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堺市の打刃物

豊洲市場に心を奪われてから半年。
豊洲→料理人→包丁→本焼きという流れで
富樫打刃物製作所さんに見学に行ってきました。
鍛冶という作業を初めて見ました。
焼きを入れる時に色を見る為
明かりを消します。
炉の中で刃に浮かび上がる朱色。
赤い星を見ているようでした。
その後水に入れて締めるのですが
朱色が徐々に薄紫に変わります。
日没前の雲のような色の変化。
私の語彙ではその美しさはとても表現できません。
血の気の引いた美女みたいの佇まい。
一本の鋼が熱せられ叩かれるうちに
包丁の形になる様子は魔法を見ているようでした。
伝統工芸士という肩書きを持つ富樫社長。

「鍛冶屋のことを英語でBlacksmithっていうんやな」
とにこやかに話しかけて下さったのが
印象的でした。
私がいた場所から見える範囲では
大体22平米くらいの場所に
ベルトハンマーや研磨機、腰掛け椅子や
豆電球や見本の包丁が所狭しと並んでいました。
ほとんど会話が無く一人ひとりがさまざまな作業を受け持っていました。
富樫社長の流れるような美しい所作を見て

アルケミストというのはもしかしたら
鍛冶屋さんの事だったのではないか。

そんな事を考えていました。

料理人でも刃物を扱う小売店でも無いわたしに
見学させて下さる心の広さ。
謙遜では無くかなり邪魔だったはず。
予習不足で一流の方の仕事場に伺った
自分の粗忽さを呪いました。
百聞は一見にしかず。
あの音、飛び散る火花、振動。
見学ルートなんていうものは無い。
プロの料理人の方々は出来上がった包丁で
何かを切っただけで色々な事が
分かってしまうのかもしれない。
手作業の意味、重み。
しっかり復習したいと思います。

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