女性カップルの子に「父子関係」、最高裁が認める　性別変更後に出生

性別変更後の親子関係をめぐる構図

男性だんせいから性別せいべつを変かえた40代女性だいじょせいと、自身じしんの凍結精子とうけつせいしを使つかって生うまれた次女じじょとの間あいだに、法的ほうてきな親子関係おやこかんけいが認みとめられるかが争あらそわれた訴訟そしょうの上告審じょうこくしんで、最高さいこう裁第二小法廷さいだいにしょうほうてい（尾島明裁判長おじまあきらさいばんちょう）は21日、法的ほうてきな親子おやこと認みとめる判決はんけつを言いい渡わたした。裁判官さいばんかん4人全員一致よにんぜんいんいっちの判断はんだんで、親子関係おやこかんけいを認みとめなかった一、二審判決しんはんけつを取とり消けし、女性じょせいを次女じじょの「父親ちちおや」と認みとめた。
　生物学上せいぶつがくじょうの親おやと、親の性別変更後せいべつへんこうごにできた子ことの法的親子関係ほうてきおやこかんけいについて、最高裁さいこうさいが判断はんだんしたのは初はじめて。トランスジェンダーが子をもうける際さいのハードルの一ひとつがなくなり、選択肢せんたくしが広ひろがることになる。
　40代女性は男性として生まれ、女性として生きるトランスジェンダー。性別変更前まえに保存ほぞんした自身じしんの凍結精子とうけつせいしを使つかいパートナーの女性が2018年に長女ちょうじょを出産しゅっさんし、その後ご、性同一性障害特例法せいどういつせいしょうがいとくれいほうに基もとづき戸籍上こせきじょうの性別せいべつを女性に変更へんこうした。20年に再ふたたび凍結精子で次女が誕生たんじょうした。
　40代女性だいじょせいと娘2人むすめふたりには法的ほうてきな親子関係おやこかんけいが発生はっせいしないため、娘2人が女性に「子としての認知にんち」を求もとめる形かたちで提訴ていそした。一審いっしん・東京家裁とうきょうかさいは認みとめず、二審にしん・東京高裁こうさいは性別変更前せいべつへんこうまえに生まれた長女ちょうじょとのみ父子関係ふしかんけいを認みとめた。
　この日の判決はんけつはまず、民法みんぽうの実じつの親子おやこに関かんする制度せいどは「血縁上けつえんじょうの親子関係おやこかんけいを基礎きそに置》く」と|述《のべ、「親子関係おやこかんけいの存否そんぴは子の福祉ふくしに深ふかく関かかわる」とした。その上うえで「血縁上けつえんじょうの父ちち」の戸籍上こせきじょうの性別せいべつが女性だからといって法的関係ほうてきかんけいを認みとめないと、子どもは血縁上の父から扶養ふようを受うける権利けんりがなく、相続人そうぞくにんにもなれない、と指摘してき。こうした事態じたいが「子の福祉や利益りえきに反はんするのは明あきらか」とした。
　また、民法みんぽうなどに「父ちちを男性だんせいに限かぎる」との規定きていはなく、その他たの法令ほうれいも含ふくめ、女性であることを理由りゆうに父子関係ふしかんけいを認みとめない根拠こんきょとなる規定きていは見当みあたらないとも指摘してき。子どもは血縁上けつえんじょうの父親ちちおやに対たいし、「戸籍上こせきじょうの性別せいべつにかかわらず認知にんちを求もとめることができる」と結論けつろんづけた。
　長女ちょうじょについては「父子ふしと認みとめる」との高裁判決こうさいはんけつが確定かくていしたため、上告審じょうこくしんでは次女との親子関係おやこかんけいのみが問とわれていた。
　5月には最高裁さいこうさいで、当事者とうじしゃの意見いけんを聞きく弁論べんろんが開ひらかれ、次女側じじょがわの代理人だいりにん弁護士べんごしは、法的ほうてきな親子関係おやこかんけいが認みとめられることで「父親に扶養ふようを求めたり財産ざいさんを相続そうぞくしたりする権利けんりが与あたえられる」と指摘してき。「親おやが性別を変えた時期じき」という子どもに関係かんけいのない事情じじょうで次女の権利を奪うばってはならず、長女と次女との間あいだにも重大じゅうだいな不平等ふびょうどうが生しょうじると訴うったえた。
　弁論べんろんには女性本人じょせいほんにんも被告ひこくとして出廷しゅっていし、「次女が子どもであることを認める判決はんけつを求める」と述べた。　　　　　　（2024.6.21朝日新聞　遠藤隆史）
 
 
 

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〈裁判のしくみ〉

裁判の仕組み

民事裁判みんじさいばんは個人間こじんかんのトラブルを解決かいけつするための裁判です。
日本にほんでは三審制さんしんせいを取とっており、裁判の内容ないように不服ふふくがある場合ばあいは、３回かいまで審理しんりできます。

1. 第一審だいいっしん（地方裁判所ちほうさいばんしょ、家庭かてい裁判所、簡易かんい裁判所）

2. 第二審だいにしん（高等こぅとう裁判所、地方ちほう裁判所）

3. 第三審（最高裁判所さいこうさいばんしょ）

 という形かたちで、より上級じょうきゅうの裁判所で裁判を行おこないます。

• 第一審に不服ふふくがある場合ばあいに訴うったえることを「告訴こくそ」

• 第二審に不服がある場合に訴えることを「上告じょうこく」　　　　　と言います。

〈ことば〉
自身…自分
訴訟…裁判所などにうったえること。
判決…裁判所が、口頭弁論こうとうべんろんを経へたのち法規ほうきに基もとづいて下くだす最終的さいしゅうてきな判断はんだん。
民法…私権しけん(その人個人ひとこじんが持もつ権利けんり)に関かんする法律ほうりつ　⇌刑法けいほう
扶養…助たすけ養やしなうこと。生活せいかつの世話せわをすること。
相続…死しんだ人の財産上ざいさんじょうの権利けんり・義務ぎむをすべて受うけ継つぐこと。
明らか…はっきりしていて疑うたがわしいところがないこと。
認知…認みとめること。
根拠…ある考かんがえや言動げんどうのもとになるもの。
規定…決きまり。

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１この裁判は、どのようなことが問題もんだいになってのことですか。次の(　)に適することばを入れなさい。
・ ( 　　①　　)上の親子関係と、(　　②　　)的な親子関係。
2　どのような判決が出ましたか。また、その判決の根拠となったのは、どんなことですか。
3　40代女性が性別を変えたことで親子関係が認められないと、子どもにどんな不利益がありますか。
 
 

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＊もう一度読んでみよう。

男性から性別を変えた40代女性と、自身の凍結精子を使って生まれた次女との間に、法的な親子関係が認められるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷（尾島明裁判長）は21日、法的な親子と認める判決を言い渡した。裁判官4人全員一致の判断で、親子関係を認めなかった一、二審判決を取り消し、女性を次女の「父親」と認めた。
　生物学上の親と、親の性別変更後にできた子との法的親子関係について、最高裁が判断したのは初めて。トランスジェンダーが子をもうける際のハードルの一つがなくなり、選択肢が広がることになる。
　40代女性は男性として生まれ、女性として生きるトランスジェンダー。性別変更前に保存した自身の凍結精子を使いパートナーの女性が2018年に長女を出産し、その後、性同一性障害特例法に基づき戸籍上の性別を女性に変更した。20年に再び凍結精子で次女が誕生した。
　40代女性と娘2人には法的な親子関係が発生しないため、娘2人が女性に「子としての認知」を求める形で提訴した。一審・東京家裁は認めず、二審・東京高裁は性別変更前に生まれた長女とのみ父子関係を認めた。
　この日の判決はまず、民法の実の親子に関する制度は「血縁上の親子関係を基礎に置く」と述べ、「親子関係の存否は子の福祉に深く関わる」とした。その上で「血縁上の父」の戸籍上の性別が女性だからといって法的関係を認めないと、子どもは血縁上の父から扶養を受ける権利がなく、相続人にもなれない、と指摘。こうした事態が「子の福祉や利益に反するのは明らか」とした。
　また、民法などに「父を男性に限る」との規定はなく、その他の法令も含め、女性であることを理由に父子関係を認めない根拠となる規定は見当たらないとも指摘。子どもは血縁上の父親に対し、「戸籍上の性別にかかわらず認知を求めることができる」と結論づけた。
　長女については「父子と認める」との高裁判決が確定したため、上告審では次女との親子関係のみが問われていた。
　5月には最高裁で、当事者の意見を聞く弁論が開かれ、次女側の代理人弁護士は、法的な親子関係が認められることで「父親に扶養を求めたり財産を相続したりする権利が与えられる」と指摘。「親が性別を変えた時期」という子どもに関係のない事情で次女の権利を奪ってはならず、長女と次女との間にも重大な不平等が生じると訴えた。
　弁論には女性本人も被告として出廷し、「次女が子どもであることを認める判決を求める」と述べた。　
 
 

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〈こたえ〉
1①生物学　　　　②法
2 性別を変えた40代女性とその次女が親子だといい判決
　血縁上の親子関係を基礎におき、戸籍上の性別にかかわらず認知を求めることができるということ。
3血縁上の父から扶養を受ける権利がなく、相続人にもなれない。
　(血縁上の父親に扶養を求めたり財産を相続したりすることができない。)