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Off the Field Vol.1 - 日本営業大学中田学長インタビュー ‐

日本営業大学で学ぶ受講生に、「競技のもつ価値とは」「日本営業大学を選んだ理由は」「目指す場所は」についてインタビューしていく企画です。
アスリートの持つ可能性を引き出し、”社会で輝く”アスリートたちを育てる日本営業大学のOff the Fieldを、受講生でありアスリートライターの青木蘭がお届けします。

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第1回の今回は、日本営業大学の中田学長にお話を伺いました。
アスリートはもちろんのこと、スポーツビジネスに関わる全ての方に読んでいただきたい内容となっています。


日本のスポーツは「儲からない」仕組みになっている

−現在日本のスポーツ市場が縮小化していると感じるのですが、中田学長は現状についてどうお考えですか?

 もともと日本では「スポーツは儲からない、スポーツにはお金が集まらない」というのが一般常識的にありました。アマであれプロであれ、スポーツは企業の持ち物だったためです。なんのために企業がスポーツチームを持つかというと、宣伝効果のためなんですよ。
露出換算し、費用対効果に価値を感じた大企業がスポーツを支えているような状態で、スポーツ=広告宣伝という考えが根強くありましたね。

−なるほど。企業の広告宣伝にスポーツが活用されていた時代から、スポーツの在り方が少しずつ変化しているように感じます。

 この2年、コロナの影響もあって企業自体がスポーツチームをもつ余裕がなくなってきたこともあり、スポーツ市場からの撤退が多く見受けられます。ラグビーも野球もその他のスポーツでも、社会人リーグに所属するチームが減少傾向にあります。でもこれは、企業に依存するクラブ経営やスポーツ=広告宣伝という思考に問題があると思いますね。広告宣伝という思考があることで、別の企業がスポーツチームを支援したいと考えても、自社のロゴが掲載されなければスポンサーになるメリットが感じられません。

 3月1日にニュースになっていましたが、サッカーのJリーグが規制緩和し、クラブの株式上場が認められることになりました。この背景には、クラブの資金調達を加速させ、組織ガバナンス強化を促進する狙いがあると思います。海外の話をすると、海外企業の20%ほどがスポーツチームをスポンサーとして支援しています。その海外と比較して日本は5%ほどの企業しか、スポーツチームに出資していないんです。

−海外に比べ、日本の企業がスポーツチームを支援しない理由はどこにあるのでしょうか。

 理由は2つあって、1つは露出換算価値。これはお話したように、企業がスポーツを広告宣伝のツールとしか見ていないからです。
 もう1つは、チームの問題。決算書などの情報開示がなされていないことや、組織内のガバナンスに問題があるため企業としては出資価値が測れず、先行きが不透明な状態のチームにはお金を払えないということですね。この問題がどうしてもあったので、これまで日本のスポーツチームで上場したところは一つもありませんでした。
 2021年3月に、卓球Tリーグに加盟するプロ卓球チーム「琉球アスティーダ」が、東京証券取引所が運営する特定投資家向け株式市場TOKYO PRO Marketに上場しました。これが初めてのケースでした。

−スポーツチームが上場するとどんな効果がありますか。

 上場するということは、外部から資本を集めることが可能となります。社会的信頼度も高まり、資金調達の可能性が拡大します。
 きっと日本のスポーツは、資金集めが円滑に進み、情報開示やガバナンスがしっかりしているチームは上場し、旧態のチームは衰退していくという明暗がはっきり別れていくでしょう。

持続可能なクラブ運営にはマインドチェンジが必要

−クラブを存続し続けるために必要なことはありますか。今後クラブ運営はますます難しくなっていくのでしょうか。

 クラブチームの収入源は大きく分けて入場料収入、スポンサー収入、グッズ収入、メディア放映権の4つあります。現在あらゆるスポーツ界でコロナ禍によって入場料収入が見込めなくなり、スポンサーも企業の経営状況に左右され、グッズもお客さんがこなければ売れない、メディア業界も不況であるため地上波では放映できなくなる、といった負のスパイラルに陥っている状態です。その中で、持続可能なクラブを運営するには、この4つの収入とは別の収入源を確保する必要があると考えます。
 その答えの一つに「クラブが地域と一体となって、企業として上場していく」ということがあげられると思います。
 こういった視点を持つチームは、クラブの運営体制に問わず、資金があつまる仕組みづくりを構築することができると思います。
 メディア露出に関しては、現時点でプロ野球、日テレの箱根駅伝、TBSの世界陸上、フジテレビのフィギュアスケート、テレビ朝日の甲子園は既にコンテンツ化されていますので、これらについては継続してコンテンツ化し続けると思います。
 今後各スポーツの選手や協会は、もっと人が見たいと思うコンテンツを作ることが求められると思いますね。


ーコンテンツ化しているスポーツが、学生スポーツに偏っているのはなぜでしょうか。

 日本人の潜在意識の中に、「スポーツはお金をもらうべきものじゃない」という考えがあると思います。学生スポーツではお金儲けのためにやっていない誠実さが感じられ、コンテンツとして人気があるのでしょう。
 私はカテゴリーを問わず、スポーツ自体に価値があると思っています。スポーツはどんなに世界が変わろうと、長い歴史の中で変わらずに存続してきたものです。その歴史こそが、スポーツに価値があることを伝えていると思います。

ー中田学長の考えるスポーツの価値とは何でしょうか。

 今の時代、貨幣価値至上主義が強くなっています。経済が一番価値のあるものと考えられているけれど、実は価値の序列で一番上に来るのはスポーツや芸術などの文化的価値です。
価値には文化的価値→政治的価値→経済的価値といった序列があります。現代の日本は経済的価値がもてはやされすぎて、文化的価値がおざなりになっている状況です。

文化的価値=スポーツ、芸術、芸能
政治的価値=意思決定システム
経済的価値=通貨、貨幣

文化的価値


 一歩海外に目を向けると、海外のサッカーチームは各都市にひとつはありますよね。市民の健康や心の豊かさにスポーツを通じて貢献しているのです。こうした文化的な価値がある限り、スポーツは絶対になくならないものだと考えます。


転換期にある日本のスポーツ、選手は何をすべきか


ーこの時代に生きるアスリートたちにはどんなスキルが求められているとおもいますか。

 アスリート個人が持つべきスキルは、全部で4つあると考えます。
 1つ目に、発信力です。個人のSNSというメディアをうまく活用し、日常生活や競技への思いなど、目的を持った情報発信が求められています。ファンの獲得ももちろんですが、競技自体の認知向上にもつながる大切なスキルだと思います。
 2つ目に、マインドです。まず、スポーツを言い訳にしないで欲しいと伝えたいです。例えば就活の面接のとき、新しいことに挑戦するか迷ったとき、自分にスキルや経験が無いことを「スポーツのせい」にしてる選手をよく見かけます。「野球しかしてこなかったので何もわかりません」というセリフです。私はそういった選手たちに、スポーツと向き合ってきた自分に価値があるということを自覚してほしいです。このマインドチェンジが大切だと思います。
 3つ目に、探究心です。わからないことがあるなら、知ろうと努力をする。アスリートが練習に励むのは、自分の課題を解決し「うまくなりたい」からですよね。その思いは、社会でとても役に立ちます。
アスリートはPDCA(Plan→Do→Check→Action)の能力が習慣化され身体に染みついています。問題や課題に対して熱心に向き合う心は持ち続けてほしいと思います。
 4つ目は、コミュニティづくりです。同じ競技、話が通じる人とだけでなく、輪を広げ、新たな価値観に触れる機会づくりが大切だと思います。社会は常に変化しています。同じスポーツの人としか関わりが無かったら、クリエイティブな発想も、問題の本質にも気がつかないかもしれません。色々なコミュニティに属し、関係性を構築することで、人間としてもアスリートとしてもさらに向上するきっかけになるのではと思います。


日本営業大学の提供する価値


ー最後に、日本営業大学のことを教えて下さい。

 日本営業大学が提供する価値は大きく分けて4つあります。
 ・考える力の育成
 ・非認知能力の向上
 ・自己肯定感につながるマインドチェンジ
 ・学びを通して様々な競技に取り組むアスリートとの人脈

設立の志とビジョンについてはこちらの記事をお読みください。


 日本営業大学では、アスリートの持つ能力を伸ばし、実践的な知識を身につけ、就職や個人での起業・独立を支援しています。アスリートのセカンドキャリアという言葉はよく聞きますが、キャリア形成は現役中でも可能です。考える力を養い、アスリートの持つ特性で最も高くある「非認知能力」を磨くためのカリキュラムを沢山用意しています。

認知能力=学力、IQ、記憶力
非認知能力=人間性、協調性、忍耐力、継続力、誠実さ

非認知能力


 非認知能力とは点数化できない能力のことですが、アスリートはこの能力が抜群に高いです。こうしたアスリートの持つ特性を磨き、実践的な知識を身につけることで、アスリートの可能性を最大限引き出す機会を提供しています。
 一人でも多くのアスリートが、スポーツを通じて身につけた力を使って社会で活躍して欲しいと考えています。


中田仁之プロフィール

日本営業大学 学長 中田仁之
 https://ja.wikipedia.org/wiki/中田仁之

20年以上にわたり、多くの業種の販促企画の提案営業・管理職を経験した後、2012年に起業・独立。中小企業診断士として、販売促進に関するプロデュース及び営業力強化・人材育成等のコンサルティング、経営者やリーダー向けのビジネス講座を主宰。企業での講演、リーダー育成プロジェクトの開発、人脈を活用したチーム体制で企業のサポートを行っている。
また、アスリートのセカンドキャリア支援を目的に「日本営業大学®」を設立。
アスリートのための「教育・採用・独立起業等キャリア形成に関するプラットフォーム作り」に尽力するなど、多方面で活躍する。

日本営業大学についてはこちら
http://sea-org.jp


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