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もったいない→もったいございません?

大学の文法の授業でレポートを書かないとならないんだけど、テーマがモダリティで、3冊の文法書等から例をひき、比較しないとならないという。
モダリティは英語でいうなら助動詞を使うようなもの。
Have toとMustみたいなやつね。
「ようだ」「そうだ」「みたいだ」とか。

はてさて、海外にいるので、図書館にとか本屋になんて気軽に行けないわけで・・・
手元の1冊と、オンラインで両親の家の近くの図書館の蔵書を検索し、借りてきてもらったのと・・・と話していたら友人が、「こんなのあるよ」と出してきてくれたICU作成の日本語指導の手引き。
なんと1950年代の書物。

「大学は男子学生が多くございます。女子学生が少のうございます」
「女中に部屋を掃除してもらいました」
とか、例文が面白すぎる!
違う意味で、研究対象になるんじゃないの?!という貴重品。
彼女も80代の恩師にもらったと言っていた。

それで久しぶりに「---のうございます」を聞いた。

とんでもないを「とんでもありません」「とんでもございません」というのは誤用だというのは、意外と知られていない。
とんでもないの「ない」は「食べない」「美しくない」などの語尾とは違って、二つの言葉(品詞)に分解できない。
「少ない」「勿体ない」などと同じだ。

分解できるかできないかは、ないをあるにしてみればいい。
まあ、「食べない」は「食べある」にはできないんだけど、これはさすがに「食べる」という動詞だとは分かる。
「美しくある」もそのままでは通常使わず、「美しくあれるように」とか、「美しくあるために」なんて言い方にはなるかな。

しかし、「とんでもある」「すくある」「もったいある」という言い方はない。
「勿体」は名詞で、「勿体ぶる」「勿体をつける」とかっていう言い方はあるものの、「勿体があります」にはならない。
やはり「もったいない」という一語の形容詞だ。

原形「おいしい」の丁寧語が「おいしいです」になるように、「とんでもないです」が正しい。
「学生じゃないです」の「ないです」は、「ありません」「ございません」に変えることができるから、「とんでもありません」「とんでもございます」という誤用が生まれたのだろうけど、「学生じゃないです」は「学生+じゃ+ない+です」なのに対し、「とんでもない+です」は「ない」の前で句切ることはできない。

じゃあ、丁寧語でも「ございます」を使いたい場合(注・「ございます」は敬語ではなく、丁寧語です)、なんというのが正しいかというと、上述の「少のうございます」と同じく、「とんでものうございます」「もったいのうございます」となる。
ただ、この言い方自体時代がかっているというか、使う人はもうあまりいない。

ネットなどでは「とんでもないことでございます」と出てるけど、私はその言い方は好きではないことでございます。
普段そういう話し方をする機会は少のうございますが、もしございましても、そのようにお話させていただかないかと存じます。

さて、じゃあ「おいしいです」の「ございます」形は?
「おいしゅうございます」ですね。
はい、正しゅうございます。
みなさま、よろしゅうございますね?

なかなか耳にする機会のなくなったいい方だけど、みんながそういう話し方をしていたら、争いごとなんてなくなりそうな気がする。

文法書は無事に非常勤をしている大学の言語センターの資料でゲット!
ドイツ語だけど、例文は日本語だからまあいいだろう。
海外から履修するのに、本3冊は厳しい指定だった・・・

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