直訳するともっぱら予防preventionの意味合いだけとなり、緊急時の安全情報までを含むとはわかりにくいです。

・ライフライン    public utilities または essential utilities
life lineは和製英語です。(生命線という意味合いはありますが、ガス電気水道などの公共サービスは意味しません。)

・いざというときに   in case of emergency
When I say well と訳出している例がありました。「いざ」をwell 、「いう」をsayと訳したものと思われます。日本語に戻すと「私が『え~っと』というとき」というような意味になるでしょうか。緊急時には、という意味合いの英語表現としてはin case of emergencyが自然でしょう。

・洪水   flooding
日本語には、洪水、冠水、氾濫、浸水など、洪水関連のワードがたくさんありますが、英語ではfloodingと総称するのが一般的でしょう。日本の行政HPでは浸水をinnundationと訳すことが多いようですが、一般的にはなじみの薄い単語で、意味が通じにくいでしょう。また床上浸水、床下浸水、という区分も日本に独自の概念で、説明なくそのまま訳しても意味が通じません。

・新型コロナウイルス    Covid-19
英語ではCovid-19が定型表現です。日本語の直訳でNovel Corona virusと訳している例を多数みかけますが、今やコロナウイルスを「Novel」つまり「新奇な」と表現するのはやや不自然に感じます。

(文責:楠田倫子)

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