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距離感

祇園祭の後祭り。
梅雨明けの京都市内は強い日差しに力を得て
蝉がうるさいほどに鳴いている。
日が落ちてもいつまでも暑い東京と異なり
京都の夜はどこまでも歩いていけるような
風が吹いている。
京都で夜に出かけるのが好きだった事を思い出す。
山と川があるだけで繁華街もなんとなく
清らかな空気を纏っている。
朝は近くの喫茶店で朝食を摂る。
「コーヒーだけでいいわ」
スポーツ新聞をラックから取って
お金を払う常連のお客さん。
お店の人が次々に挨拶にくる。

鉾引いたんか
引いたよ。息子と一緒にな
それは大変やなぁ。
中に色々積んでんねん。お茶とか
お手拭きとかな。

おはようございます。
忙しいやろ。
そうですね。
明日まで頑張ります。

淡々としたやりとりが続く。
どちらも対等で適度な距離感を感じる。
京都弁のアクセントのせいか
冷たさも慇懃さもない。
関西の人たちは立ち話や雑談が上手い。
地元の喫茶店に入ると店主とお客さんの
会話が聞こえてくる。
病院通いの話や最近来ないお客さんの話。
噂話まで深くならず上澄みをさらさらと
行ったり来たり。
東京の接客はもちろん店にもよるが
マニュアル重視の慇懃無礼か
近くなるとうんざり感が滲み出る。
覚えてる?覚えてますよ。
そんなやりとりが見え隠れする。
お客さんとお店の関係の長さの違いなのか。
水魚の交わりのような関わり。
お金を落とすこと、お店の人をカウンセラーや
掃き溜めにしないこと。
最近見つけた大切なお店にいくときは
あのおじいさんを少し意識してみようと思う。

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