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文法的には正しくても、発話としておかしいこと考

東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
複数の大学で、日本語教育、キャリア支援、日本人のアカデミックライティングなども担当しています。

数年前に、深刻な腰痛に悩まされていた私は、決死の覚悟で、大谷翔平選手が宣伝するマットレスを買いました。その時、すでに彼は誰もが知る選手だったようですが、私はテレビを持っていないので、どんな人なのかも知らず、店員さんを待っている間に、大谷選手の大きな写真を眺めていました。

ある時、大谷選手の顔が出ていて、「あ、この人知ってるよ〜」と友人たちに言ったところ、それはもう、大顰蹙でした。私としては、私のマットレスの人だ、という嬉しい発見だったのですが、全く、この人は何を言ってるんだ!と呆れられたわけです。

知らない人がいないものについて、「知っている」と口に出して言うと、おかしいのです。では、「私も、この人を知っている」と言うのはどうでしょうか。これも、やはりダメですね。

文として、文法的にも正しくないわけではないのですが、当たり前のことを口に出して言葉にするとおかしいのです。発話としておかしい。ペンを手にして、This is a pen. と言ったらおかしいのと同様ですね。情報として意味がないというべきか。

かれこれ30年、テレビを持っていない私には、こんなことがしばしばあります。
NHKの訪問員さん、証明できないんですが、本当に持っていないんです…。

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