見出し画像

善意のおむすび…名古屋から「恩送り」発祥の福島へ 

善意ぜんいをつなぐ「おたがいさまチケット」で、福島ふくしまどもたちにもおむすびを―。名古屋なごやさかえのおむすびてん「まんまるむら代表だいひょう伊藤麻美いとうあさみさん(54)は、本紙報道ほんしほうどうなどでチケットの購入者こうにゅうしゃえたことから、福島市ふくしまし子育こそだ支援団体しえんだんたいにおむすびを寄付きふすることにした。「おむすびをべて笑顔えがおになってほしい」とねがう。
 寄付するのは、愛知県産あいちけんさんこめ食材しょくざいにこだわった昆布こんぶやしゃけ、ツナマヨなどやく230みせ営業えいぎょうかたわら、スタッフがこころめて手作てづくりし、ラップで密封みっぷうして冷凍れいとうした。27日に伊藤さんみずから、おおきなだんボール2箱ふたはこめておくった。
 きっかけは、今月こんげつのこどもの伊藤いとうさんらの活動かつどう本紙ほんしほうじたこと。こまったときだれかの善意ぜんいたより、余裕よゆうがある時は「お互いさまチケット」を購入こうにゅうして善意をつなげる「恩送おんおくり」のみについて紹介しょうかいしたところ、「子どもたちに役立やくだててほしい」とチケットの購入者こうにゅうしゃ急増きゅうぞうし、これまでに100まいえた。
 この恩送りの仕組しくみは、東日本大震災ひがしにほんだいしんさい福島市ふくしまし男性だんせいが2019年にスタート。男性の死後しご活動かつどういだNPO法人ほうじん「チームふくしま」(同市どうし)が、ひとり親家庭おやかてい中心ちゅうしん子育こそだ困窮こんきゅう世帯約せたいやく400にん食糧支援しょくりょうしえんをしていることから、伊藤いとうさんらはチケットを使つかって冷凍れいとうおにぎりをおくることをめたという。
 チームふくしま代表理事だいひょうりじ半田真仁はんだしんじさん(46)は「10トンのこめ半年はんとしほどでなくなる。物価高ぶっかだかものこまっている家庭かていおおく、寄付きふはありがたい」と感謝かんしゃ。伊藤さんは「福島ふくしまにはまだ避難生活ひなんせいかつおくっている人がおおいとく。福島ふくしままれた恩送おんおくりの仕組しくみで、愛知県産あいちけんさんのおむすびを福島の子どもたちにおくれてうれしい」とはなした。            
             (2024年5月28日 中日新聞 河野紀子)


〈ことば〉
善意…他人のためを思う心。
本誌…ここでは、記事が書かれている新聞。
報道…新聞、テレビなどを通して、世の中のできごとを広く知らせること。
   また、その知らせ。   
困窮…とても困ること。ひどく貧しくて、困り苦しむこと。
世帯…同じ住居や生計のもとで生活する人たち。
 


1 伊藤さんは、なにをどれだけ、どうやって福島に送ったのですか。
2「恩送り」とは、どんな仕組みですか。
3 日本おむすび協会によると、おにぎりとおむすびの呼び名の違いは地域や
 環境によるのだそうですが、同じものです。ことばの作りとしては、次の
 ようになります。 
   にぎる(動詞)⇒にぎり(名詞)⇒(美化語の「お」をつけて)おにぎり
 例にならってことばの変化を考えよう。また、意味を調べよう。
  例) むすぶ⇒むすび⇒おむすび
   ①    ⇒   ⇒おもたせ
   ②    ⇒   ⇒おとがめ
   ③    ⇒   ⇒おまいり
   ④    ⇒   ⇒おめでた
 
 


*もう一度読んでみよう。

善意をつなぐ「お互いさまチケット」で、福島の子どもたちにもおむすびを―。名古屋・栄のおむすび店「まんまる村」代表の伊藤麻美さん(54)は、本紙報道などでチケットの購入者が増えたことから、福島市の子育て支援団体におむすびを寄付することにした。「おむすびを食べて笑顔になってほしい」と願う。
 寄付するのは、愛知県産の米や食材にこだわった昆布やしゃけ、ツナマヨなど約230個。店の営業の傍ら、スタッフが心を込めて手作りし、ラップで密封して冷凍した。27日に伊藤さん自ら、大きな段ボール2箱に詰めて送った。
 きっかけは、今月のこどもの日に伊藤さんらの活動を本紙が報じたこと。(困った時は誰かの善意に頼り、余裕がある時は「お互いさまチケット」を購入して善意をつなげる「恩送り」の取り組みについて紹介したところ、「子どもたちに役立ててほしい」とチケットの購入者が急増し、これまでに100枚を超えた。
 この恩送りの仕組みは、東日本大震災を機に福島市の男性が2019年にスタート。男性の死後に活動を引き継いだNPO法人「チームふくしま」(同市)が、ひとり親家庭を中心に子育て困窮世帯約400人の食糧支援をしていることから、伊藤さんらはチケットを使って冷凍おにぎりを贈ることを決めたという。
 チームふくしま代表理事の半田真仁(しんじ)さん(46)は「10トンの米が半年ほどでなくなる。物価高で食べ物に困っている家庭が多く、寄付はありがたい」と感謝。伊藤さんは「福島にはまだ避難生活を送っている人が多いと聞く。福島で生まれた恩送りの仕組みで、愛知県産のおむすびを福島の子どもたちに贈れてうれしい」と話した。 



〈こたえ〉
1 おにぎり(愛知県産の米や食材にこだわった昆布やしゃけ、ツナマヨなど)約
 230個を、ラップで密封して冷凍し、段ボール2箱に詰めて送った。
2  困った時は誰かの善意に頼り、余裕がある時は「お互いさまチケット」を
 購入して善意をつなげる仕組み。
3 ①もたせる ⇒もたせ ⇒おもたせ  
   客が持ってきたもの(菓子など)をその客にだしてすすめるときに使う。
②とがめる ⇒とがめ ⇒おとがめ
  過ちや罪を責める。怪しいと思って問いただす。
③まいる  ⇒まいり ⇒おまいり
  神社や墓を拝みに行くこと。
④めでたい(形容詞)⇒めでた ⇒おめでた
  めでたいこと、特に結婚、妊娠、出産などの祝い事にいう。


 
きっかけとなった記事 
おむすび 恩を結ぶ 栄の店舗 チケット前払い、誰かのご飯に 
 おむすびがえる善意ぜんいのチケットで、子どもたちを笑顔えがおに-。そんなみをするみせが、名古屋なごやさかえ中心部ちゅうしんぶにある。子どもの9人くにん1人ひとり貧困ひんこんという現状げんじょうなにかしたいと、代表だいひょう伊藤麻美いとうあさみさん(54)がひらいた。愛知県産あいちけんさんこめ具材ぐざいにこだわった手作てづくりのおむすびと総菜そうざい提供ていきょう親子連おやこづれだけでなく、ビジネスきゃくにも人気にんきとなっている。
 「いらっしゃいませー」。昼下ひるさがりのオフィスがい一角いっかくで、伊藤さんの元気げんきこえひびく。名古屋市中区錦なごやしなかくにしきのアパホテル名古屋なごや栄駅前さかええきまえエクセレント1階いっかいに3月下旬がつげじゅんオープンした、できたておむすびと出汁だしみせ「まんまるむら」。ひろさ10つぼほどの店内てんないに、こんぶやしゃけ、ツナマヨなど定番ていばんのおむすび10しゅ(140~220円)のほか総菜付そうざいつきのおむすび弁当べんとう(660円)などがならぶ。
 通常つうじょうの店とちがうのが、中央ちゅうおうの大きなコルクボードに、のひらサイズの「おたがいさまチケット」がたくさんられていることだ。500円、千円せんえんの2種類しゅるいあり、来店客らいてんきゃくがすでに前払まえばらみ。大学生だいがくせいまでのどもは、このチケットを使つかって金額分きんがくぶんのおむすびなどをうことができる。
 こまったときだれかの善意ぜんいたより、余裕よゆうがあったらチケットを購入こうにゅうして善意を誰かにつなげる「恩送り」の仕組しくみ。東日本大震災ひがしにほんだいしんさいせられた支援しえん感謝かんしゃし、福島市ふくしまし男性だんせいが2019ねんにカフェではじめた。その後全国ごぜんこくひろがり、愛知あいちではまんまる村がだいごうとなる。
 長年ながねん社会保険労務士しゃかいほけんろうむしとして女性じょせい起業きぎょう後押あとおししてきた伊藤さん。コロナて「ひとつど場所ばしょをつくりたい」とかんがえ、むかしからきだったおむすびをテイクアウトできる店をひらくとめた。これまでの人脈じんみゃくかして食材しょくざい調達先ちょうたつさき開拓かいたくするなかこころかんだのが「子どもをおむすびで笑顔えがおにしたい」とのおもいだ。
 厚生労働省こうせいろうどうしょうによると、平均的へいきんてき所得しょとく半分はんぶんたない家庭かていらす18歳未満さいみまん割合わりあいを¥しめす日本にほんの子どもの「相対的貧困率そうたいてきひんこん」は21年で11・5%。「9人くにん1人ひとりはおなかいっぱい食べられない状況じょうきょうなにかしたかった」と、伊藤さんが恩送おんおくりの仕組しくみをネットでらせると、おおくの寄付きふあつまり、ひとり親家庭おやかてい支援団体しえんだんたいにチケットをおくることもできた。
 店には、普通ふつうにおむすびをうビジネスきゃくもいれば、お互いさまチケットを偶然知ぐうぜんしって前払まえばらいしていく人も。チケットには「たくさんべて!」など、購入こうにゅうした人のメッセージやイラスト入りの付箋ふせんく。これまで親子連おやこづれや春休はるやすちゅう中学生ちゅうがくせい使つかったといい、みせのノートには「おいしかったです! ありがとうございます!」「心があたたかくなりました」などと感謝かんしゃがつづられている。
 名古屋市なごやし女性じょせい(37)は「こまったときはたすけてくれる人がいるとつたえたかった」と、小学しょうがくねんむすめ(6)と来店らいてん。チケットを購入こうにゅうし「いただきますからのリレーです みなでごはんたべて元気げんきにいきましょう!」とのメッセージとともに、ボードにりつけた。伊藤さんは「生活せいかつ大変たいへんでも無理むりして頑張がんばる子どもやおやおおい。こまったときはおたがいさまの気持きもちで、気軽きがるにチケットを使つかってほしい」とびかける。
 午前ごぜん時半じはん午後ごご3時。日曜定休にちようていきゅうわせは、まんまる村=052(228)6537=へ。         (2024.05.05 河野紀子)

貧困……貧しくて生活に困っていること。
具材…おにぎりに入れる梅干しやしゃけなどの材料。
惣菜…食事のおかず。
後押し…うしろだてになって助けること。
付箋…目印とし書いたり書いたりして貼っておく小さな紙。
つづる…ことばを並べてまとまりのある文章を作ること。
 
 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?