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【日本遺産の基礎知識】山寺が支えた紅花文化(山形県)

執筆:日本遺産普及協会監事 黒田尚嗣

山形県の日本遺産「山寺が 支えた紅花文化」の基礎知識を紹介します。
※本記事は、『日本遺産検定3級公式テキスト』一般社団法人日本遺産普及協会監修/黒田尚嗣編著(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。


日本遺産指定の背景

鬱蒼と茂る木々に囲まれた参道石段と奇岩怪石の景勝地「山寺」。この山寺が深くかかわった紅花栽培紅花交易は、莫大な富と豊かな文化をこの地にもたらしました。
石積の板黒塀と堀に囲まれた広大な敷地を持つ豪農・豪商屋敷には、白壁の蔵座敷が立ち並び、上方文化とのつながりを示す雅な雛人形や、紅花染めの衣装を身に着けて舞う舞楽が、今なお受け継がれ、華やかな彩りを添えています。
この地の隆盛を支えた山寺を訪れ、今も息づく紅花畑、そして、紅花豪農・豪商の蔵座敷を通して、芭蕉も目にした当地の隆盛を偲ぶことができます。

地域を見守る山寺からの景観

1.山寺が支えた紅花交易の発展

山形県の中央部に位置する村山地域は、江戸時代には日本一の紅花の産地として知られました。紅花は、上方に運ばれて華麗な西陣織や化粧用の紅に加工されて、日本人の暮らしを彩りました。この地では、紅花交易を通してもたらされた豊かな富と華やかな上方文化が今も息づいていますが、その発展の背景には、当地を代表する古刹「山寺」が深く関わっていました。
紅花は、慈覚大師(じかくだいし)や第二世安然(あんねん)大師によってこの地に伝えられたといわれています。この地では、最上川がもたらす肥沃な土壌と朝霧の立ちやすい気候風土が、良質な紅を多く含む紅花を育みました。
また、比叡山と古くから関係のある山寺の存在は、比叡山と縁故の深い「近江商人」たちをこの地に引きつけました。山形の領主最上義光(もがみよしあき)も、積極的に商売上手な近江商人を誘致して、上方との取引を盛んにしようとしました。
このことから、やがて、近江商人は、山形市の中心部に店舗を構え、地元の商人とともに紅花交易を通して莫大な富をもたらし、上方文化をこの地に伝えるとともに、山寺への寄進も行いました。

2.山寺と紅花交易がもたらした豊かな富と今に伝わる紅花文化

村山地域には、紅花交易全盛期をしのばせる立派な蔵屋敷が今も数多く残り、当時の栄華をうかがい知ることができます。
また、山寺立石寺の開山とともに伝えられ、谷地八幡宮や慈恩寺において毎年奉納される上方舞楽は、紅花染めの神聖な赤い衣装が用いられ、華やかに舞う姿が人々を魅了します。慈恩寺には、唇にあでやかに紅を差す化粧を施された秘仏が安置され、信仰を集めています。
そして、紅花交易は、食文化にも影響を与えました。当地の郷土料理「芋煮」は、秋に河原で食べる鍋料理ですが、紅花を上方に運んだ船頭が、地元の食材の里芋と、帰り荷の棒鱈を河原で煮て食べたことが発祥といわれています。また、家庭料理として親しまれている「おみづけ(近江漬け)」は、堰(せき)に流れる青菜等のくず野菜も無駄にせず、漬物にして食し、倹約と
商いに努めた近江商人由来の食文化です。

豪農屋敷の周囲に広がる紅花畑

「山寺が支えた紅花文化」の詳しい情報はこちら

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著者プロフィール

日本遺産普及協会代表監事。近畿日本ツーリストなどを経て、現在はクラブツーリズム株式会社の顧問を務める。旅の文化カレッジ講師として「旅行+知恵=人生のときめき」をテーマに旅の講座や旅行の企画、ツアーに同行する案内人や添乗員の育成などを行う。また自らもツアーに同行し、「世界遺産・日本遺産の語り部」として活躍中。旅行情報誌『月刊 旅行読売』に「日本遺産のミカタ」連載中。著書に『日本遺産の教科書 令和の旅指南』などがある。日本遺産国際フォーラム パネリスト、一般社団法人日本旅行作家協会会員、旅の文化研究所研究員、総合旅行業取扱管理者

運営:日本遺産普及協会


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