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太陽フレアで地磁気の乱れ

さとは

　「オーロラに向むかい口笛くちぶえを吹ふくと、オーロラが空そらから降おりてきてさらわれる」。オーロラがよく出でる北極圏ほっきょくけんには古ふるくから、子こにそう注意ちゅういする住民じゅうみんがいるという。
　伝承でんしょうによると、天界てんかいで精霊せいれいたちがセイウチの頭蓋骨ずがいこつを蹴けって遊あそぶ姿すがたが地上ちじょうの人間にんげんにはオーロラに見みえる。ヒューヒューなどと聞きこえる音おとは精霊せいれいが駆かける音で、外そとに1人ひとりでいる時ときに口笛くちぶえで返事へんじをしたらオーロラの光ひかりが近ちかづいてくるらしい。自然しぜんへの畏怖いふを感かんじさせる子への言いいつけである。（赤祖父俊一『オーロラ　その謎と魅力』）
　音まで聞こえたかは知しらぬが、日本にほんなど普段ふだんは現あらわれない世界せかいの低緯度地域ていいどちいきでオーロラが観測かんそくされた。太陽たいようの表面ひょうめんで大規模だいきぼな爆発現象ばくはつげんしょう「太陽フレア」が起おき地球ちきゅうの磁場じばが乱みだれたせいらしい。
　天体てんたいショーは美うつくしくとも、磁場の乱れで数日すうじつ、人工衛星じんこうえいせいや衛星利用測位えいせいりようそくいシステム（GPS）に障害しょうがいが出でる恐おそれれがある点てんは心配しんぱい。
　今回こんかいは大丈夫だいじょうぶでも太陽たいようフレアはまた起おこる。最悪さいあく、携帯電話けいたいでんわは使つかえず、レーダーに支障ししょうが出でて飛行機ひこうきは飛とばず、電力関連装置でんりょくかんれんそうちの誤作動ごさどうで広ひろく停電ていでんする恐おそれもあるという。宇宙うちゅうを開発かいはつし高度こうどに文明化ぶんめいかしたゆえ口笛くちぶえを吹ふかずとも災わざわいを招まねくらしい。
　昔むかし、欧米おうべいの低緯度地域ていいどちいきにオーロラが出でると民たみは世界せかいの終おわりだと驚おどろき、教会きょうかいは祈いのる人々ひとびとであふれた。精霊せいれいが存在そんざいするかはともかく天てんは時ときに、人間にんげんは万能ばんのうにあらずと警告けいこくするのかもしれない。　　　（2024．5．14中日春秋）

〈ことば〉
北極圏…「圏」は限かぎられた区域くいき。北極圏は北極に位置いちする区域。
伝承…古くからの行事ぎょうじ・風習ふうしゅう・言いい伝つたえなどを受うけ継ついで、次世代じせだいに伝えて
　　　いくこと。また、そのことがら。
天界…天上てんじょうの世界せかい
精霊…①あらゆる生物、無生物むせいぶつに宿やどり、自由じゆうに遊離ゆうりすることができるとされ
　　　る霊的存在れいてきそんざい。　②死者ししゃの魂たましい。霊魂れいこん。
駆ける…人、動物どうぶつが速はやく走はしる。空中くうちゅうや四次元空間よじげんくうかんを移動いどうする意味いみにも使う。
畏怖…威圧いあつされ、恐おそれおののくこと。
緯度…地球上ちきゅうじょうのある地点ちてんが、赤道せきどうからどのくらい離はなれているかを表あらわす座標ざひょう。
磁場…磁石じしゃく、電流でんりゅうによって生しょうじる磁気作用じきさようが働はたらく場所ばしょや範囲はんい。
万能…すべてにおいてすぐれていること。なんでもできること。

太陽フレア


１ 昔、北極圏に住む人たちは、オーロラの原因げんいんをなんだと考えていました
     か。
２ オーロラの伝説でんせつは、人々に何なにを教おしえるものですか。
３ 今回、低緯度地域でもオーロラが見られる原因はなんですか。
４ 今回の天体現象によって、どんなことが起こると考えられますか。
５　否定ひていの助動詞じょどうしは２つあり、どちらも文末ぶんまつにつきます。「ない」は
　「なかろ／なかっ／なく／なけれ」と活用かつようし、もう１つは「ぬ／ん／ず／
　　ね」という活用の形を持ちます。後者こうしゃを使つかった例文れいぶんを紹介しょうかいします。
　① 疲つかれていたのか、知らぬ間まに眠ねむっていた。
　② 約束やくそくの時間じかんに遅おくれてはなりません。
　③ 台風たいふうで飛行機ひこうきが飛とばず、空港くうこうで夜よを明あかすことになった。
　④ 子どもが待っているので、すぐ帰かえらねばならない。
 

＊もう一度読んでみよう。

　「オーロラに向かい口笛を吹くと、オーロラが空から降りてきてさらわれる」。オーロラがよく出る北極圏には古くから、子にそう注意する住民がいるという。
　伝承によると、天界で精霊たちがセイウチの頭蓋骨を蹴って遊ぶ姿が地上の人間にはオーロラに見える。ヒューヒューなどと聞こえる音は精霊が駆ける音で、外に1人でいる時に口笛で返事をしたらオーロラの光が近づいてくるらしい。自然への畏怖を感じさせる子への言いつけである。
　音まで聞こえたかは知らぬが、日本など普段は現れない世界の低緯度地域でオーロラが観測された。太陽の表面で大規模な爆発現象「太陽フレア」が起き地球の磁場が乱れたせいらしい。
　天体ショーは美しくとも、磁場の乱れで数日、人工衛星や衛星利用測位システム（GPS）に障害が出る恐れがある点は心配。
　今回は大丈夫でも太陽フレアはまた起こる。最悪、携帯電話は使えず、レーダーに支障が出て飛行機は飛ばず、電力関連装置の誤作動で広く停電する恐れもあるという。宇宙を開発し高度に文明化したゆえ口笛を吹かずとも災いを招くらしい。
昔、欧米の低緯度地域にオーロラが出ると民は世界の終わりだと驚き、教会は祈る人々であふれた。精霊が存在するかはともかく天は時に、人間は万能にあらずと警告するのかもしれない。　　　　　　　　　　
 

〈こたえ〉
１ 天界で精霊たちがセイウチの頭蓋骨を蹴って遊ぶ姿が地上の人間にはオー
     ロラに見える（と考えていた）。
２ 自然への畏怖
３ 太陽の表面で大規模な爆発現象「太陽フレア」が起き、それによって地球
     の磁場が乱れたこと。
４ 人工衛星や衛星利用測位システム（GPS）に障害が出る恐れがある。携帯
     電話は使えず、レーダーに支障が出て飛行機は飛ばず、電力関連装置の誤
     作動で広く停電する恐れもある。


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